読んだけど、どうにも収まりが悪いので書いていくよ。なお読めばわかるけど「現実にこういうことで苦しんでいる人がいる」ことを否定するものではありません。読んでね。
なお、作中の帝大はおそらく東大であり国立大学というところで話を進めていきます。これが私立になるとまたいろいろガタガタするので……。
【書割の毒親】
やはり1番はミーカの父親。彼が何故ミーカに逆教育虐待をするのかの理由が本作から全く見えてこないのがひたすら不気味。「そんなの子供はわからない」とあるけれど、それにしても彼のストーリーが全然見えない。
そもそも、彼は娘をどうしたかったのだろう。
高卒で就職?
女子らしく短大?
地元の偏差値低い大学?
それとも惨めに浪人生活?
会社の取引先のドラ息子に献上?
はてさて夜職でガッポリ?
試験日にわざわざ妨害するような親なら、ある程度娘のレールを用意しているのではないだろうか。「俺の言うことが聞けないのか」って。そもそもA判定出てるからバレるという意味がわからない。共通テストの結果が自己採点でも出た時点でそれはわかると思うんだけど、それならそもそも出願なんか出来なくないか???
最悪のシナリオとして「母親が直前で裏切った」「学校はミーカの家の事情を知って、父親へ情報を漏らした」というのが考えられる。これはこれで悲しいのだけど、相当レアケースだと思われるのでこれをスルーされるのは物語としてあかんと思う。
以上を踏まえていろいろ考えると「前期日程の願書出願後まで父親は娘の受験を知らなかった」「そこまで娘の進路のビジョンが一切なかった」ということになる。ここが異様に不自然で、娘が学歴つけるのが嫌な親がそもそも模試や共通テスト受けさせるわけないだろうと。その前に、高校ももっとバカな高校に行かせるか高校にすら行かせないと思う。
要は、やってることがものすごくちぐはぐなのだ。おそらく地域で一番の高校に進学させておいて、模試や共通テストのときはスルーで何故か前期日程直前に大胆な行動を起こす。この辺が「書割」と呼ばれる所以だと思う。
【作品のおとしどころ】
この作品の良くない点は「テーマを詰め込みすぎて何を伝えたいのかぼやけてる」ところだと思う。ミーカの逆教育虐待がテーマなのか、りっぴよの経済的な点で進学を諦めるところなのか、それとも「勉強いっぱいやっても報われない」というところなのか、はてさて「勉強いっぱいやって青春だね!」なのか、視点がバラバラでぼやけてるところが非常によくない。
何も「このような子達がいるわけない」という話がしたいのではなく、話を組み立てる時に主人公は誰でどういう問題があってどのように解決するのか、というのは最低限提示しないといけない。例えばミーカの逆教育虐待をテーマにしたかったら、りっぴよとの馴れ合いではなくもっと父親との対話を増やすべきだし、試験の結果この家はどうなるのかまで書かなきゃフェアじゃない。最後の「なんかいい話にしたろ」感がいろいろつまみ食いした挙句に「おなかいっぱい」とぶん投げてるように感じる。
つまり、やるならしっかり問題に向き合ってほしいというか解決まで提示しなくても丁寧にやってほしいと思う。全体的に「雑」なのだ。
りっぴよも前期日程当日に出願変更なんか出来ないので、おそらく最初から県大に願書を提出してると思うんだけど……なんでそれをここまで苦楽を共にしたのにミーカと共有しないんだ?
理由をつければ「ミーカを動揺させたくない」ということなんだと思うけど、作中でその辺が語られていないのでこちらから想像するしかない。その負荷も胸糞悪さに繋がってる。
【最大の違和感】
塾に行かないと大学には受からない、というのが甚だしく謎。
公立高校だろうが、高校の教員であれば模試の添削は全員できないとおかしい。何故サブスク働かせ放題の公立高校の教員を使い倒さないのか。
コーヒー入れてるじいちゃんはコーヒー飲んでるだけなのか?
数学の指導はしてるんだよね??
進路指導は一体何をしているんだ??
帝大狙える子がいたらみんな目の色変えて指導すると思うよ??
しかも塾なし、親訳あり、遅くまで自習室。こんなん職員室の机の隣で付きっきりでどーぞどーぞと教える案件じゃないか。
とにかく公立高校(おそらく優秀な進学校)であるなら、帝大にA判定出てる生徒がいたら全力で受験させるはず。何故なら高校や塾というのは生徒の明るい未来の他に「難関校に受かった実績」というのが喉から手が出るほど欲しいから。おそらく学業優秀であるはずなので三者面談などで「記念受験だけでもさせてほしい」と保護者に願い出るはず。
あと皆が気になる奨学金の話。おそらく東工大を狙える生徒がいるなら進路指導担当はめっちゃりっぴよの保護者を口説くはずだよ。東工大が無理でも県大(おそらく駅弁大学?)なんかじゃなくてそれこそ旧帝くらいは進路に書かせるんじゃないかな。その辺がよーわからん。
【おそらく】
作者は前半の「女の子が二人で勉強してて青春だねえ」がやりたかったのではないだろうか。それを「鳥トマト風に」と言われて急遽鳥トマトっぽくしたのでこのようなちぐはぐが生まれてしまったのではと邪推している。鳥トマトにするなら最初から鳥トマトにしたほうがよいと思いました。それか鳥トマト成分はいらない。
あと前期日程受験するのに高速バスで早起きして東京に行けるような場所(関東近辺?)なら東京にこだわる必要なくね?前泊でしないの?とか野暮なこと思いました。
最後にもう一度。「こういう女の子の存在を否定している」わけじゃないです。「こういう女の子を書くなら考えたり押さえたりしなければならないところを押さえてない」という話ですし、「こんな登場人物のような人に実際会ったことがあるからこれはリアルだ」というのは「それなら最初からノンフィクションでやろう」という話です。漫画として話がまとまってないという話です。バスケ漫画だったのに途中から主人公の実家の雀荘経営の漫画になってたら嫌でしょう?おしまい。