あのにますトライバル

君の気持ちは君の中でだけ育てていけ。

ドラえもんに「父親」はいないのか?という話と古典の話

前回の続きです。追記があるのでそちらもどうぞ。

 

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前回の件がまとまったと思ったら記事と呼ぶにはおぞましい何かが出てきたので言及していくよ。こちとら引越ししたばかりで忙しいんだから記事くらいちゃんと調べてから書いてくださいよ。そのライターの分の金おくれよ。

 

magmix.jp

 

ドラえもんホームドラマではない

まず「ドラえもんでは父親の影が薄い」という説の根拠が「多くの人がフルネームを知らないから」という残念なもの。そんなことを言ったらとなりのトトロのお父さんも名前知らない人が殆どというか作中明かされないからとなりのトトロという作品では父親が不在とか訳の分からないことになる。ちびまる子ちゃんのお姉ちゃんやおばあちゃんだって長年名前が分からなかったけどその2人が存在感薄いかと言うと全然そんなことはないだろう。「フルネームを知らない人が多いから存在感が薄い」という論拠にまずは疑問を持つべきである。

 

それにホームドラマの面を持つサザエさんちびまる子ちゃんクレヨンしんちゃんとロボットと小学生が主役の話を比べるのがおかしい。ドラえもんホームドラマじゃないんだから家族がクローズアップされないのは当たり前ではないだろうか。「何十年もアニメが続いている」というだけでこの4作品を並べるならポケットモンスター名探偵コナン忍たま乱太郎おじゃる丸なども父親不在と並べないとおかしい。前提がおかしいのだから話が変なことになる。「何故父親不在なのか」ではなく「元から父親がメインではない」というだけなのだ。編集の人とかいなかったんだろうか。

 

パパ回は減っている?

そういうところでのび太のパパが活躍する話を列挙しようかと思ったけど前回のスケベのび太で疲れたので今回は見送ることにする。個人的にパパ回と言えば「アドベン茶(てんコミ36巻)」がダントツで好き。登場する銀行強盗がアツいし、オチがめちゃくちゃキレイで好き。ただなぁ、わさドラよ。昨年の父の日スペシャルでアドベン茶やったのはよかったんだけどあのキレイなオチを何故かBBQで台無しにしたのは恨んでも恨みきれないぞ。

 

ただ昨今のドラえもんを見ていると、アドベン茶に父の日要素を無理矢理トレパンしてくる感じがあり、既存の話に現代要素を盛り込んでいる気がしないでもない。なんと言うか、サザエさんの世界に無理矢理スマホがあるみたいな感じなのだ。ついでに言うと父の日スペシャルにはそれぞれの父親が出てきて「お父さんありがとう」というカットもついていた。私はドラえもんにはそんなものも求めてないし星野源ドラえもんのうたのサビを「君に会えるよ」ではなく「君を作るよ」にしたアニメスタッフの考えることはよくわからんのだがそもそも最近の(ry

 

※以下の話の続きはこちらから読んでください。読まなきゃよかったレベルでひどいです。

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話が脱線しそうになったので「父親不在と言われがちな理由」について少し考えたのだが、「パパエピソードには昭和初期の影、特に戦争の話があるから」という仮説を立てたい。

 

まずド直球なパパエピソードとして「白百合のような女の子(てんコミ3巻)」が挙げられる。これはパパが戦時中に子供でないと成立しない。パパエピソードとは少し違うがドラえもん屈指の名作「ぞうとおじさん(てんコミ5巻)」もダイレクトに戦時中の話だ。またパパの子供の頃の話を現代で再現しようとするとなかなか難しいことになるものもある。「タイムルーム(てんコミ41巻)」や「一晩でカキの実がなった(てんコミ34巻)」などの話を昭和の終わりにしていたのかというと、やはり似つかわしくない。

 

それにパパの説教には「昔は食べるものがなかった」「子供は野山を駆け回るものだ」「男は強くなくちゃいかん」というようなTwitterの人が「昭和」と言って忌み嫌うワードが多数存在する。ちなみに今小学生の息子を持つ父親の年代は大体80~90年代生まれで平成生まれも居てもおかしくないと思われるのでこのような価値観の説教をするのは考えにくいし、令和のアニメで流すのも微妙である。そういう背景からパパエピソードが気軽に流せないという部分もあるのかもしれない。そう言えばパパと言えば禁煙が出来ないキャラでお馴染みだけど、確かにこれも令和には不適切だね……パパにはペロペロキャンディーを舐めてもらおう。

 

というわけで必然的にパパの原作エピソードが減り、不自然なオリジナルが多くなっているのではないかと思うのです。同じ観点でママや学校のひどいエピソードも減っていくと思うのです。勝手に漫画を捨てたり、頭ごなしに勉強しろと言ったり、廊下に立ってろという体罰……この辺挙げていくとキリがないのでどっかでまとめてみたいです。

 

ママの話が出たのでママエピソードで好きなのは「のび太のなが~い家出(てんコミ25巻)」です。普段虐待かというレベルでのび太を叱ってるママの母親らしい一面が見えるいい話です(誇張)。

 

 

余談であるが、のび太のパパママが出てくるてんコミの表紙は「さようならドラえもん」が収録されたこれだけだったのが味わい深い。これは「最終回だよ!全員集合!」の絵だと未だに思ってるんだけど、そうだよね?

