あのにますトライバル

君の気持ちは君の中でだけ育てていけ。

新入社員研修のたのしい思い出

 どうにもいろいろと進まないので、気分転換に昔のことなどを書いてみる。もちろん多少の色づけや改変があります。そのまますべて書いたらヤバイ。

 

 ブラック研修の話なんだけど、昔「餃子の王将の研修がヤバイ」って話で盛り上がっていた頃、「あーこれやったことあるわ」ってニュースで見て思ってたのね。その頃はここまでブラック研修について盛り上がっていなかったのでわからなかったけど、半分くらい「洗脳」な研修を受けて、実際「洗脳」されかけました。その経験がこういうブログを書いている原動力にもなっているんだけどね。

 

 都内のホテルで入社式を終えたら、新入社員百数十名はすぐに2週間の研修と言うことでバスで4時間くらいのヤマの中に連れていかれました。場所はシーズンオフの観光地のホテル。つまり、缶詰にされて逃げられないようにされたのです。到着当日はこれからのスケジュールと資料をもらって、すぐに解散。事前に渡された資料には「研修中は洗濯機が使用できないので下着は手洗いをして部屋に干すか、あらかじめ2週間ぶん持ってきてください」とあった。今思えばこの文言からヤバい。

 

 次の日は午前6時に全体朝礼。それから「軍隊かよ」というレベルで列をそろえさせられ、朝の体操。これが研修終了まで続く。それから午前中は座学ということで会社の歴史や運営の仕組みなどの学習。「社会人として基礎的な学力」ということで小学生レベルの漢字や計算のプリントもやりました。大卒と高卒が一緒に「新入社員」として研修を受けているのでこういうこともあります。ちなみに下の方のレベルだと、そもそも「割り算」が何なのか理解していませんでした。

 

 サービス業なので、午後は挨拶や基本動作の練習。これが非常にしんどくて、例えるなら「フルメタルジャケットの最初のハートマン軍曹のシーン」が延々と続く感じです。「サーイエッサー!」の代わりに「いらっしゃいませ!」と言い続けたり、「ありがとうございました!」とお辞儀し続けたり。出来ないと「笑顔が足りない!こうやってみろ!」って怖い声で怒鳴りながらめっちゃいい笑顔をしたトレーナーがやってくる。それで萎縮して出来ない人は本当に出来ない。「こいつの基本動作が出来るまで連帯責任だ!」とチームごとに動作を繰り返しやらされ続ける。

 

 基本的にチームで行動するので、微笑みデブが存在するとチーム全体に影響が出る。そして微笑みデブを庇う役が必要になるのだが、それを「リーダーとして当然のナントカ」で誰かを任命してそいつに全部責任をかぶせる。ハートマン軍曹はジョーカーを見込んで微笑みデブの付き添いをやらせていたけれど、この場合単純に「お世話係」になれば貧乏くじを引くだけだ。お世話係りの株があがって給料でも上がればいいんだろうけど、そんなことは一切ない。ただでさえ自分のことで精いっぱいな研修なのに、誰かの世話をしなければならない。負担が倍以上になるわけです。

 

 この辺が厄介なところで、この場合でいう「微笑みデブ」はただの気弱なお人よしではなく「おおよそ育ちに何かトラブルがあられた方」だっていうことです。集団行動が出来ない、人がたくさんいるとストレスになるからどうのこうの、怒鳴られてストレスがたまる、見下されている感じがしてイヤだ、食事に嫌いなものがあるから食べたくない、などなど。最終的に「微笑みデブ」は研修を行うことが出来ず、部屋から出てこなくなりましたが、「微笑みデブ」を置いていこうとするものならトレーナーは「仲間を見捨てるなんてとんでもない、俺たちはチームだろ」という謎の絆ワークで縛ろうとする。研修に来たはずなのに、どうして他人の面倒を見ているんだろうとそこで社会に出てから最初の理不尽を味わいました。

 

 基本動作の訓練は過酷で、研修を受けたほとんどの新入社員が全身筋肉痛になって声を枯らすのです。「そのくらい酷使して一人前」ということだそうです。まぁ、「微笑みデブ」さえいなければ「そういうのもアリだよなぁ」という感じは今でもあるけどね。研修が過酷であることが悪いんじゃない。過酷であることを利用して精神的に縛りをかけてくるのがよくない。

 

 研修の最後は、今までの研修の成果と言うことで学力検査と基本動作のテストがありました。基本研修を真面目にやっていれば何とでもなるものです。そして「この研修で学んだこと」を大声で発表することになっていました。あとは「餃子の王将」の研修のようなものです。

 

「この研修を通して、自分はワガママで周りのことが見えていませんでした。だけど、仲間と支え合うことで甘い自分に気が付くことが出来ました。これからは仲間のために、自分に厳しくいきまぁす!!!」

 

※動画はイメージです。この会社とは関係ありませんが他人事とは思えない。


【餃子の王将・新人研修】お前がナンバーワンだ

 

 大体こんな感じ。これで社畜の完成です。「こんな世界もあるもんだ」とわかったことが収穫と言えば収穫です。いろいろあって配属先でまた洗脳まがいのことをされたのですが、それが解けるまで半年くらいかかりました。それから「このままではヤバイ」と思って逃げ出したのがまた別の話です。

 

 研修は辛かったですが、やっぱり一番辛かったのは「研修についてこれない人のお世話」でした。トレーナーからは「仲間を助けるのは当然」になるし、チームメンバーは「こっちに余計な仕事を回すな」になるし、当のお世話される人は「情けなんかかけやがってこの野郎」と何だか誰からも顧みられない悲しいポジション。そんなわけで、そういう人がいたら助けたいなぁとその会社を辞めた後はずっと思っていろいろ行動しています。おわり。