さよならドルバッキー

この世の裏を知ったドルバッキーは世を儚んだ。

増田の11人はどこまで「個人の匿名」なのか

 どうにも最近モヤモヤしていることを書きます。みんなでモヤモヤしてください。

 

 「はてな匿名ダイアリー」に書き込まれた「保育園落ちた」の記事が拡散されて、何故か国会でこの記事が取り上げられて大騒ぎになっている。その中でメディアはこの正式なサービスでない場末の掲示板の呼称に苦労していたようだ。「匿名のブログ」「個人の匿名のブログ」など、「はてな匿名ダイアリー」という正式な呼称を持ち出している者は少ない。果ては「保育園落ちた」という主張を主にしているブログであるというような書き方も見受けられる。

 

【産経・FNN合同世論調査】「保育園落ちた日本死ね」 共産支持層87%共感、自民支持層34% - 産経ニュース

“「保育園落ちた日本死ね」ブログ”だんだん紹介が雑になって来たぞ。

2016/03/25 10:35 
TERUさん「保育園落ちた日本死ね」ブログに賛同 その理由は?

“このブログは、保育園に申し込んだものの落選したブロガー”増田はブロガーだったのか。

2016/03/25 10:37

 

 そもそも「はてな匿名ダイアリー」というサービスの知名度が低いという理由などもあると思うけれど、何故こんなに「はてな匿名ダイアリー」の名前を出さないのかというのも不思議な話だ。ちゃんと名前を出している記事もあるのではてなが「使わないでください」と言っているわけではないと思うけれど、この辺が不思議で仕方がない。

 

 ちなみに以下は完全なモヤモヤ邪推です。誰かアンサーなどくれたら嬉しいです。

 

「増田」という特殊な匿名空間

 この「匿名ブログ」こと「はてな匿名ダイアリー(AnonymousDiary)」は「アノニマスダイアリー」というところから「アノニ増田」「増田」と呼ばれている。詳しくは以下の「増田講座」を読んでくれ。そしてここでも以下は「増田」を使わせてもらいます*1

 

anond.hatelabo.jp

 

 さて、 この「増田」には「はてな匿名ダイアリー」という場所を指す意味と、書き込んだ本人や記事を指す場合があり、「増田が増田に増田を書いた元増田です」という謎の文も作ることが出来る。これを「保育園落ちた」の例に当てはめると「保育園に落ちたことを愚痴りたい人がはてな匿名ダイアリーに『保育園落ちた』の記事を書いた中の人です」という意味になる。ややこしいね!

 

 そういうわけで、この「増田」は独自の文化があって一般のSNSに比べればかなり特殊な空間で、ブログと言うより雰囲気でいえば2ちゃんねるのような匿名掲示板に近い。

 

愚痴

 匿名なので、基本的に愚痴が多いです。仕事がうまくいかない、彼女が出来ない、などなど。例として昨年行われていた村上春樹の期間限定企画に合わせた愚痴をどうぞ。

このはてブが衆愚! 2015年・春期

 

釣り

 増田の花と言えば釣りだ。釣りとは、架空の出来事や不自然なまでに誇張された出来事を書き込むことによってたくさんの反応を得る行為を言う。「匿名」であることでその話が本当にあったことなのか架空の出来事なのか判断が付かず、無意識だと思うけれど、「保育園落ちた」の文章の中にもこの「釣り」のテクニックが含まれている。

増田漁業組合辞職します。あと、釣りエントリ晒します。

 

うんこ漏らし

 いつの頃から、「うんこを漏らしたら増田に書け」という謎のイメージが作られた。そういうわけで増田に書いているのはうんこを漏らしている人です。

うんこを漏らした増田たち

 

一発ネタ

 あとはどうでもいいネタが多いです。例に挙げる増田は最近の一発系のヒット作です。非常にくだらないです。

にこにこぷん風に

 

個別の11人

 そして、何故か増田は総勢11人で執筆されているとまで言われている。根拠は特にない。ただ「個別の意思が異なる場所で同時多発的に発生する」という意味では『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』に登場する「個別の11人」*2にそっくりだ。

増田は11人のライターによって執筆されている。

 

スパム

 最近知恵をつけてきていますが、スパムは無視しましょう。 

 

 以上のような内容がほとんどです。他にもいろんなことが書いてありますが、基本的に取りあげたくもないような内容だったり、取り上げるとこっちにまで死ぬ呪いがかかったりと厄介なものが多いです。そんなものを好きな増田愛好家もいて、面白い内容の投稿があると「はてなブックマーク」をして回るのです。

 

 そして増田傑作選になりそうなものがちょうど上がってきているので、のぞいてみると良いかもしれません。

 はてなブックマーク - はてぶ国勢調査

 

