互助会批判の流れがよくわかる「クマの学校」
ただ単に「互助会」の単語だけみても何が悪いのかよくわかりにくいので、かわいいクマさんたちに問題点を明らかにしてもらいました。以下、よくあるフィクションです。
『クマの学校』
ここは楽しいクマの学校です。クマの学校では毎週絵のコンクールが行われ、人気投票で一番のクマにはご褒美にはちみつを貰えます。好きな絵には毎回一回ずつ、何人にでも票を入れられることになっています。クマの子供たちはみんなで競って絵を描いていました。
クマ男くんはクマ子ちゃんの絵が好きでした。クマ子ちゃんの絵はデザインも色遣いも大変上手なのです。しかも題材も他の人と違って工夫があります。クマ男くんは自分の絵も頑張りながら、クマ子ちゃんの絵を見ることを楽しみにしていました。
ところが、クマ子ちゃんの絵が一番になることはありませんでした。いつも一番になるのはクマ太郎くんの絵です。クマ太郎くんの絵はクマ子ちゃんに比べてあまり上手ではないのですが、先生の似顔絵を面白く描いたり楽しかった行事の絵を描くので票が入れやすいのです。クマ太郎くんも頑張って絵を描いていると思うと、クマ男くんは少し悔しい思いをしながらもたまにクマ太郎くんに票をいれたりしていました。
ある日、クマ太郎くんの絵がいつも一番で面白くないクマっ太、クマ也、クマ美が集まって相談を始めました。
「クマ太郎ばっかりずるいよな」
「私たちだってはちみつをもらう権利があるわ」
「そうだ、こういうのはどうだろう」
クマっ太はある作戦を立てました。クマ也、クマ美もその作戦に賛成し、早速次のコンクールに向けて活動を開始しました。
次のコンクールでは、なんとクマっ太の絵が一番でした。お世辞にもクマ子ちゃんやクマ太郎くんより上手な絵ではありません。クマっ太の作戦はこうでした。
「クマっ太の仲間になった人みんなで平等に一票ずつ入れる。その中で一番になった人が仲間になった人とご褒美を分け合う。仲間が増えれば増えるほど有利になるし、少しずつでも毎回ご褒美をもらえたほうがお得だ」
クマっ太の作戦に参加する仲間はどんどん増えていきました。やがてコンクールの一番は毎回クマっ太の作戦に参加した仲間の誰かになっていきました。票を入れるだけでご褒美のはちみつを貰えるので、クマっ太の仲間たちは上手に絵を描くことをやめて、一番の絵もだんだん手抜きになっていきました。
最初に「おかしい」と声をあげたのはクマ太郎でした。
「先生、クマっ太くんたちは上手に絵を描かないで票を入れ合うことでご褒美をもらっています。あまり票が入っていませんが、クマ子ちゃんの絵のほうがどう見ても上手です。クマっ太くんたちの絵は上手ではありません」
すると、クマっ太は言い返しました。
「クマ太郎くんは僕の絵を下手だと言いましたが、僕だって一生懸命描いています。それを下手というのは僕に対する侮辱です」
クマっ太の仲間たちも言い返します。
「そうだ、クマっ太がかわいそうだろ」
「クマっ太に謝れ」
「オマエの絵だって言うほどうまくないだろ」
クマ太郎はいつの間にか「クマっ太に悪口を言った悪いクマ」になり、「悪口はダメですよ」と先生に叱られてしまいました。
クマ太郎は全く納得ができません。次のコンクールではクマ美が一番でした。クマ美の絵ははっきり言って上手ではありませんが、クマ太郎と同じような題材を描いて人気がありました。クマ太郎はまた先生に「クマ美ちゃんは僕の真似をして仲間うちの票で一番になった」と文句を言いました。
今度はクマ美とクマ也が言い返してきました。
「私の絵が真似だって証拠を見せなさい、たまたま被っただけよ」
「クマ美ちゃんの言うとおりだ!!」
先生は、またクマ太郎くんを叱りました。クマ太郎くんは非常に面白くありません。放課後にこっそりクマっ太たちの後をつけて、クマ美が仲間たちにはちみつを分けているところをこっそりケータイで撮影し、証拠として先生に見せました。先生はこれを不正の証拠とし、クマっ太たちの作品が一番にならないようにしました。次の回からはそれまで通りクマっ太の仲間にならなかった絵も評価されるようになりました。
これに怒ったのはクマっ太たちです。クマ也がこう反論しました。
「仲間内で入れ合うのはダメだったら、クマ男はどうなんだ。いつもクマ子の絵に入れているからクマ男だってダメじゃないか」
急に巻き込まれたクマ男は必死で訴えました。
「ぼ、僕はクマ子ちゃんの絵が好きなんだ! クマ子ちゃんが一番になってクマ子ちゃんが喜んでくれたら嬉しいんだ、それだけだよ!」
「僕だってクマ美の絵が一番になったら嬉しい! 何が違うんだよ!」
「クマ美の絵はクマ太郎の真似っこだろ!? そんな奴の何がいいんだよ!!」
ついクマ男が言った言葉に、クマっ太の仲間たちは怒ってクマ男を攻撃しました。
「そんなのひどい、クマ美差別だわ」
「クマ子のことが好きなんだ、キモーイ」
「ご褒美ももらったことがない実力のクマ男には言われたくない」
「もうクマ男くんとは遊ばない」
ついにクマ男はクマっ太一味にいじめられるようになってしまいました。クマ太郎はクマ男に同情し、クマ子はクマ男の想いを知って三人で一緒に絵を描くようになりました。お互いに絵を見せ合い、意見を言い合うことで三人の絵はどんどん上手になりました。クマっ太たちはそれを「仲間うちでつるんでズルい」と言い続けます。
この状況を見かねた先生はご褒美をはちみつでなく、HBの鉛筆にしてしまいました。すると次の回からクマっ太たちは絵を描かなくなりました。コンクールにご褒美目当てのやる気のない絵がなくなり、コンクールのレベルが全体的にあがったことは言うまでもないことです。
おしまい。
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