いろいろな文章の種類の話
今週のお題「書くこと」ということで、文章の種類を自分なりにまとめてみました。「ブログをやりたいけど何を書いていいかわからない」「いろんなことが書きたいけれどもうまく文章にできない」という方を対象に書いていきます。例によって大雑把なまとめです。
文章には種類がある
漠然と「文章」と言っても、いろんな種類の文章があって、いろんな特色があるのです。それぞれの特色を踏まえた書き方をすれば、けっこう見栄えのする文章になるものです。逆に、自分の主張とあわない文章の形式を使って書くと内容が素晴らしくてもおかしなことを言っているように読み取れたり、意味不明になってしまうものもあります。主なものを紹介しましょう。
小説
利点:心情描写に最も優れた形式である。
欠点:登場人物の心情で客観的な読みが難しくなる。
大体の人は「文章」というとこの形式を思い浮かべるでしょう。元々「novel」の日本語訳であり、定型にとらわれない文学表現と言う意味あいです。国語の授業で「登場人物の気持ちを考えなさい」という設問は、もともと小説と言うツールの特色を踏まえた問題なのですが、あまりそういうことは授業でやらないのです。なんでだろうね。ちなみに「創作=小説」だと思っている人がいますが違います。創作でもエッセイは書けますし、事実を小説にすることも可能です。ただ、客観的に主観的なことを書かないといけないので非常に書き手の技術が要求されます。
学術論文
利点:事実だけが書いてあるので誤読の余地がない。
欠点:主観的な表現が入ると一気にうさんくさくなる。
ある事象について論理的な見解や考察が述べられている文章の形式です。こちらには「事象の具体的正確な描写」が求められています。まとめとして筆者の意向などが足されることもありますが、何にせよ「主観的思い込み」を排除することが求められます。
レビュー系考察文
利点:書くこと(良い点悪い点など)が一番型にはめやすく、慣れると書きやすい。
欠点:厳しい評価を下すことと悪口がごっちゃになりやすい。
ある物事に対する感想を踏まえた上で評価を下す形式の文章です。つまり行き着くところ必ず「良し悪し」の判定をしなくてはいけないので、主観的な感想を述べつつ客観的なデータも出した上でぶれない結論を書かなくてはいけないのでレビューサイトの人はすごいなぁと思う。
エッセイ
利点:筆者に起こった出来事や心情がある程度客観的にわかりやすい。
欠点:あくまでも筆者の外の人の気持ちはわからない。
あるテーマをもとに、主観的な考察を交えつつ論を展開していく。主観的な表現で構わないけれど、読者の共感を得るためにはある程度客観的な内容も含めないといけない。欧米では論理的なものが求められるけれど、日本では日記的要素のある散文を指すこともある。
読書感想文
書評と読書感想文は違う。 小学校で出す読書感想文には「本を読んで成長したこと」が含まれていないと高得点は出せない。ゆえに「ぼくはこの本を読んで自分はまだまだだと思いました」というような自虐的文章が生まれやすい。これが日本の作文教育の悪の温床になっていると思う。
紀行文
エッセイの中でも、旅をメインにしたものはジャンルが別になる。体験記と筆者の主観がまざり、あたかも旅行を追体験しているような気分にさせる文章は非常に興味深い。
日記
その日あった出来事を綴る。面白おかしくなくても別にいい。「朝起きた夜寝た」でも立派な日記だ。特別じゃないことを特別あったように書くから面白いのであって、面白い日記が書ける人はおそらく大多数が見ていることと違うところを見ているんだろうと思う。
詩・短歌・俳句
感情をのせた言葉遊び。ただし一度はまると奥が深いし、人類が何千年もやってきたことなので舐めてかかると言葉の闇に引き込まれて帰ってこれなくなる人もいる。
ブログの記事はどの形式がいいのか
もちろん、テーマごとに形式を変えるのが望ましいです。同じ「失恋」というテーマでも、激しい喪失と憎悪を訴えたいのであれば小説を選択し、自分が振られた原因を客観的に見つめなおしたいのであればエッセイを選択するなど、まず「何を書きたいのか」を明確にすることが大事です。
最近何となく思ったのが「漠然と文章を書こう!」と思っている人は多いのですが、肝心の「何を書こう」が決まっている人が少ないんじゃないかと思った次第です。「本の紹介をしよう!」「遊びに行ったことを面白く書こう!」などテーマはあるのに、文体の選択でミスをしている人は多い。せっかく面白い本なのに主観的な感想しか書いてなくてまるで参考にならなくて、それでいて「面白い本を読んだのにアクセス数が増えない……」なんていう事態はその辺で起こっているんじゃないだろうか。
文章を書くときに大切なのは一人称というより、書く対象をしっかり見据えることだ。「自分がどう見られているか」を気にしているあまり「書く対象」が適当になっている記事が多い気がする。これも承認欲求のダダスベリ現象 なのかもしれない。恐ろしい恐ろしい。
書く対象を見据える話は昔書きました。
まとめ
文章は題材選びが命なのであるが、料理を失敗すると一気につまらないものに変化してしまう。いくらライフハック記事が流行っているからと言って「僕がひきこもり時代に後悔したたった1つの出来事」みたいな記事ではいけない。
どうやってその勘を磨くかと言うと、やっぱり「良いものも悪いものもたくさん見る」ことが特効薬だと思う。いきなり自分の心情吐露だけでブレイクしても、一発屋くらいにはなれても継続することは難しい。やっぱり良いものを作るのであれば日々勉強することが一番ですね。
おまけ
同じ出来事でも視点と文体を変えるだけでまるで印象が変わることを具体例でもって書きました。内容は完全フィクションですが感情移入しやすい題材を持ってきたので、それぞれの文体から受ける印象の違いを味わってみてください。