あのにますトライバル

君の気持ちは君の中でだけ育てていけ。

魅力的なキャラクター

魅力的なキャラクターって何だろうな。

 

 

この漫画読んで思ったのが「この作者は魅力的なキャラクターをどんなものと定義してるのだろうか」ということで、自分の考える「魅力的なキャラクター」について考えていきたいなと思い、ダラダラ書いていく。


魅力的なキャラクター

漫画の軸は「面白いものを書きたくても、商業主義に歪められたキャラメイクをしなくてはいけないのは漫画家としてどうなんだろう?」みたいな感じだと思う。その中で商業主義に歪められたキャラクターの例として「努力する主人公」「お色気女の子」が出てくる。つまりこの作者は「努力やお色気はつまらない」って言いたいのかなと思う。


え、努力もお色気も普通に要素としてうまくやれば面白くならね?


もちろん「つまんねえ手垢ベタベタの展開にテンプレ素材のキャラ並べてハイどうぞ」って奴はつまらんに決まってるんだけど、魅力的なキャラクターにするために追加する要素としてはそれほど編集は間違ったことを言っている気がしない(現代のお色気要素については後述)。要は「お前のキャラ読者に共感されねえから読者が好きそうな要素足せ」ということだし、もっと突き詰めると「お前のキャラクターひとりよがりだな」だし「オナニーはひとりでやってろ」になる「いいか、AV男優になるなら巨乳じゃないとダメとか我儘言うな、いつでもどんな女でも抱けるようになれよプロだろ」みたいな話だと思う。


そこで「でも僕はやっぱりF以上じゃないとダメです!」とか言うなら「お前のプレイは誰も望んじゃいねえからひとりで巨乳専門店にでも行っとけ」ということになるだろうな。まあそこで「僕は巨乳の魅せ方なら任せてほしい、こう揉むとこういう魅力が引き出せる、巨乳を世界で一番愛してる僕のために巨乳企画をして全世界の巨乳兄弟のためにおっぱいがいっぱいキャンペーンをするのだ!」とかいう突き抜けた情熱があればそれはもう武器なんだけどね。


今適当に巨乳大好き新米AV男優というよくわからんキャラクターを作ったけど、実際ここから物語を展開するとして、AV男優ってどういう風に仕事に関わってどういう風に成長していくとかわからないのでAV業界について取材しないといけない。その中でAV業界では常識外れなことを成し遂げたいとか、人間として逸脱した何かを抱えた主人公がAV業界でのし上がるとか、逆に平凡な僕が何故かAV業界でのし上がるとか、物語として面白くなりそうな要素はたくさんある気がする。


つまり、魅力的なキャラクターっていうのは属性じゃなくてその物語を好む読者に届けたい物語の装置としてどれだけ相応しいかっていうところだと思うんだよね。少年たちが好む孫悟空とかルフィに対して、おじさんたちは島耕作ゴルゴ13が好きかもしれない。ルフィが「課長に俺はなる!」と言っても面白くないし、ゴルゴ13天下一武道会に参加してもあまり面白くはならない(それはそれで面白そうという話は置いておく)。だから「テーマは面白い、しかしキャラクターに魅力がない」というのは実はあまりなくて、キャラクターがつまらないならテーマ、つまりお話自体に問題がある可能性が高い。つまり、その、なんていうか……この漫画自体……。まあ描きたいもの描けばいいと思うけど、それが必ずしもみんなが皆読んで褒めてくれるとは限らないってことだと思う。昔カクヨムに短編を十何本か書いておいても反応なんか1ミリもなかったからね!!!でも書きたいもの書いて満足したからそれはそれでええんやで!!泣いてなんかないからね!!!


努力とお色気は商業主義?

個人的にここがめちゃくちゃ気になった。一言で言うと「テーマの掘り下げが出来てない」なんだけどそれだけだと身も蓋もないから少し書いてみる。


これ、実は因果が逆で「売れるから努力とお色気が溢れる」のではなく「努力とお色気を好む人が多いから売れる」わけだし、そもそも主人公が努力しないで物語展開するのかなり難しいし、お色気満載な絵を描きたい人も多いだろう。そういうニーズや現状を踏まえてそういうアドバイスを編集がしているならその編集もいい加減というかなんというか……もう少し具体的なアドバイスしてやれとは思う。


