あのにますトライバル

君の気持ちは君の中でだけ育てていけ。

応援上映があったら面白いなぁと思う映画 5選

 応援上映。映画館で声を出してもいいというその試みが非常に盛り上がっているらしい。そこで「こんな映画で応援上映したら絶対楽しい」と思う映画をいくつか考えてみた。考えただけです。

 

【貞子VS伽椰子】

 呪え! 呪え! 呪え! 呪え!

 

 

 「絶叫上映」もやってるこの映画。正直この記事を書こうと思った元凶の映画です。呪いの家に入った少年たちに「少年後ろ後ろー!」とやったり中盤の除霊シーンで一緒に呪文読み上げたり、最終盤のバトルではもう「貞子がんばれ!」「伽椰子負けるなー!」の貞子派VS伽椰子派に分かれての熱烈応援マッチ! もちろん怖いシーンではみんなで悲鳴を上げるのもお約束。

 

【マッドマックス 怒りのデスロード】

 V8!  V8!  V8! 

 

 

 爆音上映や絶叫上映などもやっていますが、是非「応援上映」をどこかでしてもらいたい。一緒にV8したり、バイクババアを応援したり、勿論決め台詞は「What a lovely day!」でどうかよろしく。

 

【新アリゲーター 新種襲来】

 ツッコミを入れながら応援しよう!

 

 

 もしかしたら応援上映って、こういうくっだらないワニ映画とかサメ映画とも相性がいいかもしれません。「B級映画オールナイト応援上映(ヤジ可)」っていう企画があったらスキモノ映画大好きっ子はハマるかもしれない。例に出した『新アリゲーター』は設定の全てにおいてツッコミどころが用意されているのに脚本は荒唐無稽までは行ってなくて割と筋が通っていると言う面白い映画。ところどころにやってくる「なんでやねん」コールでアレな映画もきっと楽しく鑑賞できるでしょう。

 

沈黙の戦艦

 敵さん逃げてー!!

 

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 応援上映と相性がいいだろうセガール映画。本命としては「イントゥ・ザ・サン」とか「沈黙の断崖」がいいんだけど、ここはやっぱり「沈黙の戦艦」かなぁと。もちろん応援するのはセガールではなく、やられ役の人たちです。「セガールが来るぞー!」「にげてー!」「ああ死亡フラグだあああああ」などなど、敵に気持ちをぶつけるのもセガール映画の醍醐味です。

 

コマンドー

 コマンドーはアメリカで生まれました、日本の発明品ではありません。

 

 

 もし現代の日本でこれを応援上映したら、どちらかと言うと「実況上映」になるのではないだろうか。世の中には「コマンドーの台詞は全て暗記している」という猛者もいるし、吹き替え版の決め台詞には事欠かない。「とんでもねえ、待ってたんだ」「OK!」「トリックだよ」「あれは嘘だ」「説明書を読んだのよ」と書き出せばきりがない。そしてセガール映画同様、応援するのはメイトリクス大佐ではなくサリーだったりクックだったりベネットだったりしたほうが面白い。崖の上のサリーのところでは「サリー! サリー! サリー!」「助けて大佐ー!」からの「あれは嘘だ」「ぎゃあああああ!」までがワンセット。サンドイッチの具を予想してみたり手荷物を預けてみたりと思い思いの掛け声を言うシーンもあり、まさしく娯楽映画の殿堂でしょう。

 

 

 

 ……とこんな感じで「最初と最後が書きたかっただけだろ」みたいな記事はおしまいです。「コマンドー」の応援上映は、年齢層もぐっと上がっていいんじゃないだろうか。おわり。

 

潮焼きそば ~短編小説の集い~

 海に浮いている。波に揺られて上下するリズムが心地よい。上の方は青空が広がっていて、雲ひとつ見当たらない。夏の日射しが海に浸かっていない肌をじりじりと焼く。時折火照った肌に海水をかけると、塩気が肌に張り付く。低い位置にあった太陽は高いところへ昇り、今少し傾き始めている。こうして今日も、海の上で太陽を眺めて終わる。