増田を「個人のブログ」「匿名のブログ」にしてしまっていいのか

 この辺からモヤモヤがスタートするのだけれど、つまり「増田」とはそういう場所だ。本当だか嘘だかわからないことが常に書き込まれ、うんこが飛び交いここで紹介しなかったら恨みつらみや罵詈雑言、最近はスパムまみれのキッタナイ場所だ。「便所の落書き」という呼称は的外れでもなんでもない。事実だ。

 

 増田と匿名掲示板である2ちゃんねるとの違いは、その拡散性にあると思う。もしこの書き込みが2ちゃんねるにされていたら、ここまで大事にはならなかったと思うし、注目すらされなかったと思う。増田には「はてなブックマーク」というツールを介して多くの人に読んでもらう機能があるし、Twitterボタンなども一緒に設置されている。

 

 このあたりが非常に悩ましいところで、確かに「はてな匿名」ログインすれば個人のIDで書きこんだ内容が並ぶ。しかし、その発表は個人ではなく「匿名の誰かさん」でしかない。つまり、今回のように「増田の中の人」が特定個人として公的に祭り上げられるのは「匿名の誰かさん」という枠から外れる。そんな大事な主張なら本名と顔写真を出してFacebookあたりで呼びかけたほうが健全だと思うのに、「保育園落ちた」の増田はそういうことをしなかった。それが汚い愚痴であり、至極個人的な意見だと思ったからの真っ当な考えだと思うし、「保育園落ちた日本死ね」と書き込んだ増田を非難する気はさらさらない。

 

 ところが、そのような背景がわかっていない人にこの空気で成り立っている匿名の背景を伝えるのは難しいし、「本名でなければペンネームも匿名」とする界隈もあり*3、言葉の意味が変わってきている。そんな中で登場する「匿名のブログ」という言葉にモヤモヤしている。「ブログ」はもともと「ウェブログ」の略で、web上に記録を残すと言う意味のものだ。ところがこの「増田」は記録を残すという意味では私的なサービスでは成り立つけれど、普通のブログのように「記録を公開する」という意味ではまるで役に立たない。そうなるとブログの定義は何なんだと言うところになると思うんだけど、それもよくわからない。一応「個人の活動記録が公開されることに意義がある」というのが「ブログ」らしいけれど、それなら増田は「匿名」なので「ブログ」にはならないんじゃないかって思うんだけど、どうだろう?

ブログとは|blog|ウェブログ|weblog - 意味/定義 : IT用語辞典

 

 待機児童問題は深刻だと思う。だけど、この問題の広がり方や既存の公的メディアが「はてな匿名ダイアリー」という空間をどうとらえるかというのも気になるところだ。貴重な生の意見であるだろうことは間違いないけれど、それは同時に便所の落書きであるから得られた意見だ。個人的に有名になった便所の落書きを見にみんなやってきているので、何だか最近落ち着いてウンコできてない人が多いイメージがある。それどころか「この便所は素晴らしい」なんて言って美しく改装工事でもされるんじゃないかとドキドキしている。

 

 要は、「増田ってそういう場所だったかな」と言うのが本当にあって。もっとうんこぶつけ合う空間があってもいいんだけど、それだと公的にみっともないからってことになる。そうなるとゾーニング問題も絡んできて、何が問題なのかわからなくなってきたのでこうやって書きました。 一応まとめると、

 

  • はてな匿名ダイアリー」を「匿名のブログ」と呼んでいいのか
  • 「ブログ」と呼称することでそういう個人のサイトがあるのではと誤解されないか
  • 「増田」の代名詞が「保育園落ちたブログ」にならないか

 

 最近本気で三番目を心配している。そうなったらそうなったで仕方ないんだけど、どうにもモヤモヤして仕方ないね。これはもう寝るくらいしかないね。

 

 ちなみにこの文章を書いている人はいつも通り、騒動の全体として「日本死ね」の部分が根本的に受け付けないし、それに乗っかってワーワーやってるのも日々のくだらない炎上騒ぎと一緒だと思ってます。たまたま今回が政治的主張だから良いように転がっただけで、一歩間違えば「どうして解散するんですか?」騒動のような結末だって十分あり得たはずだ。そういうわけで待機児童問題が深刻であることと別に、こうやって煽動的な方法で政治的な問題提起が起こるのは怖い。こういう前例を作ると、過激な発言をしたほうが注目を集めて慎重に議論を進めるべき議論までまともに議論ができない事態になってしまう。自分の意見を通すために「sね」という言葉を使うことが有効である、という風潮になる事だけが恐ろしい恐ろしい。

 

*1:以下「増田ってそういう意味だったんですね」という類のコメント禁止

*2:攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG - Wikipedia

*3:この用法で使われている例