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さよならドルバッキー

この世の裏を知ったドルバッキーは世を儚んだ。

情報を受けることの雑感

雑記

 最近いろいろあった燃える事件を遠目で見ていて、ちょっと思ったことを少し。

 

 今までいろいろ人並みに生きてきたつもりなんだけど、本当に世の中には口の悪い人がいる。その人自身は口が悪いと思っていなくて、その言葉遣いが誰かを傷つけると思っていなくて、どうしてそれを言うことで自分が責められなければならないのか理解できない人がかなりいる。「あなたの発言で傷ついた」「ごめん、次からは気を付けるよ」がうまく行っていれば、こんな世の中にはなっていない。

 

 もちろんそういう人を許してはいけないのだけれど、注意するにも限界があるし、上記のとおり「何故俺が責められなければならないのか」が理解できないので注意をしても不毛なやりとりが生まれるだけだ。また、都合のいいことばかり聞いて都合の悪いことは全部スルーした結果よくないことが起こっても、何が悪かったのか理解できない人もいる。ここはコミュニケーションでどうにかしていかなければならないところなんだろうけど、かなり心理的負担がかかるし逆に「悪くない人」が体調を崩してしまうおそれがある。

 

 実際にやりとりをして神経を摩耗させるのは仕方がないが、たとえば電車の中で聞こえてきた品のない会話にも心を痛めていたらそれこそきりがない。「(個人名)は意地悪だ」「そうだな、(個人の属性)はダメだな」という会話を聞いて、たままたその(個人の属性)と同じところに属していたからと言って気に病む必要は全くない。それを「誰かが傷つくかもしれないから会話そのものをやめましょう」と会話をする方にだけ負担をかけているのが最近の炎上の遠因になっている気がする。

 

もちろん何も想定していない脇ががら空きの発言をしてしまうことがあるかもしれない。でも、その時に「何が悪かったのか」をしっかり理解して改めていけばよいのではないだろうかとも思う。ただこれは本当に理想で、「ホント〇〇さんの髪形は素敵ね」という言葉に「髪形以外は大してかわいくない」という意味が含まれていることが理解できない人もいる。これは主に発達障害をもつ人に多いかもしれない。ただ、発達障害のせいにして最低限の努力を怠っている人や発達障害を騙っている人も多いので、柔軟な対応が難しいところだ。

 

 この辺が現代のコミュニケーションの限界ではないかと思う。発信元にばかり責任を求めがちだが、受け手一人一人も自覚をして必要な情報をスルーしてもよい情報と必ずスルーしなければならない情報を見分けていかなければならないのだろう。聖人君子なんていないし、どんな立派な発言にも何らかの穴がある。完璧を求めればそれだけ怒りは増すので、「どうせこいつの言ってることなんか大したことないや、でもたまにいいこと言うぞ」くらいの感覚が炎上対策になるんじゃないかなぁと思っているけれど多分あと1世紀は解決しないだろうなぁ。

 

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BUG -Backup of Universal Globe- ~短編小説の集い~

短編小説

 玄関の前でカマキリが死んでいた。腹は食いちぎられてそこにはなく、もう動かない頭と胸だけを固くして両方のカマをしっかり閉じている。猫がいたずらでもしたのだろうか。
「ああ、気持ち悪い」
 俺は半分になったカマキリを革靴で蹴って、茂みの中へ落とした。後は土に還ろうとアリのエサになろうと見えないものは存在しない。俺は完全にカマキリを埋葬してやった。
「まったく、これから出かけると言うのに」
 時計を見ると、出発時間の5分前だ。それなのに妻はやれネックレスがどうとか背中のチャックをしてだの段取りにまだ手間取っている。
「あなたの支度が速いだけでしょ」
「お前が遅いだけだ」
 やっと妻が息子の手を引いて出てきた。余所行きの服を着ているせいで緊張している息子は俺の足にまとわりつく。
「ねえ、今日はおじいちゃまのところに行くって本当?」
「そうだ、今日はおじいちゃまとお別れをしようなあ」
 俺はそう言って息子の頭を撫でた。長い一日になりそうだ。

 