 

「いつまで、こうしているんだろう」

 

 全身の血潮が海に溶け出すのではないかと思うまで、空気の入ったマットと海に身体を預けていた。すっかりふやけて、日に焼けた美幸(みさち)が陸に上がるころには日は随分と傾き、浜辺に来ていた親子連れはすっかり姿を消していた。代わりに増えてきた花火を持っているカップルを見て、美幸は苦々しい顔をする。歩いて浜辺の民宿まで戻ると、この宿の主人の和子(かずこ)が返却された浮き輪を洗っていた。民宿とは別に、この宿は海水浴客向けに遊具のレンタルや軽食サービスなども行っていた。どちらかと言えば本業はそちらで、民宿は格安で提供されるおまけのような営業振りだった。

 

「あら、お帰りなさい」

 

 美幸は和子に軽く会釈をすると、店の前の蛇口で足の砂を落としてから数日滞在している部屋に戻る。それからシャワーを浴びて、髪も乾かさないまま部屋の窓を開けた。窓の外には海が広がっていて、先ほどまで美幸の全てを受け止めていてくれた。夕日の色に染まった海は美幸を受け入れることはなく、ただ潮の香りだけを風に乗せて部屋に運んできた。静かに寄せる波がキラキラしてきれいだ、と美幸は思う。あのキラキラの中に入れたら、もうこんな思いもしなくていいのに、とも思った。

 

 ゆるやかに死んでいくのに、きれいなものになれたら素晴らしいじゃないか。

 

 美幸がこの浜辺にやってきたのは、仕事にも恋愛にも全てにおいて望みを絶たれた数日後のことだった。死ぬことを思い立ったら、後は早かった。家の中で死ぬのはいろんな人に迷惑がかかると思って、美幸は身の回りの物をまとめて外へ出た。そしてせっかく死ぬのだからどこか知らない、きれいなところで死のうと思い直した。そんな気持ちで電車に揺られ、たどり着いたのがこの海辺の町だった。

 

 まだ夏休みの始まっていない浜辺は海水浴客はまばらにいるけれど、それほど賑わってはいない。それに浜辺からは高く突き出た岩場があって、真下が浅い磯になっている。頭から落ちれば命はないだろう。誰も岩場に登ることはなかったが、その不穏なオブジェも美幸の頭にこびりついた「死」を想起させた。夕方に近い時間帯の浜辺は人も少なく、傾き始めた日の光すら美幸には血の色に感じられた。

 

(あそこから飛び降りよう)

 

 後は決行するだけだ。遺書も何もない。未練も汚い思い出も何もかもをこの世に置いて、きれいな心持ちであの世に行きたかった。死ぬための心の準備が整えよう。そう思いついた美幸は、浜辺の店の前へふらふらと歩いて行った。死ぬ前にお腹一杯食べるものは何にしよう。海の家の焼きそばがいいかな。そうしよう。

 

「ごめんね、焼きそばは売り切れなの」

 

 海沿いの露店でその目論見はあっけなく崩れてしまった。数個並んでいる会議用テーブルとパイプ椅子。その奥に鉄板と冷蔵庫が見える。店内にはマジックで書かれた「浮き輪あり□」「水着レンタル」の文字が躍っている。その店内の楽しそうな装いに自分には場違いな場所だ、と美幸は内心嘆いた。

 

「ところであんた、泊まるところあるの?」

 

 じゃあいいです、という言葉を告げる前に露店の主人にそう言われ、美幸は反応に困ってしまった。

 

「見たところ遊び道具のひとつも持っていないようだし、体一つで遊びに来たって言う感じかい?」

 

 そうです、と答えることで美幸は精一杯だった。まさか死にに来た、ということも出来ないし、何より初対面の人と話すのが苦手だった。

 

「で、どこに泊まるんだい?」

 

 それから美幸は何を話したのかよく覚えていない。気が付いたら、この店は民宿も兼ねているからそこに泊まって行けと言う話になっていた。一泊二千円と格安な値段で泊まることを勧める女主人の和子に、断る理由が思いつかなかった美幸は「はい」というしかなかった。