 

古典と現代的正しさの付き合い方

で、前回話しきれなかったのだけど「当時の価値観を現代の価値観で断罪すること」について少し話していこうと思う。

 

先に言っておくと「風呂覗きくらいいいじゃんケチ」ということが言いたいのではない。繰り返すけど、「風呂覗きのび太は無罪」とか「風呂覗きドラえもん漫画は性犯罪を誘発している」とかそういうことが言いたいのでもない。そういう話をしたい人は自分のブログでやってくれ。ここでやるな。自分のブログでやれ。

 

ちょっと前の話。「かぐや姫の物語」で「女性の自立が!翁最低!」みたいに怒ってる人たくさんいたけど、お前平安時代の価値観に何言ってんだと思う。多分高畑監督は現代の女性の感覚も作品に織り込んではいると思うけど、ダイレクトに「翁最低!権力者氏ね!」みたいな反応までは想定してなかったと思いたい(後者に関しては何とも言えないけど)。少なくとも時代や場所についてはもう少し考えて発言して欲しいと思う。そこまで感情移入するような作品だったとも思うけど、平安時代の男性が「男女平等、娘も好きに生きるべきだ」とか言い始めたらそれはそれで非常に嫌だ。個人的に野山駆け回りたいかぐや姫は人間らしい描写というより高畑監督の趣味じゃんと思ってる。宮崎駿の飛行機や美少女みたいな奴。

 

この「現代の価値観で過去を裁くな」というのは、「現代の価値観を未来人にバカにされてもいいのか」という考えから毎回言ってます。今現在、正しいと言われていることが果たして100年後も正しいままなのか。戦時中大日本帝国が勝つと信じていた人を現代の人は「戦争をやるなんて馬鹿だなあ」と思うかもしれないけど、当時はそれが正しいとされていたのに後から「馬鹿だなあ」と思うのは昔の人に対して非常に失礼だと思うのです。現在、価値観のアップデートなどと言っていますが、そのインストールした価値観も必ずいつかは古くなります。その時新しい価値観をアップデートするとき、自分が信じた「正しい」価値観を捨てられるのかと思う。「ハッ、男女平等?何言ってんのそんな令和のかび臭い価値観に縛られて不自然に女性アゲしなくちゃいけないの?行き過ぎた平等思考とかマジ三葉虫なんですけどー」とか言われて、嫌にならないのかなと思う。少なくとも自分は嫌なので「昭和の価値観(笑)」みたいなのはあまり言いたくない。というか、昭和という言葉を悪口みたいに言うの止めようよ。「これだから令和の価値観は(笑)」みたいに言われる日は間違いなくやってくるのだから。

 

こう書くと「じゃあ昭和の悪い部分も認めろってことなのか」と怒られそうだけど、そういう話ではない。過去にあったことは過去にあったこととして向き合うのだけど、その時代を生きた人を全否定したり馬鹿にしてはいけないというだけだ。その時代はそうだった、そういうのは嫌だから今は止めようでいいのに「あいつら馬鹿だったよな悪人だよな」というのはやってはいけないと思う。ちなみにそれをギャグでやっているのが前述した「ぞうとおじさん」である。詳細は割愛するので是非色んな人に読んでもらいたい。ドラえもんには人生の全てが詰まっているのである。

 

まとめ

まとめると、ドラえもんは連載開始は50年以上前、連載が終わったのも20年以上前なのでその作品の価値観を現代の価値観で「有害である」と一蹴するのは非常に如何なものかと思う。ただ、現代の感覚に合わない描写が多いのも事実なのでその辺を踏まえて読まないといけないと思う。とは言え、玉子に影響されて不必要にガミガミ叱ったりする母親はいないと思うし、のび太に影響されて風呂を覗く男児も滅多にいないと思う。表現としておおらかではあっただろうけど、それらは作中で「良くないこと」とは明示されている。だから子供と一緒に見る時は「これはよくないね」と言いながら見ることになると思う。ドラえもんに限らず、そういうのはサザエさんにもちびまる子ちゃんにもクレヨンしんちゃんにもあると思う。少なくとも「古い時代の価値観だから有害で子供に害を間違いなく与える」というのは違うと思うのです。

 

繰り返すけど、そういう表現が嫌いな人がいるのもわかる。でもそれを盾にして過去の表現を殴るのは過去の表現に対して失礼だと思う。そういうのは自分のブログでやった方がいいと思うし、「私は嫌だ!」というのは自由だけど人のブログで騒がないで自分のブログでやるべきだと思う。

 

個人的にドラえもんという作品については「(勉強になるし感動するので)子供に見せるべき」というふんわりした感触で語ると「ドラえもん」という毒*1にやられると思う。ドラえもんも古典なので令和の子どもたちには解説が必要な話もたくさんある。それをアニメでやっているのだけど、うん、まぁ……。

 

ちなみに前回言い忘れたことでどうでもいいけど、なんとこち亀で両津たちが銭湯で女湯を覗こうとしている話(106巻収録)がある。警察官が何やってんだと思うけど、この話は覗きより中川のはっちゃけが面白い回だし明確に「犯罪ですから」と言及しているので、まあヨシ!(By現場猫)という感じだろうか。全く関係ない話で締めよう、おしまい。

 

*1:具体的に書こうと思ったけど、どくという字はどうやって書くのかという気持ちになったので今回はやめにすることにした。