あのにますトライバル

君の気持ちは君の中でだけ育てていけ。

【追記あり】システムを理解する人しない人

こんな話題を見かけて、思い出したこと。

 

togetter.com

 

老人になるとタブレットでの注文や配膳ロボットがうまく扱えないという話題で、それは老化の問題ではなく「周囲の異文化を理解するか」でないかと思うのです。

 

例えば老人でも、常に外部から情報を入れていれば「これがニュースで見た配膳ロボットか!」くらいのリアクションにはなるわけで、そいつらはタブレット注文も配膳ロボットも最初は戸惑うけど、すぐに慣れる。最初から「そういうもんになったのか」という受け入れ態勢があるから、すんなりと文化の中に入っていける。

 

そしてこれからする話はもう随分の昔のことになるけど、このブログ書いてる人にとって結構印象深い話として残っているファミレスバイト経験記です。

 

ファミレスバイトを始めて日が浅い頃、オーダーを取りに行った老夫婦が「烏龍茶」と注文をした。「烏龍茶はドリンクバーにございますのでドリンクバーのご注文でよろしいですか?」と聞き返すと「は?あたしゃ烏龍茶が飲みたいの!」「ですから烏龍茶はドリンクバーに……」「訳の分からないこと言わないで、さっさと烏龍茶を持ってきてちょうだい!」とのこと。

 

つまり、この老夫婦はドリンクバーの仕組みを理解していないのでそれまでの飲食店で頼むのと同じように単品の飲み物として烏龍茶を注文している。ついでにお水がセルフということもよくわかっていなかった。ちなみに、当時ドリンクバーが画期的だったわけではなく世間一般に広く浸透していたことは記しておきます。

 

ここで自力での対応は無理だと諦め、一緒にフロアにいる先輩に助けを求めた。そこでの先輩の模範解答は「かしこまりました、と引き下がってオーダーはドリンクバーを入れる。それから自分で烏龍茶をドリンクバーから持ってきて、老夫婦卓に配膳する」だった。ついでにお冷も配膳してた。先輩かっこよかった。

 

そこでの教訓は「概念のわからない人に概念を説明して自力でできるようにしてもらうより、概念がわかってる人がお膳立てして辻褄を合わせるほうが誰も傷つかない」だった。それまでは「人類みな話せば分かり合える」と思っていたので、これは衝撃的だった。

 

だから、多分未来というのは老人にとって絶望ではなく絶望を感じる前に「わかる人が代わりにやる」だけだと思う。そして「こいつはわからないんだな」と思われていくだけで、わからない人は何がわからないかわからない。絶望してる人はまだ理解しようとするだけ救いがあるのだ。

 

例えば「ハンバーガーとコーラ」と注文されたときに「セットにしますとお安くなりますよ」と言われて「あら、じゃあそうしてもらおうかしら」となるのか「セットだか何だかしらんが、俺はそんなもん頼んでないんだ、さっさとハンバーガーとコーラを寄越せ!」となるのかの違いだ。前者は得をして、後者は店が気を利かせて勝手にセット価格にするか、本人の言葉通り単品価格で注文して損をするかだ。

 

しかし勝手にセット価格にすると「何で安くなってんだよ詐欺じゃねえか!」と怒られる可能性もあるし、セット価格で購入した人と比べて「何であっちのが同じ商品なのに安いんだよ詐欺じゃねえか!」とやはり怒られる可能性がある。どのみち怒られるので、店は怒りの導線がどれなのか引っ張るあみだくじをやるような事態になる。

 

例の老夫婦が「ドリンクバー」という概念を習得すれば、次回以降注文で手間取ることはないだろう。しかし、またファミレスに行った際に同じような問答を繰り返すかもしれない。それは老夫婦のみならず、社会が背負うコストにもなってしまう。そうして社会も面倒くさいのでタブレットで注文してください一択になってしまう。

 

マイナンバーやペイペイなど、今の世の中は覚えることがたくさんある。それを背負えるかどうかというのは加齢よりも本人の資質によるところが大きく、加齢でより顕著になるというだけのような気がしている。そんなことなどをつらつら思い出しました。おわりです。

 

 

【追記】

こんなに読まれる想定で書いてなかったので、もう少しハンバーガーセット価格について細かく書きます。

 

この話は「システムを理解しない人」という例です。大前提として「ハンバーガーとコーラを同時に注文する際にセット注文にすると安くなる」というのがシステムです。システムを知っている人は最初からセットを注文し、システムを知らなくても理解しようとする人は店員からのススメでセットで注文します。

 

ところが、セットというシステムを受け入れる気がないと「ハンバーガーとコーラ、その他にセットという得体の知れないものを買わされる」と思います。だから「ごちゃごちゃ言ってないではやくハンバーガーとコーラを持ってこい!」となります。彼らの認識では「ハンバーガー、コーラ、セット」なのです。

 

だから、勝手にセット価格にして販売すると「ハンバーガー、コーラ」を注文したはずなのにレシートに「セット」という得体の知れないものがあって、それで何故か単品で買うより安くなっている。システムを理解できないと「なんでハンバーガーとコーラを一緒に買うと安いんだ?」「どうしてハンバーガーとナゲットでは安くならないんだ?」と理解が追いつかず店のせいにしてキレるわけです。

 

ここでキレるのに理解ができない方が大多数だと思いますが、この過程で「恥をかかせやがって」「店員のくせに指図して生意気だ」などキレる理由はそこそこあります。ここから先は違う話になるのでおしまいにしておきます。

 

「そんなヤツいるのかよ」と思うのですが、これは極端な例です。それをどこまでカバーできるかっていうのは、やっぱりAIだけだど無理だと思います、はい。

 

つまるところ、システムで社会を回すならシステムを覚える気がない人のためのコストはある程度必要で、そのコストをいつまでかけられるのかってことかなと思います。ただシステムを理解する気のない人は、応じて他人を理解する気がないのでコミュニケーションのコストが跳ね上がります。ここから先はシロクマ先生とかが詳しい気がするので追記はこのくらいにしておきます。