 

「いつまで、こうしているんだろう」

 

 それから何もしないわけにもいかず、水着と空気マットを借りて美幸は岩場を眺めていた。遊泳区域の中でふわふわと浮いているのは楽でいいけれど、他にすることがあるだろうと自分に言い聞かせる。例えば遊泳区域を仕切るブイの向こうへ行ってしまうとか、浜辺に落ちているガラスの破片で皮膚を傷つけるとか、いろんな方法があるはずだ。だけど、そう思ってもすぐに波のリズムが死にたいという気持ちを押し流してしまう。

 

 とにかく夏の日射しと潮の香りが美幸の心を鈍くさせ、死にたいという欲求を波に乗せて隠そうとする。手入れのされている宿の部屋だったが、どこか畳まで潮でべとべと湿っている気がする。敷きっぱなしの布団の脇には、持ってきた荷物が乱雑に散らばっていた。夏の頭にせっかく買った高い日焼け止めは、今はもう使っていない。スマートフォンも、電源が切られたまま部屋の隅に転がっている。

 

(そうだ、私は死にに来たんだった)

 

 腹の虫がぐう、と鳴いた。今朝から何も食べていない。泊まった翌日の朝などは和子がサービスしてくれた朝食などを食べていたが、どうせ死ぬのに食べても食材が無駄になると思うとひどく申し訳ない気がして、今朝は勇気を出して断ったのだ。「あら残念」と和子はぽかんと言っただけだった。そのまま顔を合わせるのが気まずくて、美幸はすぐに浜辺へ向かった。それからずっと波に漂っていたり浜辺に座り込んだりしていて、なんとなく夕方になるのを待っていた。そういえば水も飲んでいない。目の前が黄色くなったような気がした。

 

(今なら死ねる気がする)

 

 胃袋が空っぽの状態で死ねば、摂取した栄養も無駄にならない。そんなどうでもいい考えが美幸の頭を支配していた。美幸は薄手のパーカーを羽織ると、部屋を飛び出した。そっと忍んで岩場まで行こうと思ったのに、店の前でまだ和子が浮き輪を洗っていた。美幸は何か話しかけられるのではないかと戸惑った。美幸がおどおどしている間に、和子が美幸に気が付いた。

 

「あら、ミユキちゃん。どうしたの?」
「ミユキじゃなくて、ミサチです……」

 

 やはりこの和子という女性は苦手だ。平気で人の領分にずかずかと踏み込んでくる。頼んでもいないのに宿を提供したり、朝ご飯を出してくれたり、そしてこんな大事な時にも人の邪魔を平気でする。美幸は内心の嫌な気持ちを押しとどめることで精いっぱいだった。

 

「あらあらごめんなさいね。こんな時間にどこに行くの?」
「ちょっと、そこまで散歩です」

 

 何とかうまく誤魔化せたと美幸は思った。店から出てしまえばこちらのものだ。こんな汗をかくような気持ちとも、永久にさよならができる。

 

「それならちょうどいいから、そこに座っていなさい」

 

 美幸は内心毒づきながら、パイプ椅子に腰かけた。きっぱりとここで「いいえ」と言えればいいのに、言えないことでずっと損をしてきた。小学校の先生には「もっと自分の意見を言いましょう」と言われ、ずっといろいろと損な目にあってきた。せっかく久しぶりに自分の意見で行動しようとしているのに、またしても自分の意見が言えないために死ぬことすらできなくなっている。

 

「何をするんですか?」
「サービスよ、サービス」

 

 和子は浮き輪を並べ終えると、調理台の方へやって来た。冷蔵庫から手際よくキャベツの玉を取り出すと、芯を取り除くこともせずザクザクと切っていく。

 

「あたしもねえ、こう見えてもあなたと同じくらいの娘がいるの、今年で二十三よ。だけどね、高校を卒業したらナントカの専門学校に行くんだって言って出て行って、それからずっと帰って来ないのよ。年に何回かは顔を出すんだけど、夏の間はあたしが忙しくてね。思えばゆっくり娘と夏休みを過ごした記憶がないのよ」

