あのにますトライバル

君の気持ちは君の中でだけ育てていけ。

君たちは『星守る犬』を覚えているか

 一時期とても流行ったのですが、内容が内容だけにすぐに忘れられているんじゃないかって思う漫画があります。

 

 

 ひまわりの中でほほ笑むかわいいワンちゃん。タイトルも相まって「かわいいほのぼのした漫画なのかな」って思って買います。自分も本屋で見かけてそう思って買いました。

 

 結論から言えば、この犬は死にます。

 もう一度言います。この犬は死にます。

 残酷ですが、この犬は死にます。

 

 この漫画は、放置車両から死後1年から1年半と思われる身元不明の男性の遺体が発見されるところから始まります。そしてその側に男性の死後しばらく生きていたと思われる犬の死骸もありました。なぜ彼らはこんなところでこんなことになったのか。そういうお話です。

 

 お話の主人公はみくちゃんの犬ハッピー。ハッピーはみくちゃんとお父さんとお母さんと一緒に暮らしていきますが、時間が経つにつれて家族の形が変わり、家にはハッピーとお父さんが残されました。お父さんは家財道具をまとめ「気ままに南にでも行くか」とハッピーと車で旅に出ることにしました。

 

 この話に悪人は出てきません。ただ誰かが誰かを思いやりすぎていたり、思いやる心を忘れていただけなのだと思います。淡々としている中にぎょっとするような「死」というものが顔を出す瞬間がたまらずぞっとするような漫画です。

 

 おとうさんは、おそらくいくらでもどうにかする選択肢はあったのです。しかし、自分で選択肢を最悪なほう最悪なほうに選んで行ってしまっただけなのだと思います。それはここに登場する人々に少しずつあって、作中で身元不明遺体の調査をする奥津の言葉を借りるなら「もっと恐れずに愛すればよかった」ということなんでしょう。照れくささとか面倒くささとか、そういうので人はいろんなことを後ろに放り投げるけれども後で「もっとこうしていれば」と思っても後悔しか残らないのだろうと思います。でも一生懸命生きている瞬間って、それになかなか気づけないのですよね。うーん、ビター。

 

 愚行権、じゃないけれどもこういった人々に対して「自己責任」という言葉を投げかけるのはなんだか違うよなーとやっぱり思うのです。じゃあ全員救済できるのか、と言えばそんなこともできず。できるのは多分、隣の席に座る人にやさしくするくらいなんだろうなって思います。

 

 なおこの話はハッピーと奥津の話の他に、作中登場する虐待されている少年やハッピーの兄弟の話なども一緒に読むと改めて「生きるってなんだろうな」って思います。

 

 

 ちなみに西田敏行主演で映画にもなっています。

 

 

 これ、原作と違って南ではなく北へ向かって行くことになったのでロケを北海道や東北各地で行っています。特に中村獅童がコンビニ店員を演じた場所のロケ地、福島県の永崎海岸ですが撮影後東日本大震災津波の被害に会い、奇しくも当地の被災前の様子を記録した映画となってしまいました。

 

 ちなみにこのブログ書いている人、この映画に出てくるショップ永崎ではないですがその向かいあたりにあったファミマでよく缶コーヒー買って夜の永崎海岸を眺めるということを震災前にやってました。だからなんかすごくシンパシーなんですね。

 

moviewalker.jp

 

 西田敏行の「お父さん」はもちろん、個人的に原作にはない役割の三浦友和がものすごく印象に残っています。しかし西田敏行が犬を食いすぎていて、犬の扱いがちょっと微妙になってしまったので犬映画としてはおすすめできません。僕のワンダフルライフのほうがいいです。

 

 しかし原作とそこまで相違点はないので、ハンカチは必須です。泣きます。なんか、もっと自分も何かできないかなあ、無力だなあって本当に思うんですよ、こういう映画。

 

 なんていうか、「タコピーっぽい漫画があるっピ」とか「いやプンプンだ」というけれど、個人的に思いついたのはこれだったので(寄る辺ない者が着の身着のまま南へ向かう)ちょっと記事にしてみました。あ、違うな。『真夜中のカーボーイ』かもしれない。なんだかんだ言われているけど、個人的にタコピーは好きだっピ。あのタコピーの無邪気なところが本当にいいキャラだと思うっピ。あとはどうでもいいっピ。おわり。

 

お題「邦画でも洋画でもアニメでも、泣けた!というレベルではなく、号泣した映画を教えてください。」