あのにますトライバル

君の気持ちは君の中でだけ育てていけ。

ちょっと小説の話

 ちょっと思いついたことを書きなぐります。

 

anond.hatelabo.jp

 

 そもそも小説って何なのかって話なんだけど、文字で他人を楽しませることが第一なんだよね。「うわーおかしいな!」「ああ、なんて悲しいんだろう!」「こいつめ!許さないぞ!」「幸せになってよかったなあ」「なるほど、そういうことだったか!!」「自分の身に置き換えると考えさせらえるな」みたいな、そういう素朴な感情を引き出したら勝ち。単純な勝ち負けとは違うんだけど、それが到達目標、みたいな。

 

 それで、小説っていうのは面白いことを連ねていくだけじゃダメなんだよね。「犬がとっても怖いお化けの勇者」「ネズミがとっても怖いロボット魔王」「コロッケが大好きなヒロイン」「ラーメン大好きな魔法使い」とキャラを思いつくけれど、じゃあそれらをどう配置するかが大事になってくる。つまりは、構造が大事になってくる。

 

 だから、小説を書き写すだけだと構造は見えてこない。小説を書くなら、まずは構造に気を配るのが大事になってくる。ただべたべた写経するより、登場人物の一覧と各章のプロットを自分なりに作ってみるとかなり練習になると思う。例えばこんな感じ。

 

「ごんぎつね」

登場人物:ごんぎつね、兵十、村人

あらすじ

一、ごんぎつねは兵十の釣り上げたうなぎを奪ってしまう(いたずら心)。

二、その後兵十の母が死んだことを知って、ごんぎつねは兵十の家に食べ物を運ぶ(贖罪)。

三、兵十はごんぎつねの正体に気づかない(不満)。

四、再びごんぎつねの姿を見て兵十はごんぎつねを殺す。そして食べ物を運んできたのがごんぎつねだと知る(後悔)。

 

 最初は出来事だけ抜き出して、ついでに登場人物の心境がどう変化するのかも書いておくといいですね。長編小説の場合、場面がどこで変わるのかを見極めるのも大事です。これを小説以外、映画でもアニメでもなんでもやっているとそのうち「話の構造」っていうのが見えてきます。これのストックを作る。大体展開なんて決まっている。恋愛小説ならくっつくか別れるかのどっちかだし、悪者をやっつける話なら最後には悪者はやっつけられるに決まっている。そこに行くまでの過程も、大体は決まっている。この引き出しをどれだけ組み合わせるかというのが現代の小説には大事になってくる。

 

 細かい話をするなら、小説はただあったことを書けばいいってものではない。適当に例文を書きなぐる。これはあったことだけの要素を抜き出したもの。

「遅刻遅刻ー」

 花山英恵は走っていた。急いでいたので前方不注意だった。

 どっしん

「いたたたた」

 交差点で花山英恵は転校生にぶつかってしまった。

「大丈夫ですか」

「はい、いけない、遅刻遅刻」

 英恵は急いで学校へ向かった。

 ひとつのテクニックとして、情景描写ってのがある。小説っていうのは地の文で主人公の置かれている状況や心情を表せるっていう便利な機能がある。例えば上の文を使うなら、「急いでいたので」と書くよりも「花山英恵はスカートの裾を翻し走っていた」と急いでいそうな表現をしていなくても急いでいる雰囲気が伝わってくる。さらに前方不注意と書くより、何か別のことを考えていたほうが今後の展開を読者に想像しやすい。例えば「今日やってくる転校生のことを考えていた」なんて書いておけば、彼女が転校生が来るのを楽しみにしていると読者に伝わる。そんなことをひとつひとつ細かく考えていく。

 