 

 だから何なんだ、と美幸は腹を立てていた。私はオバサンの世間話を聞きにここに座っているのではない、自分の意志と反するところで縛り付けられているのだと言う不快感で顔色がどんどん変わっていく。

 

「そしたら今年は孫が生まれたから夏の間久しぶりにこっちに帰ってこようかななんて言うんだよ。あの子は昔はウチの家業を嫌っていたのにね。好きな男の子が夏休み明けに『おまえんちの母ちゃんのラーメンうまいな』言われて、それが何だか知らないけれどダメだったみたいなの。ホント子供ねぇ」

 

 和子は手を動かしながらクスクスと笑った。美幸は話の笑いどころがわからなかった。

 

「まぁあたしたちも人様に顔向けできる立派な仕事をしているわけでもないし、こうやってお客から金を巻き上げている商売なんて思われても仕方ないわよねえ。でもあたしはこの仕事が好きなのよ。いろんな人に出会えるからね」

 

 美幸は和子の話を聞きながら、店の外を見ていた。夏の長い日はまだ空にしがみついていたが、夕方の涼しい風に帰りの海水浴客たちは上着を着込んでいた。

 

「まだ時期が早いからお客もいないけれど、もうすぐしたら遠くから波乗りどもがやってくるんだよ。昔からの馴染みの奴らでね。何日かウチに泊まりこんで朝から晩まで塩漬けになってるんだ。気持ちのいい連中だよホント」

 

 和子は野菜を刻む手を止めて、美幸をじっと見た。美幸はその目を見ていないふりをした。

 

「それからね。ミサチちゃんみたいな子もたまにやってくる」

 

 美幸は聞こえないふりをした。

 

「何をしに来たんだかよくわからない子。そういう子は海に来る恰好をしていないからすぐわかるんだ。水着もビーチサンダルも持っていない。しかも一人でやってきている。昔からね、何度かあったんだそういうことは」

 

 美幸はドキリとして和子の方を見た。和子は刻んだ野菜を熱した鉄板の上に置いて、じゅうじゅうと炒め始めた。

 

「わかって、いたんですか?」

 

 カラカラに乾いた声が美幸の口から漏れる。この計画は最初から失敗だった。いつまでもグズグズ死ねなかった美幸の負けだ。

 

「そりゃねえ、今にも死にそうな顔をしたお嬢さんが一人でふらふらやってきて『焼きそばください』なんて、滅多にあることじゃないよ。だから、あの時は嘘をついたの。何が何でもあんたをここに置いておかなければならないって思った。それから海で遊べば気分も変わると思って、水着とかを渡したの」

 

 美幸は目の前がくらくらと白んでいくような気分になった。それ以上私の心を暴かないで。これ以上みっともない姿をさらしたくないの。

 

「後はあんたに任せるしかないって思ったの。それでも決心が固い人をあたしが止めるなんて、少しでしゃばった話だからね。でも、少し元気になったみたいだから、今日は嘘をついたお詫び」

 

 鉄板からソースを焦がす香りが漂ってきた。じゃあじゃあとヘラを使って和子は器用に鉄板の上で麺をほぐし、ソースと野菜を絡める。

 

「はい、大盛り焼きそばお待ちどうさま。お腹が空いたでしょう」

 

 美幸の前に出来たての焼きそばが運ばれてきた。和子は更に売り物のラムネをケースから出して、脇に置いた。

 

「ウチでよければ、気が済むまでいていいのよ。もちろんお金は気が向いたときに払えばいいから」

 

 美幸は震える手で割り箸を割ると、急いで焼きそばをかき込んだ。海の味がする、しょっぱい焼きそばだった。一口食べると、体が焼きそばを求めて箸が止まらない。カラカラの喉にはラムネが沁みた。甘いはずなのに、ラムネまでしょっぱいような気がした。

 

「そうだ、よかったらこの夏の間ウチの手伝いをしないかい。それで焼きそば代はチャラにしてあげるから。早速明後日から海の男どもが来るからありがたいね」

 