ひっくり返せばこの漫画の作者は「テーマはいいんだけど努力しないでエロもない漫画を書いてお金を貰いたい」ってことなんだと思う。その場合、どんなテーマがあるんだろう。努力の足りない主人公、つまり才能はあるけど怠け者な主人公を盛り立てるキャラクターが登場する物語とかかな。パッとこの系統で思い浮かぶのは「銀魂」とかかな。銀魂はこれと言ったお色気はなかったと思うけどね。「抜群の才能はあるけどいろいろ難のある主人公をサポートする読者目線のキャラクターとの組み合わせ」ならそこそこ思いつく。シャーロック・ホームズとワトスンとか、そんな話には「努力」はいらないと思うし、推理モノだから別にエロもいらない。


ちなみにお色気要素っていうけどさ、別にパンチラとか下着姿とかちょっとえっちな女の子とかいうけどさぁ……そんなん別に読者求めてないぜ。女の子脱がせれば可愛いかって言われたらそんなわけないしいつも制服着てる女の子がパジャマ姿で現れたらドキッとするし、逆にいつもだらしない格好の男の子がスポーツの試合でユニフォームになって真剣な顔してたらドキッとするし、髪をかきあげる仕草とか「今日は送っていくよ」とかの一言でいくらでも「ドキッ」を作れるし、それも一種のお色気だと思うの。露出が高ければエロいと思うなら、牧野ステテコはめちゃくちゃエロくなくちゃあかんわな。


あと「努力」の表現として過酷な労働を例に出すのもちゃうやろと思う。努力の何がカタルシスかってさあ、ストーリー的にロジカルなところじゃん?「〇〇をやってたから△△が成功した」「□□な修行をした結果☆☆な弱点のボスを倒す」みたいなことじゃん?「努力が足りない」っていうのは「お話の繋がりが不明瞭」ということなんじゃないのかなぁ。別にキャラクターが怠けているわけでもなさそうだし、何を持って編集者は「努力不足」として、そのイメージが長時間労働なんだろう。お話がつながんねえんだよ。


うーん、何が言いたいのか自分でもよくわからなくなってきたぞ。


強制的にまとめ

普通にまとめようとしたけどこの話、全然まとまる気がしない。それだけ言及したい点が多いし多角的にツッコミ始めると止まらない。


この漫画には致命的な弱点があって、「肝心の主人公の漫画がどんなものなのか」について全然言及がない。最後に編集者が「いい漫画ですね」というだけで、主人公が何を書きたかったのか読者に提示されてないんだよね。だから編集の「主人公は努力しろ」「女の子にお色気入れろ」の意図も適切なのかわからないし、「それを描くと私のテーマじゃない」も読者には伝わらない。すんごいふわっと「わたしのかきたいものをかきたいの、でもみんなみとめてくれないの!ぷんぷん!」という感じ。つまり「一本筋の通ったお話は素晴らしいよね!」というお話自体がふわっふわっとしている、という感じ。


「漫画を描きたい!」というテーマで描きたい漫画が提示されないの致命的よ。「バスケがしたいです」という三井が最後までメンバーに入らないみたいな、そんな感じ。ガリガリ君食べたら中身が綿菓子だったみたいな、たい焼き食べたら中身が空洞だったみたいな虚しさがある。せかいいちおいしいパン屋さんのパンを盗んで食べたらまずくて思わずクレームを入れてしまうパンどろぼうみたいな感じである。まずい。パンどろぼうかわいい。とりあえずおしまい。

 


余談

ついでにいうと「漫画の悪魔」という言い回しがちょっと……普通に悪魔じゃダメだったのかな……と思う。そもそも悪魔召喚するなら悪魔についてちゃんと下準備して「この世界の悪魔とはコレコレこんなやつ」みたいなのがよくわからない。この感じでやるなら「漫画の妖精」じゃない?悪魔なら代償を支払わないと。「漫画の悪魔に魂を捧げる代わりに、一生エッチな漫画を書けなくなる」とか「その代わり締切を破ると原稿を仕上げるまで全裸で生活しなければならない呪いがかかる」とか、悪魔にするならそんな感じで物語展開したら面白そうだね。その辺の作品の奥行のなさや設定の雑さも厳しい。別に雑でもいいと思うけど、このテーマで書くならそこはしっかりしようよというところをちゃんとしてないのに「テーマが良ければヨシ!」みたいなのが本当に気になるんだよね。あとタイトルも全然悪魔使ってないよねとか思ったら負けだよね。もういいです。


あと個人的にこの編集者さん「都合のいい男」感すげえと思ったですハイ。

 

nogreenplace.hateblo.jp