 そう考えると情景描写ってすごく面倒くさいんだけど、小説っていうのはそういう情景描写の塊なわけで。せっかく書き写しをするなら、この文はどんな効果があるのかっていうのを考えながら書き写すといいと思うな。例えばごんぎつねの冒頭の「これは私の村の茂平というおじいさんから聞いた話です」というような文、これだけで「ああ、昔にあった話なのだな」とわかる。別に「昔々あるところに」と書く必要はない。ついでに「これは茂平さんのつくり話かもしれない」「茂平さんが実は兵十なのではないだろうか」など様々な想像の余地を残すことができる。「昔々あるところに」ではできない詩情なのである。

 

 例文に戻ると、他にも考える余地はたくさんある。例えばどのようにぶつかったのか、ちょっと掠る程度なのか、おもいっきり正面衝突なのか、自転車で飛び出してしまったのか。そもそも彼女は遅刻寸前なのにどうして転校生は悠々と歩いているのかという疑問もあるので、「主人公は朝練に遅刻寸前である」という設定をつければいい。そうすればこの話は部活モノにできるかもしれない。そんな風に文章をぐちゃぐちゃとカスタマイズしていくことが小説を書くひとつの楽しみかもしれない。

 

 実はこれ、中学校の国語あたりで「小説の効果」みたいな感じで勉強していることなのだ。小説の勉強するとき、センター試験の国語の小説問題って結構そういう効果を聞いてくるので、小説の構造が見えてくるとしっかり解けるようになったりする。高校入試くらいの国語の問題集を一冊やるだけでも結構違ったりする。漢字とか文法なんかも勉強できるので何から手をつけていいかわからない人には結構おすすめかもしれない。

 

 この情景描写を覚えると、なんでもかんでも情景描写を使わないと気が済まなくなってくる。悲しいシーンは雨が降るし、事件が解決すると晴れてきて虹が出る。ちなみに行間の心情を推測するなら詩を読むのがいいかもしれない。昭和歌謡のヒットソングとか延々と聞いていると「え、それってそういう意味だったの」ということは結構ある。言葉と言葉が結びついて別の意味が生まれるのは小説よりも短歌や詩の領分かもしれない。

 

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 あとアレっすね。小説家は何もしないと孤独。コメントなんか来ないのが当たり前。この辺のメンタル調節かなり大事。あとカクヨムとかは自分から絡みにいかないとみんな読んでくれない。ツイッターとかで「#RTされた小説読む」みたいなタグでほかの人と絡みまくったり、カクヨムだと自主企画に参加したりして初めて読者ついてくれる。そういうところ。ぶっちゃけカクヨムは投稿サイト風のSNS。読んでほしかったらほかの人の小説に応援つけるとかダンジョン配信か異世界恋愛書かないと読んでもらえない。ちなみにカクヨムならファンタジーとかラブコメ系のジャンルで一人から星もらえるだけでランキング載っちゃうぞ。「小説の勉強しています必ずレビュー書きます」系の自主企画が一番勉強になる気がする。それが無理なら、もうあきらめて自分の好きな表現を追求する、みたいな世界だと思う。あとは投稿サイトを変えてみるとか。今ならハーメルンとかアルファポリス、ノベプラあたりも大人気だし。その辺投稿したことないからわかんないけど。

 

 あとプロットらしきものがあるなら、それを実際に短編で書いてみるといいんじゃないかなあと思いました。300字以内小説みたいに。これ意外と面倒くさいし、すごく辞書使うし勉強になる。人が読みたいのはあらすじじゃなくて、心の変わりようじゃないかなあというのがとある感想です。

 

 まあ小説を書くなんて釣りみたいなもので、どれだけ上等な餌をひっかけてもポイントを絞ったとしても釣れないときは釣れない。だから、小説家は読者が好きそうな餌を仕込む。どれだけ自分の体験を書きつらねても、それが読者に重ならないと読んでもらえない。釣りもそうだけど、最後は経験がものをいうと思う。だからやっぱり先行研究は大事で、それはどれだけ物語体験があるかなんだと思う。そうでないと本格ファンタ、いやなんでもないです。ああ、これは引っかかってしまったかもしれない。おしまい。