さよならドルバッキー

この世の裏を知ったドルバッキーは世を儚んだ。

今月の「短歌の目」反省 9月

 ちょっと早いですが反省を挙げておきます。今回は反省と言うより解説メイン。正解はないけれど正解に近づくことは出来るので。例によって卯野さんよろしくおねがいします。

 

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tankanome.hateblo.jp

 

1.一錠 「ありがとう」(これでいいのよ最後ね)と落ち着くための水なし一錠  

 「一錠」という言葉を聞いて即座に連想した動詞が「飲み込む」で、薬や水よりも「言葉」を飲み込むイメージが強かったためこんな歌が出来ましたが何だかよくわからないものになってしまいました。短歌ってとっかかりが難しいので、このように表現技法にこだわると何だかわからないものになるんだなぁということがよくわかる歌です。

 

2.おい あなたの手足に唇耳の裏爪の先まで全部おいしい

「おい」のシンプルフレーズに引きずられて最後までうまくできなかった歌です。どうしても「おい、小池!」しか頭に浮かばず、結局「おい」を含む言葉にしようといろいろ考えた結果勢いだけの歌になってしまいました。ちなみに8番目の歌の後に出来ているのでこういうしょーもないものになっています。

 

3.ウーパールーパー 屋根の上 ベッドの下に壁の裏 都会に住んでるウーパールーパー

 ウーパールーパーって一瞬流行って廃れた生き物で、そいつは消費された恨みを都会の裏で募らせていて「いつか人間どもに目にモノ言わせてやる」って意気込んでいるんじゃないかって思うのですよ。そんな恨みがそこかしこに溢れている。そんな谷山浩子的な世界です。

 

4.マッチ シュッと擦る すぐ燃え尽きる また点ける 焦げたマッチと写真の束と

 これもどうしても寺山修司しか出てこなかったので、視点を変えて「燃やす」にシフトした結果またどうしようもない勢いの歌になりました。最近はデジタルデータ化してしまって別れた恋人の写真をマッチで燃やすという発想がないかもしれないのでちょっとしたノスタルジックも込められています。

 

 5.葉 はらはらと後から後からこぼれてく 今年の夏の最後のひと葉

 「後から後から」とたくさんありそうだいうのに「最後のひと葉」というズレがしたかっただけの歌です。この「葉」は何なのかと言えば、それは「言葉」のことで、1番目の歌とほんのりリンクしていると思っていただけるとありがたいです。

 

 6.月 「お団子はどうしてこんなにまあるいの?」「お月さんがね、見ているからだよ」

 恒例の会話短歌なのですが、ちょいと凡庸になってしまいました。別にお団子が丸いからだけじゃなくて、お月さんは何でも見ていると思うのです。試合に負けて悔しかったこととか、赤ちゃんが生まれて幸せだったこととか、こっそり恋人のLINEのやりとりを覗いてしまったこととか、そんなことを全部見ています。

 

7.転 こめかみにペン先突き刺す学徒らに転向迫る獄卒も逃ぐ

 連日の安保法案反対デモ(?)を見て、主張したいことがあるならすればいいと思うのですがその主張の中身が何とも言えない感じのやりきれなさが辛いです。自分が何をやっているかわからない人たちを転向させることもできないし、そもそも彼らは「転向」という言葉を知っているのかというのがひとつです。

 

8.舌  カカカカと口内舌でかきまわす 「now loading」の表示消すまで

 セックスの前のディープキスって前哨戦というかゲームでいうと「now loading」の場面だよなぁという最大級に下品な発想から生まれた歌です。当初は「びちゃびちゃと」だったのですが、あまりにも下品なのでプレステのロードの時の音になりました。最近のゲームも進んでいるので「now loading」で長時間待たされることもなくなっていると思います。

 

9.飽き あの高い空の果てまで連れてって 飽きたら紅葉のように落として

 これは「秋」と「飽き」を掛けろってことなんだろうという無言の圧力を感じて詠まれたものです。とりあえず「秋」なので高い青空、そして落ち葉。落ち葉は空の青に対応して真っ赤な紅葉。そこまで考えて「飽き」を入れて適当に組み合わせたら思いのほかかっこいいので採用したらやっぱりかっこいい。特に想いとか背景とかあんまりなくてこういうセッティングでいろいろ魅せるような歌が好みです。

 

10.【枕詞】うつせみの うつせみの憂し世の手綱をほどきけむ あだなる人の情けも知らず

 毎回枕詞は少し昔の気持ちになって詠みます。現代語訳するならば「儚くて憂鬱な男女の仲を繋ぎとめる手綱をほどいてしまっていたのでしょうか。浮気なあの人の気持ちも知らないで」というところです。それから詠んでからしばらく経って気が付きました。「憂し世」ではなく「憂き世」ですね。ああ恥ずかしい。

 

【まとめ】

 今回は全体的に詠み手の感情が強く入らない、つまり思い入れがない歌が多いです。多分情景をパズルにしてどこまできれいに魅せるかを主題に置いたからなのでしょう。今まで短歌を300くらい詠んできたみたいだけど、どれもこれも架空の事象なので本当のところの意味を追求されると難しい。自分の感情より着飾った感情に服を着せるほうが大好きで、それが大っぴらにできるからこういう文芸が大好きなんだと思う。正直な気持ちをありのままに書いたところで「だから何?」くらいのものしか出来ない。そこをどう魅せるのかというのが大事なのかなぁと思います。最近は架空の人物といろいろおしゃべりを楽しむようにして作品を作っています。難しいなぁ。

 

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