読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

さよならドルバッキー

この世の裏を知ったドルバッキーは世を儚んだ。

肝試し ~納涼フェスティバル参考作品~

短編小説

 あれは俺が大学2年の時のことだった。当時仲の良かったA太とB男と俺はキモメンのオタク仲間でつるんでいて、その夏も花火大会に行くリア充シネとか言いながらA太の家でだらだらしていた。その日も特にすることもなくて夜までDVDを観たりスマブラとかテキトーなことをだらだらやって適当に帰ろうとしていたんだけど、A太がとんでもないことを言いだした。

 

「〇〇市の廃病院、出るらしいよ」

 

 いい時間だし、今から肝試しに行こうと言う。適当に酒が入っていた俺とB男は酔っていたから、酒が一滴も飲めないA太の運転する車でその病院まで行ってしまった。B男はデジカメを持っていて、「これで幽霊を撮ってやる!」とか言っていた。

 

 今思えば酔っぱらいたちが夜中にワイワイ騒いでいるのは非常に迷惑だったと思う。とにかく俺たちは気持ちばっかりでっかくなって廃病院の中に入っていった。何かあったら心霊動画に応募できるんじゃね? とB男はカメラを動画モードにして構えていた。

 

A太「うっわwww落書きだらけじゃんよwwww」

俺「いかもに出ます―って雰囲気だよなぁwwww」

B男「マジでボロボロのソファとか受けるwww」

 

 俺は本当はかなりビビっていたけれど、A太とB男がノリノリだったから「肝試しに来てビビんない俺カッコイイ」を頑張ってやっていた。後から聞いたらA太もそうだったらしく、素直に「帰ろう」と言っておけばよかったと思っている。

 

俺「これ崩れてくるんじゃね?」

A太「ボロイけどそりゃねーよ」

B男「霊安室いこうぜ霊安室

 

 そんな感じであちこちの壁を蹴ったり卑猥な落書きとか「タスケテ」とかいう落書きを見て笑ったりしているうちに、奥の方までやってきてしまった。ナースステーションのようで、呼び出しブザーのような基盤や書類が散乱していた。俺が呼び出しブザーのスイッチを押しまくったり、その場にあった薬品の瓶とか積み上げてみたりして、それ以上のものはないことを確認して、戦利品としてカルテっぽい書類を一枚拾って廃病院から出た。

 

A太「特に何もなかったなー」

俺「意外と普通、っていうか」

B男「もっとビビるかと思ったけどな」

 

 最後にそれぞれの感想をカメラに向かって話して撮影を終えた。俺たちはA太の家に戻ってきてPCにデジカメをつないで動画を再生した。懐中電灯の光だけではっきり見えないし映像はブレブレで気持ち悪いが、俺たちの声ははっきり入っていた。

 

A太「うっわwww落書きだらけじゃんよwwww」

俺「いかもに出ます―って雰囲気だよなぁwwww」

B男「マジでボロボロのソファとか受けるwww」

??「お前ら何しに来たんだよwwwwww」

 

 俺たちは顔を見合わせた。画面には映ってないけれど、明らかに俺たちではない声が混ざっている。

 

俺「これ崩れてくるんじゃね?」

A太「ボロイけどそりゃねーよ」

??「だよなー、意外と丈夫だぜここは」

B男「霊安室いこうぜ霊安室

 

 道中の会話にさりげなく「もう一人」の誰かが参加している。

 

A太「特に何もなかったなー」

俺「意外と普通、っていうか」

B男「もっとビビるかと思ったけどな」

??「そうか? 怖いのはここからだぜwwww」

 

 急にそこで画面が切れた。その途端にB男のケータイが激しくなり出した。相手は非通知。B男は涙目になってケータイの電源を切ったけれど、何故かコールが鳴りやまない。焦ったA太がケータイを真っ二つに破壊することで何とかコールは止まった。それからおろおろするB男をなだめながら一晩俺たちは一緒にいた。「お祓いに行こう」とか「カルテを返してこよう」とかいろいろ話し合って、夜が明けてすぐにカルテを元あった場所に置いてきた。そのくらいしか俺たちにできることはなかった。

 

 その後、俺とA太は何事もなく無事に過ごしてきた。でも、B男だけは肝試しに行ってからおかしくなってしまった。それまでのオタク趣味をほとんどやめて、髪を金色に染めたり日サロに通ったりしてすっかり別人になってしまった。普通に女の子にも声をかけて、あっさり彼女まで作りやがった。なるべく肝試しの話はしないようにを気を遣っていた俺たちとも次第に疎遠になり、大学を卒業してからすぐに結婚してしまった。一応俺とA太も結婚式に呼ばれたが、急にリア充になってしまったB男が信じられなかった。

 

 俺とA太はリア充になったB男を恨むというより、その時は友達が幸せになったことに驚いて、肝試しに行ってよかったのかもなーと話した。

 

A太「そういえばあのときごたごたしていて、B男のデジカメがまだ家にあるんだよ」

俺「今更返してもなぁ、気味悪いだけだよな、つーか何で捨てなかったんだよw」

 

 せっかくだからとあの時の映像をもう一回見て、供養してもらおうということになって俺はA太の家に寄った。気持ち悪さを覚悟して映像を再生したが、不思議なことにあの気味悪い声は流れてこなかった。その代わり、とんでもない音声が聞こえてきた。

 

A太「うっわwww落書きだらけじゃんよwwww」

俺「いかもに出ます―って雰囲気だよなぁwwww」

B男「お前ら何しに来たんだよwwwwww」

 

 それははっきりB男の声だけど、中身はあの気味悪い声のものだった。

 

俺「これ崩れてくるんじゃね?」

A太「ボロイけどそりゃねーよ」

B男「だよなー、意外と丈夫だぜここは」

 

 そういえばあのときB男は「霊安室行こう」と騒いでいたはずなのに、その会話はどこにもなかった。俺はB男のケータイが鳴った時以上の恐怖を感じた。一体B男はどこに行ったんだ?

 

A太「特に何もなかったなー」

俺「意外と普通、っていうか」

B男「え、めっちゃ怖いじゃん! 今まで何を見てきたの?」

 

 確かに声はB男のものだし、画面に映った不鮮明な顔もB男のものだった。速攻でA太はデジカメごとそれを捨てた。それ以来俺とA太はB男に会っていない。たまに「B男」から「たまには遊ぼう」などと連絡が来るけれど、それが何なのか俺たちにはよくわからない。A太は未だに肝試しに誘ったことを後悔しているし、俺もふざけすぎたことをB男に謝りたいと思う。だけど多分、今さら何をやっても取り返しがつかないのだと思う。B男、本当に悪かった。

 

≪了≫

 

novelcluster.hatenablog.jp

 

 夕べ恐怖の神様が降りてきたのでもう一作品あげておきます。締め切りは20日までなのでじゃんじゃん応募してくださいな。

 

novelcluster.hatenablog.jp

 

広告を非表示にする