 和子の声が遠くで聞こえた。アツアツの焼きそばの湯気で視界が見えないのでもない。ぼたぼたと何かが終わったように美幸の目から海が溢れていた。いつの間にか外は暗くなっていて、店の前の街灯が音を立てて光り始めた。そうして美幸が岩場に行く機会は永遠に失われてしまった。

 

≪了(4906字)≫

 

novelcluster.hatenablog.jp

 

 邦画っぽいのを目指しました。何か「うまそうなものを書こう」と思うと、高確率で焼きそばか屋台のものになるのは何らかの心的要因が選ばせているのだろうか。

 

十八時からの交信の振り返り

 久しぶりに自分の作品の振り返りをします。何かの種にしてください。

 

nogreenplace.hateblo.jp

 

〇まずテーマを「時計」にしたところで最初に浮かんだ物語が「腕時計を巡る別れ」だったのだけれど、全体的にウェットな気分だったのでウェットになる話はやめようということと、何となく書く気にならなかったところでなんとなくどこかに行ってしまった。「時計をプレゼントするということはあなたの時間を拘束する」みたいな、そんな話。うぜぇ。

 

〇で、結局いつもやってる「時間を超えてどうのこうの」というのもイマイチ頭に思い浮かばなくて、放置していた。こういう時無理に考える話は大抵面白くない。とにかく何か思い浮かぶまで熟成するのがいいって『思考の整理学』にも書いてあったと思う。そもそも書く気にならなければ何も面白いものは生まれない。難しい。こればかりはコントロールしてどうにかなるものでもない。私的な話をすれば今年度に入ってから少し仕事量が増えて、忙しさがアップした。仕事量自体は大して増えていないけれど、業務の内容がケタ違いに難しくなった。結局そちらに頭の大事なところが裂かれて、どうでもいいことを考える時間が少なくなってしまった。もうどうしようもない。

 

〇さてどうしたものかと悩んでいるうちに、Twitterで『ひとりぼっち惑星』というアプリが人気になっていた。その雰囲気が好きですぐにインストールして、一通り進めた。内容はボトルメールと放置ゲーの融合のようなもので、惑星に生き物がいないという点が非常に気に入った。アンテナを組み立てると言うのもなかなか良い。

 

ひとりぼっち惑星を App Store で

ひとりぼっち惑星 - Google Play の Android アプリ

 

 とりあえず受信機を最大まで大きくして、送信機を組み立てたらゲーム自体はなんとなく飽きてしまった。何通かこえを受信してみたけど、なんだかぴったりはまるものがなかった。「ハマるのがなかったら自分で作ればいいじゃない」ということで「誰もいなくなった惑星に残された人工知能」の話を書こうと言うことになった。

 

〇元々人外の思考を書くのは大好きなので、大体の流れはすぐに出来た。自分が一人称を選択するのは、短編小説の場合最初と最後の思考の変化の過程を書くのが好きだからだ。この揺れ動く感情を追っていく感じが好きだ。作者は物語の結末をある程度知っているけれど、登場人物は何も知らない。「何が起こっているのだろう」と自分自身に問いかけている登場人物が大好きだ。その期待に答えたり、時に裏切ったりするのが非情な作者と登場人物との距離だと思っている。

 

〇この作品と短編小説の集いで書いてきて似ている作品と言えば、『鉄板の上の花見』だろうか。これも最初はカン助の一人称で書こうとしていたけど、ぐっと引いた視点で書いたほうが生えると思ってこの形に収まっている。多分この時代のずっとずっと先の話が今回の物語の世界なのだろう。

 

nogreenplace.hateblo.jp

 

人工知能どうしの会話で楽なことは、セクシュアリティを気にしないでよいということです。人間の場合、どうしたって年齢と性別で限定されたキャラクターになってしまいます。その制限が面白いと言えば面白いのですが、「人類消滅後」という人類の枠が外れた世界で「性別」という概念は邪魔かなと思いました。人間に逢いたい、というより何でもいいから自分以外の存在と触れていたいと言う知性体としての欲求(?)がメインです。