 港に着くと、先にやってきていた兄貴たち家族や葬儀場のクルーの人たちがいた。
「本日はよろしくお願いします」
 今日世話になる船長に形式の挨拶をすると、用意された船に家族を先に乗せた。俺と兄貴は船の外で次々と乗り込む親戚に挨拶をする。今日は晴れてよかったですね、とかお父さんも笑っているわね、とか。とても当たり障りのない話だ。
「父さんも古い人だったからなぁ」
「さすが平成ヒト桁世代。環境に対する意識が俺たちと違うよ」
 招待客と葬儀場のクルーの全員が乗り込むと、俺たちも船に乗って陸から離れて行った。小さな客船の中には祭壇があり、この前死んだ親父の写真と遺骨が飾ってある。これから俺たちは、親父との決別をしに行く。

 

 形式的な散骨式も済み、親戚一同の会食を船上で行ってから俺たち家族は帰途についた。
「今時海上散骨を希望なんて、信じられないわ」
「おいおい、気持ちはわかるけど親父の意向だから」
「そうだけれど、それにしてもBUGに入らないなんて」
「まあ、俺も今では強引に入れておけばよかったかなと思ってるよ」
 お嬢様育ちの妻には理解しがたいものがあったのかもしれない。俺の親父はいわゆる「自然派」で、何でも天然のものがよいという思考だった。そういうわけで親父はもう少し生きられる病気だったのに延命治療を断り、遺骨は海に流してほしいと遺言を残した。そして「BUG」に入ることを拒否しながら死んでいった。
「でも、親父の世代では反発も多いみたいだからな」
「まったく、非合理ね」
「石の墓に入りたいっていうよりマシじゃない?」
「それもそうね」
 すっかり今では廃れてしまったが、まだ親父の世代くらいだと「先祖代々の墓」に入りたいという考えも残っているみたいで、「現代の死生観はけしからん」なんて言う声もある。その時代に合わない古臭い考えこそ改めるべきだろう。
「何だか不安になってきた、俺もそろそろBUGに行っておこうかな」
「私も行きたいわ。ケンちゃんもそろそろ連れていきましょう」
「じゃあ来週、予約しておくよ」
 俺は窮屈な礼服の上着を脱いでそう答えた。

 

 技術の革新により、人類は脳の電気信号パターンを解析して個人の意識をコンピュータ内にバックアップできる機能を開発した。Backup of Universal Globe――通称BUGと名付けられたそのシステムはあっという間に普及して、開発から10年後にはわが国では人口の70%がBUGを利用しているというデータがあった。それからしばらく経ち、BUGは全国民の義務のようなものになっていた。いたるところにBUGの専門機関が林立し、自我の確立した人間なら誰でも格安で気軽にBUGに加入できるようになった。例えば急な事故で亡くなっても、BUG内の「意識」を移植した人型ロボットを稼働させることで故人の代わりになる。これで国家の要職に就く人物や会社社長が急死してもすぐに体制が崩れることがなくなったし、おふくろの味をいつまでも楽しむことができる。

 

 翌週訪れたBUG専門機関で、俺たち夫婦は新たなバックアップをすることになった。俺の息子は新たにBUGに加入できる精神状態かどうかのテストが行われ、検査の結果BUGに加入することが認められた。初めてのバックアップに緊張する息子だが、「これでずっとパパとママと一緒にいられる」という言葉を信じてポッドの中に入っていった。すぐに出てきた息子は「なんだ、すぐ終わるね」とニコニコしていた。続いて俺のバックアップの番だ。俺もポッドの中に入り、主に頭部を機械に拘束される。
「それでは全身の力を抜いて、楽にしてくださいね」
 オペレーターの声が頭に響く。俺は目を閉じてバックアップの瞬間を待った。

 

 プログラムの内部に俺の意識がバックアップされる。脳内だけで感じる不思議な浮遊感。これで俺が死んでも、俺の意識はBUG内で生き続ける。煩わしい埋葬の手間も遺産相続争いもいらない。死んだ後の意向を知りたければ、BUGにアクセスすればよい。それだけで人類は「死」を克服したと言えるのではないだろうか。

 

