恒例の大反省会です。卯野さんお疲れ様です。よろしくお願いします。
1.手帳
ベタベタと付録のシールで汚れてく手帳の黒さは僕に負けない
手帳って使っているうちに黒くなっていくじゃないですか。かばんの中に入れてたらかばんのゴミとか吸着してるのか何なのか知らないけど、必ず黒い何かが付く。この「黒さ」は日焼けの黒さと、あとそういった積み重ねという意味での黒さなのかもしれない。
2.花火
ドラゴンを怖がり隠れる姫君を助ける装備は線香花火
ドラゴンは吹き上げる置いた花火。 こういうのを子供はキャーキャー言いながら「俺怖くないもんねー!」とか言って近づいて大人に怒られる感じです。派手な花火が終わったらみんなで仲良く線香花火。そんな夏の夜。
3.虫
「背中にさ、カミキリ虫が飛んできてとってあげただけだからな!」
この前久しぶりにカミキリ虫を見たのですが、結構でっかいんですよね。これはどういう状況で言っているのか自分でもよくわからないのですが、好きな女の子に触る口実で「虫をとってあげた」「ゴミがついていた」とか言ってベタベタ触ったりするんですよ。それで「虫をとってあげた」だと感謝されてヒーロー感覚も味わえます。そんな小さな顕示欲が垣間見えたらいいんじゃないかと思います。
4.白
透明が白になるのが嬉しくて雪を降らせろ ガリガリガリガリ
下の句がいい加減。「オノマトペにしたら斬新っぽくない?」みたいな狙ったいやらしさがあります。自分が選ぶならこういうの好きじゃないです。もっと頑張ってひねりましょう。
5.アイス
「オレンジと緑だったらオレンジか?」「アイスの味はおんなじなんだよ」
恒例の会話短歌です。この前凍らせたチューペットを分け合う小学生の集団に出くわしました。「俺メロン!」「俺ぶどう!」みたいな。こういう駄菓子を色だけで分け合いたがるのが小学生の生態ですが、こういうアイスって色だけで基本的に味はみんな変わりません。同じ現象として「給食のふりかけの柄を気にする」っていうのがありました。うちの小学校では何故か忍たま乱太郎のキャラクター入りのりたまふりかけが配布されていて、「ヘムヘムがいい」「山田先生はいらない」とかそういう大人からすればどうでもいいことで盛り上がっていました。
6.プール
さっちんの水着をプールに投げ入れた まだ終わらないあの夏の日
好きな女の子の気を引きたくていじわるしちゃうことは男子あるあるですね。ふざけて女の子のプールバックをプールに投げ入れちゃった。女の子は猛烈に抗議して、泣き出した。冗談のつもりだったのに。その後は謝ったのかどうかよく覚えていない。ただ、女の子が泣きだしたのがものすごく怖かったのと、やたら暑かったということだけ覚えている。遥か昔の、終わらない夏の思い出。
と、ここまで書いてきて捉え方によってはちょっと「ひと夏の経験」みたいな捉え方も可能と気が付きました。短歌はすごいなぁ。
7.すず
ばあちゃんにもらったすずがダサいから引き出しにしまう もうそれっきり
夏休みはばあちゃんちに預けられる絶好の期間です。普段の家とは違うけど、まったく余所の家でもないから好きにくつろげる。でもやっぱり家じゃない。そんな絶妙な異空間で食べるお菓子もそうめんも何故かおいしいのです。でも、ばあちゃんとのジェネレーションギャップは埋まりません。どこそこに旅行に行ってきて、是非ともらったキーホルダーや鈴の観光地めいたダサさ。表面では「ありがとう」と言うけれど、ごめんばあちゃん、俺つけらんないわって家に帰ってきて引き出しにしまう。そんなキーホルダーが見つかるのは、ばあちゃんともう会えなくなってからだったりするのです。
8.アンタレス
アンタレス 燃え尽きるなら蠍火の中で永劫焦がれていたい
少年と言えば『銀河鉄道の夜』ですね。挿入話の「蠍火」の話を聞いて、ジョバンニが「僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸いのためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」って言っていたことそのままですね。
9. 雷
風よ吹け 嵐轟け 雷よ、この俺様を壊してみせろよ
急な夕立でものすごい雷になると、教室の女子はキャーと耳を覆い、男子は何故か絶好調でウェーイとはしゃいだものです。雷の日ってなんかテンションあがりませんか? あれって自分より圧倒的に強いモノを前にした孫悟空みたいに「オラワクワクしてきたぞ」みたいな感じが近いのかなあと思いました。ひとつ間違えるとリア王みたいな感じになっちゃいますけどね。
10.ぬばたまの
ぬばたまの 黒髪つやめく織姫のその糸の下まで夜にさらして
何故これが少年なのか? きれいなおねえさんは好きですかということです。「糸の下」とは、つまり織物、服の下です。いやん男子のエッチ! ということなのですがイマイチエロスがないのであんまり気に入ってないです。
【まとめ】
全体的に「なつやすみ」感を出したかったのですが、数首自分で納得のいく出来でないものがあるのが残念です。来月は時間に余裕を持って読んでいきたいです。ちなみに自分の短歌は90%全くの創作です。そんな世界だったらいいのにな、をモットーにしています。来月もよろしくお願いいたします。