 

〇この作品を書き終わって思うのが、結末が非常にありきたりになってしまったということです。どうしても「出会い」があったら「別れ」を描かなければ主人公の心情の変化は生まれにくい。それに、そちらのほうがとりあえずドラマティックになってくれる。もっと時間をかけたらもっと別な道があったのかもしれない。ただ、この世界にはかなり制限がかかっているのであまり突飛な展開にもしにくい。適度に説得力のあるこのくらいの終わり方でよかったのかもしれない。

 

〇誰もいない星で機械だけが動いている、というと最初に思い出すのが『火星年代記』の『優しく雨ぞ降りしきる』だ。ティーンの時にこれに出会ってしまって、それ以降ずっとこの短編が引っかかっている。読んだ時は「人間がいないのに物語が成立している」というところでとにかく驚いた。擬人化したものが出てくるわけでもなく、淡々と描写されるシーンに心を打たれた。また、『ロボットの心』という新書には「果たして知能とは何か」ということで「チューリングテスト」や「中国語の部屋」などロボットの思考パターンから「心」というものが生まれるかということが書いてあった。非常に面白いので読んでもらいたい。

 

ロボットの心-7つの哲学物語 (講談社現代新書)

ロボットの心-7つの哲学物語 (講談社現代新書)

 

 

〇割と本気で「ロボットに心はあるか」ということは考えている。その逆は「人間には全て心があるか」ということにもなって、「自分の心を表現できない者は心を持っていると言えるのか」ということにもなってくる。個人的にこの辺の隙間を埋めるのが物語の存在だと思っている。その辺の見知らぬ爺さんと自分の家の犬のどちらかを助けるかと言えば、まず自分の家の犬を助けるだろう。また、見知らぬ爺さんと長年使用しているペッパー君だったら、やはりペッパー君に軍配が上がるのではないだろうか。ペッパー君は直せばいいかもしれないけれど、二度と戻ってこないとなった場合、見知らぬ爺さんに勝ち目はない。この差は「自分と共有した物語」の量にあって、同じ時を過ごしただけ愛着と言う物語が発生して、そこに「心」を見出す。「心」というのは自分自身の内面を外部に写し取ったものじゃないのだろうかと最近は思う。

 

〇そんなわけで人工知能の話を書きました。タイトルは海野十三の『十八時の音楽浴』からです。話の内容はこちらの作品とあまり関係ないのですが、『1984年』をもう少しカジュアルにしたみたいな話で好きです。ちなみに作品内で時報が十八時になったのは偶然です。

 

十八時の音楽浴

十八時の音楽浴

 

 

〇いつも最初は思うのに途中でくじけて違う話に逃げるので、次回こそベタベタしてねっとりした人間関係を書きたい。終わり。

 

題詠短歌企画『仮置き倉庫に閉じ込められた』 091-100

 いよいよ完走。おつかれさまでした。

 

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お題リスト - 題詠blog2014

 

091:覧

「ほらご覧、お空のお船が流れてく」「救命ボートは積んでるのかな」


092:勝手

 「何故泣くの」今は二人で話そうか かんかんカラスの勝手口から

 

093:印

 ヨーグルト味のカレーを食べたから印度政府の要人になる

 

094:雇

 壊れかけた扇風機を叩いてる日雇い払いの安酒飲み屋で

 

095:運命

 戦いに勝つことだけが運命と永劫続くロスタイムかな

 

096:翻

 ストレートティーをくるりと翻す スカート丈の短いあの人

 

097:陽

 陽だまりの中で人は抱き合って 陽だまりの外で泣いてるんだね

 

098:吉

 「吉野家の吉も下のが長いから」 前の席の吉田の口癖

 

099:観

 この星で最初に生まれた生き物は観測デッキで星見ぬ二人

 

100:最後

 最後まで分かり合えない仲だから仮置き倉庫に閉じ込められた

 

題詠短歌企画『仮置き倉庫に閉じ込められた』 081-090

 直感を大事にしました。

 

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お題リスト - 題詠blog2014

 