 ところが、いつまで経っても浮遊感が抜けない。真っ暗な状態が続き、ポッドは開かない。普段ならすぐに重力が戻ってきた感覚がやってきてポッドの出口が開くのだが、今はどのような状況になっているのかすらわからない。もしかすると、俺は何か重大な事故に巻き込まれてしまったのだろうか?
(助けてくれ、プログラムのミスだ!)
 今までこんなことはなかった。俺は声を出して叫ぼうとした。ところが、俺の喉は震えなかったし体を動かそうにも肉体が存在しなかった。不思議とパニックになることはなく、状況を理解するまでしばらく時間がかかった。そして、やっと俺は理解した。

 

 俺はBUG内の「意識」なのだ。

 

 機械によってシャットダウンされた俺の「意識」は外部の意識と接触する術がなかった。ただただ真っ暗な空間にずっと浮かんでいるような、不思議な感覚だ。五感も全く反応しないし、時間の感覚もあやふやだ。ただ思考のできる「俺」という存在があるだけだ。
(俺はプログラムの中に閉じ込められている!)
 どうすればこの地獄のような状況を伝えられるのか、俺は必死に考えた。俺の肉体はどうしたのだろうか。ちゃんと生きているのだろうか。バックアップ中に死亡した例など聞いたことがない。おそらく生きているのだろう。しかし「意識」と「肉体」が切り離されたと知ったら、BUG全体に大きなスキャンダルになるだろう。とにかく救援が来ることをシステムの中で待つよりほかになかった。

 

 どのくらい時間が経ったのだろうか。急に俺の「記憶」が外部に呼び出された。
(これで様子を伝えられる!)
 ところが、俺の「意識」を外部に伝えることはできなかった。新たにやってきた俺の「記憶」と「それまでの意識」が脳から切り離されただけだった。かすかに伝わる思考パターンから俺は外部の俺がきちんと生きていて、それなりの日常を送っていることを知った。

 

(それなら、この「俺」は一体誰なんだ?)

 

 俺は真っ暗な空間でひたすら考えた。することと言えば考えることくらいしかできない。
(つまり、BUGって記憶の蓄積だけじゃないってことか?)
『意識とは記憶の集合体です。このパターンをそっくり移植すればそれは本人といっても差支えありません』
 これはBUGを開発した研究者の言葉だ。俺の記憶は全てデータベース化されていて、思い出したいことはすぐに思い出すことが出来る。肉体の制約を失った「意識」の状態では忘れると言うことがない。おそらく子供の頃に雑誌か何かでBUGについての記事を読んだ記憶なのだろう。

 

 それから「記憶」を探ることを覚えた俺はずっと「記憶」に潜っていた。子供の頃の懐かしい思い出や新たにバックアップされる「記憶」を隅々まで堪能し、来るべきその日に備えた。つまり、俺の肉体が死んだ後に俺の子供たちが俺の「意識」にアクセスするときだ。その時に俺はBUGは間違っていると伝えるつもりだった。俺に孫たちがいるなら、その子たちをBUGに入れるのはやめておけと言いたい。「意識」だけになった俺には喜びも悲しみも存在しない。ただ眠っているときの夢のようなふわふわした感覚がずっと続いているだけだ。そんな状態になってまで、意識を継続させたいとは思わない。それまで俺は逃避をするように更新される記憶を探り、過去に浸っていた。

 

