あのにますトライバル

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ぽきたwの文法的考察、ねぇ

 ネットスラングを文法的に考察する、という方向は悪くないと思うんだけどネタに走っていて、そしてそれを真に受けている人が多いのが怖いと言うことです。以下例の怪文書をこのブログなりに考察しるでつ。

 

ぽきたw 魔剤ンゴ!?
ありえん良さみが深いw
二郎からのセイクで優勝せえへん?
そり!そりすぎてソリになったw
や、漏れのモタクと化したことのNASA
そりでわ、無限に練りをしまつ
ぽやしみ〜😇

 

ぽきた/ぽやしみ

 それぞれ「起きた」「おやすみ」のことだと思われる。「お」が「ぽ」に変わることは「お前ら→おまいら→ぽまいら」と変化した太古のネットスラングからの流れもあり、「O」の隣の「P」を誤って触った誤変換から生じたものと思われる。他に「ぽ」と言えば2ちゃんでは「だめぽ」など終助詞として扱われていた時期もあり、「ぽ」が含まれているだけでネットスラングらしくなるという一面もある。また、「ぬるぽ」は「NullPointerException*1」が元ネタであり「寝るよの誤変換」という説は誤りである。

 

 魔剤ンゴ!?

 おそらく「マジ」が「魔剤」に変化したものと思われる。「ンゴ」は「ドミンゴ・グスマン選手*2」から生まれた蔑称が発祥であるとされるが、現在では意味が広まりすぎて強意の終助詞のような使われ方をしている*3。また「魔剤」には「モンスターエナジードリンク」の意味もある。

 

ありえん良さみが深い

 形容詞を名詞にする「さ」と「み」の違いについてはいろいろ言われてきているので簡単に「さは客観、みは主観」でいいかなとも思う。で、何故その「さ」と「み」を同時に使っているのかというのが今回のポイント。多分そこに特に意味はなくて、ただ並べたほうが何だか意味が強くなる気がしたからというのが真相なのではないかと思っている。炎系のわざと氷系のわざと覚えさせたら強くなると思ったみたいな、そんな感じ。ネットスラング考察に品詞分解はいらない。この言葉を作った背景に何があるのかを感じるのがコツだ。

 

 ちなみに古文で「形容詞語幹+み」は原因・理由を表し「~ので」と訳すことが多い。つまり最近よく見る「つらみ」は「辛いので」になり、これを見かけると北の国から的な余韻を持っているなあと思うことにしています。

 

二郎からのセイクで優勝せえへん?

 二郎はラーメンが大盛りの店。セイクは「SAKE」を無理矢理英語風に読んだものか。「優勝」は「優勝したくらいテンションがあがる」のことか。この怪文書のベースがおそらくなんJ語ということもあり、「優勝」は喜ばしい事なのだろう。つまり「二郎を食べてから酒を飲んで盛り上がらないか」ということらしい。

 

そり!そりすぎてソリになったw

 「そり」は「それ」の変化と思われる。この場合「それ」ただの指示語ではなく「それな*4」の「それ」と思われる。「そりすぎてソリになったw」は「それなすぎてソレナになったw」と置き換えることも可能で、ここでカタカナにすることでより強い賛同を示したかったと言うことなのだろう。たぶん古い言葉で一番近いのは「禿同」などではないだろうか。

 

や、漏れのモタクと化したことのNASA

 「や、」には2種類あり、「いや」の「い」が抜け落ちたものと「やあ」の「あ」が抜け落ちたものがある。ここでは前者と考えるのがいいと思われる。「漏れ」「モタク」は共に「お」が「も」に変化したもの。「漏れ」が「俺も俺も」の誤変換から生まれた*5ことは有名だけれど、「モタク」が気になる。ネットスラングにおいて「も」と言えば「モテない」の略であって「喪男」「喪女」などと2ちゃんで専用板があるくらいなのだが、「モタク」で検索するとどうやら「モテるオタク」の略で使っている場合もあるようだ。「オタク」についての蔑称は「ヲタ」であったが、まさか「モテない」「オタク」が組み合わさって「モてるオタク」になるとは時代も変化したのだなあ。ちなみに「モタ男」で検索するととんでもねえグロ画像を見ることになるのでオススメしない。

 

モタク モテるオタクになる恋愛ガイド

モタク モテるオタクになる恋愛ガイド

 

 

 ちなみに2016年6月現在「モタク」で検索すると、一番上にスマホからタクシーを呼べるアプリが出てくる。

 

モタク

 

 つまり、この「漏れのモタクと化したことのNASA✋」には「俺がモテないオタクになったということの無さ=俺はモテる」なのか「俺がモテるオタクになったということの無さ=俺はモテない」なのかによって全く違う文意になる。単に「オタク」の変化である可能性も高いけれど、「俺がオタクになったことがない」という謎の文脈になってしまう。元の文からかなり意味不明なのだけれど、文脈判断によってどちらにもとれる不思議な言葉が「モタク」なのだと思った。「優勝」しているので「俺はモテる」というようにとってもいいし、「二郎からの酒」では「モテないことに喜びを感じる」ととることもできるだろう。

 

 そりでわ、無限に練りをしまつ

 「そりでわ」は「それでは」の変化。「練りをする」はおそらく次に「ぽやしみ=おやすみ」と言っているので「寝る」だろう。それでは「無限に」とは一体なんなのか? 仮説として「このまま眠り続けて死ぬ*6」という自動ツイートサービスからの流れを汲んでいるものを挙げておく。

 

 

 

 つまり、無理矢理意訳するとこんな感じになる。

 

起きた。本当!?

マジあり得ないんだけどヤバイスゴイ。

二郎からの酒の流れみたいなテンションみたいにならね?

それな、それすぎてソレになるわ。

いやあ、俺がモタクになったことの無さ。

それでは、寝るわ。

おやすみ~。

 

 それにしても文頭が「起きた」なのに文末が「寝るわ」になるのは一体何なんだろう。考えられるのは夜中に来たメッセージに一言返信してまた寝たのだろうかということ。よく状況が分からない中でひとつだけ言えるのは、この文章が何かを伝えたいのではなく、何か非常に同意ができる事柄に対しての熱情的な肯定の返答だったということ。それ以外考えられない。よくわからない。そもそもほぼ出自不明というところが恐ろしい。一体何なんだコレ。初出らしいツイートはあるけれど、何故ここまで広まっているのかはわからない。謎だ。

 

 「激おこぷんぷん丸」のときもそうだったけど、こういうネットスラングをまともに分解してどうのこうのするときはネットスラング全体からの派生も調べないといけないので非常に大変。毎年ネット流行語大賞にケータイ流行語大賞をチェックしたりまとめサイトの扇情的なタイトルを流し見したりしないとこういうの掴むの難しいと思うのです、はい。