081:網

 前世から伸びる縁(えにし)を手繰り寄せ再び出会う網の中で

 

082:チェック

 確信を持てない指が動き出す 朝から晩までチェックチェックチェック

 

083:射

 エメラルド色の彼女が言いました「私の彼は射撃の名人」

 

084:皇

 お台場でポップコーンをペイしてる真っ昼間の皇帝ペンギン

 

085:遥

 遠くまで飛んでかないよと春風を追い越してもう君は遥か

 

086:魅

 当たり前の朝がこんなに怖いのに魅力なんてあるわけもない 

 

087:故意

 「ゆくゆくはお嫁に行ってもらいます」「故意の事故なら保証はつかない」

 

088:七

 初めてのキスの味は覚えても七度目くらいは忘れてしまうね

 

089:煽

 青い夏 青い海から星影を仰ぎ見るのを煽らないでね

 

090:布

 赤や黒その他いろいろ汚いの 布に包めば誰も知るまい

 

もしサザエさん一家が京都に行ったら

 京都駅でサザエさんのお菓子を見つけて、そこから思ったことをつらつらと。

 

 

 このお菓子のコンセプトは多分「磯野一家が京都旅行をしたら」みたいな感じなんだろうけど、現実問題として「定年前くらいの夫婦とその娘息子(小学3年と小学5年)、娘夫婦(20代前半)とその子供(3歳)」が世田谷から京都まで旅行するということを考えると何だか気が重いなあと思ってしまったので。

 

 まず東京からやってくるわけで新幹線で来るんだろう。そしてあちこち観光してせいぜい一泊して東京に戻るんだと思う。それにしてもここで考えられるのがタラちゃんという3歳児のハードルだと思う。アニメのタラちゃんは何でも「わーすごいですぅ」で終わらせるけど、実際問題帰省などで長時間移動をしたことがない3歳児を2時間~2時間半も新幹線に乗せておくのは大変なのではないだろうか。それにアニメのカツオやワカメはかなりしっかり座っていそうだけど、新幹線に興奮した小学生がどうなるか。そんな心配をしてしまう。フグ田家で3席並び、磯野家で2席×2が妥当か。

 

 そして京都についてから心配なのが、やはりタラちゃんだ。京都で見るところと言えばやはりお寺。波平やフネは落ち着いたお寺を見たいと思うだろうけど、子供には非常に退屈だろう。アニメのタラちゃんなら「わーお寺きれいですぅ」とか言いそうだけど、正直3歳児が金閣寺西本願寺を見て興奮するとは思えない。それどころか飽きて泣き出しそうだ。実際、今回京都で市バスに乗っていた時おそらくベビーカーに乗るくらいの子供が泣いていて、おそらくタブレットか何かで子供向けの映像を流してあやしていたところから考えても子供向けにはかなり辛い。「おそらく」というのは自分が市バスの後ろに乗っていて状況がよく見えなかったのと、20分くらいずっと外国語のこども向けのポップな音楽が車内全体に響いていたからです。なんつーか、文化の違いを感じました。

 

 3歳児だけじゃなくて、寺だけなら小学生も退屈しそうだ。新撰組関係の場所に行けばまだ当時の刀傷とか残っているらしいのでカツオくらいなら面白がってくれそうだけど、ワカメはどうだろう。別の意味で面白がるかもしれない。

 

 結局行くなら「東映太秦映画村」とか「京都水族館」系とか「鉄道博物館系」とか「京都タワー」などになるのかなぁと思うのです。それはそれで非常に楽しそうです。だけどやっぱり気になるのがタラちゃん。例えば両親の帰省などで頻繁に長時間のおでかけをしているならば何となく「長旅の心得」などは小さい時からありそうなのですが、滅多に長距離のおでかけをしないタラちゃん。途中で疲れてずっとマスオの背中で眠ってそうだ。

 