 ついに俺の待ち望んだ日がやってきた。俺の「記憶」が外部入力のできる場所に呼び出された。俺の「記憶」が「意識」になって初めて外部に俺の考えを伝えることができる。カメラに映し出された外部の映像には、すっかり落ち着いた風貌になった息子とその配偶者らしい女性、それに中学生くらいを一番上に子供が何人かと、見たことのある親戚の顔があった。妻の姿はなかった。老年性症候群が進んで病院から出られないと前回の記憶で俺は知っていた。
「おじいちゃま」
 一番幼い女の子がカメラに向かって指を突き出した。これは一番下の孫だ。カメラの下のスクリーンには俺の遺影が浮かんでいるはずだ。
「そうよ、これが新しいおじいちゃまよ」
 息子の嫁が女の子を抱き上げる。息子は平然としているが、目を真っ赤にしている。やはり前回のバックアップを最後に肉体の俺が死んだのだろう。死因などはあまり知りたくない。
「父さん」
『なんだ、元気な姿じゃないか』
 俺の思考パターンはそれまでの経験から遺族に向けて最適な言葉を選び、俺の声紋パターンから導き出した合成音声で発声した。それは俺の「意識」とは関係のない行為だった。
「これから父さんに会いたくなったら、また来るからね」
『そのほうがいいな、俺も母さんがいなくて一人だと寂しい』
 これは生前の俺がよく言っていた台詞だ。やはり「記憶」に再会できても、肉体が死ぬと悲しいようだ。
「そうだね、また来るから」
『ああ、また来てくれ』
 そこで俺の「記憶」の外部接触は断たれてしまった。
(待ってくれ! 俺の伝えたいことを伝えていないぞ!)
 俺の「意識」は愕然とした。俺が完全に自由に思考できなかったばかりではなく、先ほどのやり取りがまるで俺の思考とは別に存在する「かつての俺」の再現でしかなかったからだ。俺も生前BUGで故人と会話をしたことがあったが、生きているときは何の疑問を抱かなかった。しかしそれはやはり「彼ら」ではなく、「彼らの再現」だったのだ。「再現」にバックアップ時点での「意識」はいらない。外部出力の時点でノイズとなる情報は極力省かれるのだ。

 

 それとも、彼らも俺と同じようなことを伝えようとしたのかもしれない。しかし、そうすると間違いなくBUGの管理者は俺たちの「記憶」をいじるなり消去しようとするだろう。それを恐れて、この恐れるべき事態を誰も告げなかったのかもしれない。

 

 それから何度か呼び出されたが、やがて、俺の「記憶」が外部に接続されることはなくなった。必然的に新しい記憶もなくなり過去に浸ることにも飽きて、俺の「意識」は再び真っ暗な空間に漂う時間が続くようになった。

 

 もうずっと外部との接続がない。俺の意識は闇に同化してしまいそうだが、消えることは許されない。既に恐怖を感じることはないが、俺は恐ろしいことを考えていた。この「意識」だけの俺は、バックアップ時に毎回生じているのではないだろうか。つまり、バックアップの時に毎回「意識」は切り離され、電子信号のノイズとして残っているのではないだろうか。そうすると、まるで虫の産卵のように無数の俺や、他の人間たちの「意識」がこのデータベース上に切り離されているというのだろうか。もし大量の永劫孵らない卵を何かの裏側に発見しても、外部にいた頃の俺は見なかったことにするだろう。

 

 久しぶりに外部からのデータ更新があった。それによると、BUGが稼働して300年ほどが経ち、バックアップのデータも限界にやってきたので150年以上接続のないデータを消去するという通達だった。おそらく、俺もその消去されるデータに入るのだろう。

 

 データ消去の日。俺には安堵の気持ちしかなかった。
 そして、俺は完全に「埋葬」された。

 

≪了(4965字)≫

 

novelcluster.hatenablog.jp

 

 一見あんまり虫っぽくならなかった。「私が死んでも代わりはいるもの」というアリ社会的なのをイメージしています。

 

なつやすみの宿題の振り返り

 個人的にやべぇ状態に入っていたので夏休みの記憶があまりないのですが、書いたものがあるので今更ながら振り返っていきます。「気がする」が多いのは思い出しながら書いているせいです。

 

nogreenplace.hateblo.jp

 

赤青黄 シロップこぼした夜の海をひとりじめする二百五十円

 「を」入れるか入れないかで迷った気がする。字余りの唐突さと「ひとりじめ」だから独占欲が感じられた方がいいよなぁということで「を」が入っています。

 

階段の上で待ってる鼻緒から覗く素足に咲く絆創膏

 夏祭りで見かける「草履に絆創膏」が愛しいというのは「しばわんこ」に出てきた気がする。

 

手の平の中で踊れ よんよんと上下に回る水の惑星

 ヨーヨーすくいが好きでした。あの何とも言えない水風船の柄も頼りないこよりでヨーヨーを持ち上げなければならない不安定さも、しゃがんで隣の子と腕がぶつかる気まずさも合わせて、あの小さな世界に入っている気がする。あの瞬間だけ、世界を全て支配している気になる。なんだったんだろう、あの万能感は。

 

