いつもの「論点が散らばってめちゃくちゃな奴」なので問題点をまとめておきます。
観測された事象と問題点
両親学級の妊婦体験で7kgの重りを付けた男性が「こんなの楽勝」と言って腹筋を始めた。
問題点1 妊婦体験の意図を男性が理解しない
妊婦体験は妊娠中の女性が負担する重さを擬似的に体験することで妊娠中に不便を被る女性に労りの気持ちを持とうというものだったはず。前提は「これは大変ですよ」というはずなのに「楽勝」という感想を持つのは前提が理解されていない。
問題点2 男性に妊婦体験の意図を伝えようとしていない
男性は妊娠をすることができないのでいつまでも当事者になることはできない。体験とはいえ全てのことを伝えることはできない。言葉で言われてもわからないし、重りを持ったからと言って容易に理解出来るものでもない。両親学級自体、女性がマウントをとる場所になっている。
改善策、妥協点など
・各家庭で事前によく話しておく
普段からコミュニケーションをよく取っていれば妊娠中の不便や妊婦体験の意義なんかは理解できそうなものだが「仕事が忙しい」「そもそも理解する気がない」「相手の気持ちに立って考えるとは何か」など論外な方が場を凍りつかせるのを何とかしないといけないので難しい。
・男性目線の父親学級を開催する
女子だけ集めて性教育するみたいに、男性だけ集めてプレパパ*1教室を開くのはどうだろう。男性オンリーなので女性からのマウントもないし、先輩パパが伝授する男性視点の子育て術の講習とかすごく面白そうだけどな。課題はまず人が集まらないだろうなあというところと、先輩パパの選出がすごく難しいってところ。育児関連の人間ってほとんど女性だから、そこに男性が職員として参入していくのはすごくいいと思う。
・妊婦体験の内容を変える
確かに重りを付けるだけだとイマイチピンと来ない。せめてコルセットでギュウギュウお腹を締め上げてから重りをぶら下げてもいいと思う。その状態で階段の昇り降りとか靴下を履くとか足の爪を切るとか皿洗いとかやって欲しい。
・例外も許容する余裕を持つ
何かを教える際には想定外の返答に対してどうするかを常に考えておく必要がある。カチンと来る前にこの男性には「あらあら力持ちね、その調子で腹筋を講習が終わるまで続けられるかな」くらいの声掛けがあってもいいと思う。そこで失言に気づけばまだマシだと思う。たまに「そんなに出来るわけないじゃないですか、バカなんですか」って真顔で言ってくるのもあると思う。そこから先は経験で乗り切るしかない。何かを教えるのは大変だ。
・例え話が通じない人もいることを理解しておく
上記に補足をすると、絶望的に例え話が理解できない人というのは存在していて、彼らのために通じる結論というのは常々用意しておかなければならない。「お友達に嫌なことをされたらどう思う?」では通じない。「自分がされて嫌なことをしてはいけません」と言い換えても「僕は嫌じゃないからやってもいい」になるので「〇〇してはいけません」と各個撃破しなくてはいけない。つまり妊婦体験では「お腹に重りをつけました、重いですね」ではなく「この重りをつけてずっと生活しますので労りましょう」とはっきり言わないと通じない。
ついでにはっきり言ったとしても「労れと言われてもどう行動していいかわからない」ってなる可能性は高い。「つわり=吐く」だと思い込んでひどい眠りづわりの妻に「吐かないから軽いつわりだね」って言っちゃうとか。
・コミュニケーションのコストを考える
シームレス説教増田の言いたいこともわかるが、だからと言って常に例外にも目を配って例外対応をし続けるのはとても大変だ。そこだけコミュニケーションのコストが膨大になってしまう。一体一の対話なら対応もできそうだけれど、一斉授業の場での対応は非常に難しい。
三本の矢の話で行くなら、「折れました」と言われても「一本と三本はどちらが折れにくかったか、結果ではなく簡単か難しいかで判断しよう」と誘導することも出来るけど、毎回それが出来るかと言えば相当難しい。シームレス説教には想定外の返答にパニックになっている可能性もある。
・深い溝は諦める
溝をコミュニケーションで埋めようとするから大変なんだ、溝は溝として溝との共存の道を探るしかない。無理に埋める必要はないんじゃないだろうか。あなたはあなたのままでいい。だけど、等身大のあなたは無意識に誰かを傷つける恐れがあるけどあなたには関係の無い出来事だし勝手に傷つく誰かが悪いのね、というところ。勝手に傷つくのも罪なのか。そんなわけないけどね。
個人の見解
この騒動の発端のツイートは「たまに信じられないアホがいるなあ」くらいのもので、エヌワンで男はみんなアホというのも何だかなあという感じです。いや、発端ツイは相当アホだと思うのね。「俺手放しで自転車乗れるぜー」って両手のない人の前で言っちゃうみたいなデリカシーの無さを感じる。だけどそのレベルのアホはたまにいるよね、ってところだと思う。世の中のアホなことにいちいち目くじらを立てても疲れるだけなので、特にネットではたまには変なもの見ちゃったなあくらいの気持ちで過ごすのも大事だと思う。
そもそも両親学級で学ぶのは母親の大変さではなく、赤ちゃんのお世話の仕方のはず。沐浴指導や抱っこの仕方、病気になったときの対処法や育児に関する公共機関の案内などがメインであり、「母親になる苦労」は前提の大前提なのである。妊婦体験はそのおまけのイベントで、それが主ではないことは強調しておきたい。
あとたまに「妊婦は自己責任だから電車で席を譲らない」とか見るけど、そう言ってる時点で「情けは人のためならず」の裏返しだなあと思うのです。できれば情けはかけて行きたいですね。おわり。
*1:最近では第1子が生まれる前の状態をプレパパプレママと言うらしい。