 現代なら泊まるのも旅館よりホテルだろうけど、波平一家は「ベッドでは落ち着いて眠れない」からと少し広めの部屋がある旅館になりそうだ。男性陣は夜はビールで乾杯と行きたいところだろうけど、フネあたりは「何もしなくていいのか」と逆に落ち着かないのではないだろうか。一応マスオの実家が大阪にあるから、フグ田一家は大阪で一泊するのもありなのかもしれない。磯野一家と別行動になるけれど、現実的にそれが一番ではないだろうか。

 

 他人の家ながらかなり心配してしまったけれど、「サザエさん一家でおでかけ」が成立しそうなのはタラちゃんが3歳児とは思えない空気を読み過ぎるスーパー3歳児だからであって、カツオもワカメも現代の中学生くらいの落ち着きを持っているからなんだと思った。なんだろ、やっぱり子供がどんどん幼くなっている感じはする。なんでだろう。誰か詳しい人に細部のシュミレートをしてもらいたい。仏閣観光バージョンと、映画村バージョンくらいで。

 

 あとこの話と関係ないけれど、「ご当地お土産って本当に節操がないな」と思ったのは、『銀魂』の銀時が新撰組の服着てるご当地ストラップですかね。なんか他にもいろいろあっただろうにそのチョイスは『銀魂』のストーリーの根本からして間違ってるんじゃないだろうかと思う一方で「銀魂だからしょうがない」と思ってしまうのでやっぱり銀魂すごい。おわり。

 

item.rakuten.co.jp

 

いつもの

 今度は2か月半か。次第にスパンも短くなってきた。暑いうちにもう一回くらいやってきそうだな。

 

 もう何回も繰り返しになるし言っても届けるべき人に届かないことは過去のことでわかっているのですが、「すぐに調べればわかることを調べないで失敗をする」とか「他人の忠告を全て誹謗中傷だと思う」とか「自分が何をしているのかよくわかっていない」とか、そういう人間関係のうかつさがネットで浮き彫りになっているということなんだと思う。

 

 個人的にはブロック機能の前にはてなブックマークはてなブログの付属品じゃない」ということを周知させるのが先だと思う。「こういう使い方は歓迎されない」とか「他のページもブックマークしてみよう」とか、そういう振る舞いを学ぶことが出来れば衝突を回避できる事案も多かったと思う。だけど「知るべき人間に届かない現象」が発生しているので、結局全部燃やしてイチからやり直すのが早いのかもしれない。この時も「仲間のブログだけじゃなくていろんなサイトをブクマしようよ」って言ったんだけど、結局なかったことになっているし。

 

nogreenplace.hateblo.jp

 

 それからはてなブックマークユーザーも増えたんだろうから、新着ブクマ入りを3userから10userくらいにしてもいいんじゃないかと最近思ってる。そうすれば大分「あからさまな互助活動」をしているブログが新着に登る頻度も下がるだろうし、新着入りしてバズった結果哀れな末路を遂げる自称初心者ユーザーも減るんじゃないかと思うんだ。「ブックマーク機能の周知徹底」と「新着ブクマ入りのユーザー数を増やす」をやってもダメな場合に初めてブロック機能が必要だと思うし、それでも怪しい記事が挙がってくる場合何らかの不正の可能性が高いのでやっぱり怪しいのはさくっと通報が一番ですかね。

 

 増田がスパムに乗っ取られてから怪しいブックマークユーザーもかなり通報してるんだけど、判断に迷うユーザーもいる。非常に無難なことを書いていていわゆる「互助会的話法」でブクマをつけて回ってるんだけどアカウントにブログが併設されていないしブログ以外の記事にもブックマークがある。そういうわけで巧妙な誰かのサブアカウントなのか、それとも中の人が真剣につけているのかわからない。もし中の人が考えてブコメしている場合には通報はしたくない。だけど、アイコンからしてかなり怪しい……。もうこの手の問題は「ネット上で個が個でいられるか」というところに来ているのかもしれない。ゴーストなき人工無能か、ただの語彙力が非常に不足している人なのか。今後アカウントを取得する際、チューリングテスト*1を実施するような世界が来るとしたらそれはそれで地獄だよなぁ。

 

 【一連の過去記事】

nogreenplace.hateblo.jp

 

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