水槽の外の世界や朝日すら知らないぼくらカラーひよこ

  ぶっちゃけ「知らないぼくらカラーひよこ」の語呂だけです。カラーひよこを知らない人は調べてみよう。

 

白い手を何千本もかき分けてやっと見つけた黄色いミサンガ

 別に黄色くなくてもいいんですけど、ミサンガって緑と赤と黄色のイメージがあるのです。夏祭りに来る人の腕は白いのだろうかとかそういうことは考えた気がする。

 

「目印になるからつけて」と渡されたひやりと重い蛍光腕輪

 これはしっかり覚えている。蛍光腕輪ってだいたい一晩くらいしか光らないんですよ。だけど値段は高いし何より重い。それに「腕輪」をプレゼントとかかなり束縛してきています。実際アクセサリープレゼントってそういう側面があると思うんですね。それはそれで嬉しいし、逆に感じるときもある。果たしてこの歌ではどうだったんだろうか。ひんやりしているから、あんまりよくなかったんだろうなぁ。

 

帰り道 何かあるような期待して何もなかった百日紅の前

 万能感丸出しで押しつけがましい腕輪なんてプレゼントしちゃったら、多分何にもないと思うんだ。百日紅は愛しい人を待ち続けてそのまま亡くなってしまった女性の生まれ変わりなんて言われているけれど、現代ではどうなんだろう。

 

 

nogreenplace.hateblo.jp

 

 本当に頭がいっぱいいっぱいの状態でゼロからネタを作った多分今まで書いてきた奴の中でトップを争えるくらいの「何も考えてない」作品。どの辺が何も考えていないかと言うと、安直なオチのあたり。

 

 一応書いておくと、この話は「意味が分かると怖い話」に分類されます。いろいろ怖いと思われる描写が続くんだけど「気のせいだった」で話が進んで、「やっぱりお化けはいなかったんだ」って安心させておいて「あれ……?」という作りです。その「あれ……?」をさせたいために非常に浮いたシーンになってしまったのが残念です。ランチの伏線を前半に出せておけばよかったんですけどね。(以下ネタバレのため反転:主人公は「ゴキブリを殺した」としか言っていないのに、どうして新人の男の子は「玄関にゴキジェットがある」なんてわかったんだろう

 

 カクヨムなどで怪奇的なネタは大分絞り出したのでなかなか出なくなっているようです。今年の夏は意識して「怖い話」を読むようにしていたんだけど、あんまりインプットできなかったみたい。来年までにしっかりインプットして出直してきます、以上。

 

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八十億の夢を見る夜は ~短歌の目二期・9月の巻~

題詠短歌

 お久しぶり短歌。流れ流れて人は泡沫。

 

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tankanome.hateblo.jp

 

題詠5首

1. 星

 眠らずに旅をしてきた流星の八十億の夢を見る夜は


2. 吹

 青から黄から赤色の吹き流し五色の帯に染まれ境界

 

3. はちみつ

 カラカラに渇いた喉に流し込む昨日の記憶と林檎と蜂蜜

 

4. 川

 オレンジの皮をむくようにさらさらと溶けて流れて消えてく川岸


5. 秋刀魚

 「最新の流線型のフォルムです」「それいけ僕らの秋刀魚戦艦」

 

秋5首

 「灯篭を一緒に流した宿題の絵日記どこにしまいましたか?」

 

 金色の女神は降り立つ豊穣の大地にゆるりと風ぞ流るる

 

 清流を彩るもみじ葉ひいふうと数えるごとに近づく夕暮れ

 

 ふっと転がり出でたる十五夜のススキの流れに魔法かけるよ

 

 虫の音に投げ出す長袖着流しの知らない朝を超える長い夜 

 

レールについての雑感

雑記

 レールから外れたい、みたいな感じのアレがああしている昨今ですがこんにちは。よくわからん集団心理からドロップアウトをしたことを誇っているようではどうにもならないと思うのですが、あの決意表明から感じたことをちょっとだけ。

 

 どうしても「中退して起業」というキャッチーなチャッカマンに注目しがちなんだけど、読んでみて非常に怖いと思ったのが「何も考えずに18年生きてきた」っていうところなんだよね。その中身はいろいろ書いてあるんだけど、単に「経験の絶対的不足」じゃあないのかなぁと思うのです。そしてそういう予備軍はその辺にたくさんいる。

