あのにますトライバル

君の気持ちは君の中でだけ育てていけ。

ルール変更の理由

 短編小説の運営方法を変更しました。簡単に言うと、「参加したらもれなく感想書くよ」を撤回したということです。その理由を書くと長くなるのでこちらに。かなりシビアですので覚悟して読んでください。

 

novelcluster.hatenablog.jp

 

 もともとこの企画を始めた動機は「文章を書くってなんだっけ」というところからです。2014年夏のインターネットはやれブログ飯だワナビだ効率のいい文章術だブログは毎日書くと良いとか、そんな話題がごろごろしていました。

 

 それでも見えない「文章力」という謎の敵に怯えている人はたくさんいました。まるで「文章力」というものが全て記事の良し悪しを支配しているようなものです。もちろんそんなことはなく、ブログの記事で大事なのは発想力や構成力です。それでもコメントに「文章が上手」という謎の文言が並ぶのです。その文章は上手でも下手でもなく、ただ端的に状況を書いてあるだけです。

 

 つまり「文章」を読んでいる人が「文章」というものの実体がつかめなくなっていったのです。ただのチラシの情報なのか細やかな心理描写なのか、奇抜な発想のコピーなのかただの日記なのか。そういう区別もつかないで「上手」「上手」と褒め合う文化が進むと「文章」は「文章」の形を保てないんじゃないかという危惧でした。

 

 あと最近まだ見かけるのが「思考がダダモレになっている人」です。「見せてもいい自分」と「他人に見せてはいけない自分」がごっちゃになって、「私が思ったんだから言ってもいいでしょ!」と何でも言うことを毒舌だと思い込んでいる感じがとても危なくて、「この人哲学的ゾンビじゃないかなぁ」と思ったことも一度ではない。

 

 文章だって絵と同じで、書く人の個性がどうしてもにじみ出る。それを感じさせないことが「文章力の上達」だと信じている人がいるならば、絵画と写真を同列のものとして扱っているようなものだ。写真は写真で、絵画は絵画としての良さがある。そこで絵画の良さを再確認してもらいたくて始めたのが「短編小説の集い」だ。はてな限定にしたのは単に余所のサービスも入れると言及とかその辺が面倒くさかったからです。

 

 他と差別化を図るために考えたのが「必ずコメント貰えるシステム」で、自分があったらいいだろうなぁと思うものを体現したまでです。ただ、このシステムの行き詰まりを感じ始めました。

 

 もともと小説って言うのはジャンルも得意分野も何事も違って当たり前なのです。それに対してなるべく公平に、穏便なコメントを付け続けるのはかなり大変です。特に初回などは「ねぇこれ小説?小説なの?」というものもたくさんありました。ひとつひとつ作者の意図を読み取り、表したかったことを最大限解釈して、「あなたはこれが書きたかったのね」という承認をする。これがコメントを付ける作業です。更に自分は改善点を書いてほしいと思っているので思いついたものは丁寧に書くようにしています。

 

 ただ、ここ数回の開催を応募状況や作品の内容からいろいろ考えたのですが「果たしてそれを必要としている人が応募しているだろうか?」と。

 

 創作をする「私」に酔ってるだけ?

 相互コメントで慰め合ってない?

 自分の書きたいことを本当に書いている?

 何かの作品の真似をオリジナルだと思ってない?

 

 そんな疑いの目を向け続けないと、作品が腐っていくのがこの界隈の怖いところです。大して面白くもない記事に対して理由もなく「友達だから面白い」というコメントが並ぶことと「必ずコメントがもらえる」ということの違いは何だろうかと思っていたのです。

 

 小説を書く作業と言うのは常に疑いの連続です。「これでいいのかな」「本当にこれでいいのかな」「いや、これはダメだ」「あれをああして」という感じで己を最大限に疑って登場人物に「真実味」を与えていきます。コメントをつけていて思うのが「もっと疑ってほしい」ということです。「あれ、自分これでいいのかな」「こんなもんが自分の力なのかな」「もっと出来るんじゃないかな」こんな感じでプラスに疑うことも大事です。もっと疑ってほしいのです。

 

 そういうわけで、「全部コメントはやめよう」ということに至った次第です。もっと自身の作品を作者さん自身が自信をもって疑ってほしいのです。私に見せてコメント貰っておしまい、では何だかって思うので。でも欲しい人もいるだろうし、そういう人はガッツを見せればOKだろうなということでこのルール変更になったわけです。

 

 あと、この際ですからひとつ言うと、できれば短編小説なので全てを作品の中で見せてほしいのです。コメントを読んで「実はこういう裏設定があったから主催者のコメントは的外れ」みたいな反応があるとリアルでアイコンみたいな顔になります。そういうのを防ぐためにこのルール導入にもなっています。

 

 このルール導入に関して、うちの看板をひとつ降ろすことになるので迷いがなかったわけではないですが、そんな情勢の中だったり正直主催者の体力的にも続けていくのが難しい、というわけで決めました。

 

 それもこれも、この企画に参加してくださるような書き手の皆さんならきっとそれでも書くのを止めないだろうという確信があるからです。ちょいとやってみて反応がなかったらおしまい、だったらそれまでの人です。好きで書いて好きで公開するのが好きな人に来てもらいたい。そういう意図もあります。多少のルール変更はありますが、皆さんの作品は毎月読ませてもらいたいと思っています。それでは次回も楽しみにしています。