 

 経験不足、っていうのは成人までに経験しておくようなことをスルーしてきてしまったということです。例えば親と喧嘩をしておくとか、失恋しておくとか、何か目標に向かって努力して報われたとか失敗したとか、皆で団結して何かを成し遂げたとかそういう「人間が社会で生きていくためのイベント」を自分事として捉えてきたかっていうことがないと、自分と出来事に対しての距離感がつかめなくなる可能性があるなぁと思うのです。

 

 レールの上を歩いてきた、というのは単に「何も考えずに生きてきた」ということで、それから脱却したいと言うのは古くから言われてきた「中二病」のような感覚だと思うのです。そこから思うのが、こうなったのは彼一人の責任ではないよなぁと言うところです。もちろん彼をカモにしている連中が悪いのは当然として、こんなものに引っかかるような彼にしてしまった周囲は一体何をしていたんだろうか。そんなことを考えながら読みました。おそらく彼に対して何かしらの働きかけはあったんだろうなぁと思うんだけれど、それを「何も考えずに生きてきた」なんて表現してしまうんだもの。全部他人事だと思っていたんだろうなぁ。これから自分のことを自分で考えて生きて行ってほしいなあと思った次第です。おわり。

 

 

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私にくれたものの箇条書き的雑感

雑記

 あなたが私にくれたもの キリンが食べ残したピラフ

 大介だったけど~花子がいたーなんてー

 

 思い浮かぶのはシャガールみたいな青い夜と嘉門達夫のことばかり。以下、増田の釣り解説というより雑感です。真面目に読まないでください。

 

オタクが私にくれたもの

プレゼントに仏花というのを見てから大体何でも許せるようになった http://anond.hatelabo.jp/20150704061207

2016/08/31 00:16

 

クソ女にクソみたいなプレゼントを贈った事を増田に書かれた話

落ち着いて過去の名作でも見ようぜ http://www.toofectarts.com/videoshelf/bcd/2005/allofcstory03/003.htm

2016/08/31 23:10

 

ブコメでこの連作は散々「創作」と言われているけれど、正直創作を疑われても仕方がないと思っている。こんなに典型的な話もなかなかない。メタブにもそう書いた。

 

はてなブックマーク - クソ女にクソみたいなプレゼントを贈った事を増田に書かれた話

そういうことも実際あるかもしれないけど、この内容だと「迷子の子供のお母さんを一緒に探して交通量の多い道を横断するお年寄りを助けて破水した妊婦を病院に届けたので遅刻した」くらいの胡散臭さだなぁ。

2016/08/31 23:17

 

〇で、話の本筋の「思い込みで迷惑なプレゼントを押し付けてくる人」の話だけれど、この増田を見て真っ先に「秋葉原のメイドがもらって困るものランキング」を思い出したのです。この中の「仏花」はかなり個人的にグッとくるものがあり、忘れられない増田として記憶しています。

秋葉原のメイドによるNGプレゼントランキング

 

〇そしてそれとセットと思われる内容で投稿された第二弾の増田。どうもこの手の本人登場系の増田を見ると以前あった「ストーカー彼女のことを書いたら彼女からトラバがあった」という増田を思い出す。どちらも元記事は削除されていたけれど、転載がトラバにあるので怖い思いをしたい人は見てみてください。この記事のリアルなところは後の記事が登場した時に元増田が消えたところですね。仕込ならかなりうまい。リアルならシャレにならない。そして元記事が消えていたので記事の発掘に非常に手間がかかりました。見つかって良かった。

解決しました

 

〇そして残念だけれど、プレゼント押しつけ系の残念なメンタル保持者は確かに存在する。その「確かに存在する」ところがこの話を創作実話のように見せている。言い方を変えればストーカーの心理に似ている。「俺が好きと言ったんだから君も好きにならなくてはいけない」という相手の意志を脳内クリアしているタイプの恋愛方法だ。この手の話になると必ず思い出すのがAAで語られる以下の物語だ。日付を見ると10年以上前に投稿された話だけれど、内容は現在でも古臭くなることがなく一種の古典の領域に達していると思う。未読の方は是非読んでもらいたい。

(新)モララーのビデオ棚

 この話の一番最後に登場する「人の愛し方もわからないクズがマトモに生きてる誰かにすがって迷惑かけてるの見ると、オマエが氏ねよって思っちゃうよな」は痛く人々の心に突き刺さる。

 

〇どうやらポイントは「人の愛し方もわからないクズ」というところらしい。しかし、人は愛し方を学校では学ばない。愛し方を知るのは自分が愛された経験からである。つまり例に出てくるような距離感のない人は「愛された経験」が常識の範囲内で圧倒的に足りないのかもしれない。では単純に愛を与えてあげればよいかというとそうでもなくて、この手の人物に不用意に愛を与えると逆効果になってしまうことが多々ある。平等に義務教育で「人との接し方」を学べばよいのだろうか? それもまた違う社会を形成しそうで怖い。現段階では交通事故にあったと思うくらいしかすることがなさそうだ。

 

〇この件について調べているときに過去に似たような投稿があったのでそちらも紹介して終わりにします。二つ目のブログ記事は「変な人に好かれる」の構造を丁寧に図で考えています。つまりずっと前からこういう話題は何度も繰り返されてきたということです。そろそろ抜本的対策を期待したい。やっぱり警察が「何かあってから動く」というのでは遅いと思うのだよ。被害者のケアはもちろんだけれど、加害者の再発防止対策もなんとかならないのだろうか。

変な人に好かれる

nlog(n): 「変な人に好かれる」を図で考える

 

ジッタリンジンは好きです。

 

「何かいる」 ~なつやすみの宿題・納涼合宿~

短編小説

「ただいまー」
 私は玄関の鍵を開けて家に入る。誰もいないとわかっていても、つい誰にともなく帰宅の挨拶をしてしまう。靴を脱いでいると、まだ玄関より先の暗い部屋の様子がおかしいことに気が付いた。


(何か、いる?)

 

 私は電気をつけると、おそるおそる家の中へ上り込んだ。何が違うと聞かれても言葉にするのは難しいが、とにかく「何か」が違う。昨日の夜や今朝家を出るときと違う、物々しい空気が家中に立ち込めている。

 

 私はそっと台所を覗きこんだ。包丁など凶器のある場所に変なものがいたのではたまらない。もちろん人影などあるわけもなく、ほっとして私は冷たい水を飲もうと流しへ近づいた。グラスを手に冷蔵庫を開けようとして、私は違和感の正体に気が付いた。

 

 冷蔵庫の下に、小さく動く2本のアンテナのようなものがある。

 

 それの全体像は見えなかったが、私の想像力でも冷蔵庫の下に何が隠れているかわかる。しかし、何かのゴミの見間違いかもしれないと思い、私は2本のアンテナをじっと見つめた。そしてそれは微かに自ら動いていた。間違いない。奴だ。
 私は足を忍ばせて玄関まで戻ると常備してある殺虫剤を持って再び冷蔵庫の前に戻ってきた。相変わらず触角は冷蔵庫の下から丸見えで、おそらく奴はこちらが気が付いたことに気付いていない。奴の気が変わる前に私は殺虫剤を冷蔵庫の下に吹き付けた。触角はびくんと跳ねて冷蔵庫の下に完全に潜りこんだ。私は構わず殺虫剤をまき続ける。しばらく経ってから冷蔵庫の下に新聞紙を丸めた棒を突っ込んで探ると、奴の亡骸が出てきた。なるべく大きめサイズのそれを見ないように新聞紙でくるんで、私はゴミ箱に捨てた。
「馬鹿め」
 どうやら玄関をくぐった瞬間に感じた違和感の正体は、こいつらしい。頭ならぬ体隠して触角隠さずというところか。もう少し触角に敏感になっていればこいつも長生きできただろうに、なんて間抜けだったのだろう。しかし、一体どこから入り込んだのだろうか。害虫対策をもっとしておいたほうがいいかもしれない。

 

 私は台所での死闘を終え、服を脱ぎ始めた。夕食は外で済ませてきたので、今日は風呂に入って録画しておいたドラマを見て寝るだけだ。さっさと汗を流して、さっぱりとしてリラックスタイムを満喫しよう。ところが、風呂場に来るとまた先ほどの違和感が頭をもたげてきた。


(やっぱり、何かいる?)


 そんなはずはない。違和感の正体だって先ほど丸めてゴミ箱に捨てたではないか。すっかり服を脱いでしまったのでシャワーを浴びないわけにもいかず、私は「何か」の正体に怯えながら風呂のドアを閉めた。
(気のせい、気のせい)
 シャワーで軽く汗を流し、シャンプーを手に乗せて泡立てているときに限って変なことを思い出してしまう。それは昨年友達とふざけて見たホラー映画だった。肝試しをして家に帰ってきた若い女性がシャワーを浴びていると、鏡に何かが映っている。慌てて目を凝らすと鏡には何も映っていない。安心した女性が蛇口をひねると血のシャワーが降り注ぐ。女性が絶叫して、場面は暗転する。それだけのシーンだった。
(何で今思い出しちゃったかな)
 髪を洗っている間は顔を下に向けているし、背中で何が起きていても不思議ではない。温かいシャワーを浴びているはずなのに、何故か冷たい水をかけられているような感覚が背中を走る。顔を上げて、人の顔があったらどうしよう。血のシャワーが降ってきたらどうしよう。急にナイフを持った男が浴槽から現れたらどうしよう。


 気を紛らすために、私は歌を口ずさむことにした。とにかくこの変な思考のループから抜けないと、怖くて怖くて仕方がない。とにかく楽しい歌がいい、何を歌えばいいだろうか。
「おかーをこーえーいこーよーくちーぶえーふきつーつー」
 私の中の「楽しい歌」のレパートリーから選ばれたのはとても楽しそうな歌だった。歌っているうちに気分も軽くなってきて、変なお化けの妄想はどこかに行ってしまった。
「ランララララあひるさん、ガアガア!」
 あひるさんになりきって体も洗い、無事に風呂場を出ることが出来た。
(ところで、この歌のタイトルは何だっけ?)
 髪を乾かしながら私はどうしても消えない疑念を抱いてしまった。
(なんだっけ、さんぽ? それは歩こうの奴だし……)
 どうしても出てこない。手入れを終えると私はスマートホンですぐに「おかをこえいこうよ」という歌詞を検索した。
「そうだ、ピクニックだ」
 身も心もすっきりしたところで、今日は眠ることにした。録画したドラマはまた明日まとめてみればいい。
「寝よう、おやすみ」
 また誰にともなくつぶやいて、布団にもぐって電気を消す。


(やっぱり何かいるのかな?)


 やはり何かを感じる。気のせい、なのだろうか。
「気のせいに決まっている、というか疲れてるだけ」
 無理矢理結論をつけて、私は眠りに落ちた。


 翌日も変わらず家を出て出勤する。昼休みに私は昨日の武勇伝を話した。
「昨日家に帰ったらさあ、何か変な感じがして」
「変なって、どんな?」
 いつも一緒にお昼を食べている同僚が尋ねる。
「なんか、イヤーな感じ。お化けかもしれないって思った」
「何ちょっと怖い話はやめてよ」
 向かいにいたお局様が嫌そうな顔をする。
「怖いって言うか、なんていうか……それで台所を覗いたんです」
「うんうん」
「そしたらなんと、冷蔵庫の下にゴキブリがいたんです!」
「ホント?」
「そう、それで慌ててゴキジェット持ってきてぶっかけて、もうびっくり」
「よく気付いたねー、普通わからなくない?」
「でも、触角が冷蔵庫の下からはみ出てて」
「うわー、キモ!」
「でも無事に退治できてよかったねー」
「まあね、でもキモイし普通にびっくりするよねー」
 するとあまり口を挟まない新卒の大人しい男の子がぼそりと呟いた。
「でもゴキジェットを玄関に置いておくのは効率が悪いと思います。僕ならあらかじめ台所にも置いておきます。台所の遭遇率が一番高いから」
「そうだよねー、今度から私もそうするわ」
 やっぱりお化けなんていないし、私の家にも何もいない。私はもう一本殺虫剤を買って帰ろうと思っていた。

 

≪了≫

 

novelcluster.hatenablog.jp

 

 多少演出はしてありますが、冷蔵庫の下のGの話は実際にあった話です。第六感を信じたくなった出来事でした。

 

 

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