あのにますトライバル

君の気持ちは君の中でだけ育てていけ。

5月の「短歌の目」感想集

 先月お休みしてしまったみなさんの短歌の感想です。選出基準は「ぱっと心に残ったもの」です。字面と語呂と、あとなんか思ったことがある歌ということです。この辺完全に感覚です。それでは行きます。

 

ryo71724.hatenablog.com

4. 水 雨降りは 長靴ジャブジャブ 傘ブンブン レインコートは 水玉模様

 「ジャブジャブ」「ブンブン」のオノマトペがかわいらしい。更に「レインコート」とカタカナの組み合わせがまたかわいらしい。

 

hint.hateblo.jp

7. 発情 発情期一部始終を見てゐたり線香花火の起承転結 

 生命の神秘の生まれ落ちて朽ちるまでを線香花火と「起承転結」で見立てているところが素敵。一部始終を見ていた超人的な存在のほのめかしもいい。

 

hayashinaoko.hatenablog.com

8. こい 気がつけばもう三度目のこいのぼり空をも越えて泳げ彼方へ

 「気がつけば」にさりげない深い愛情を感じました。「初めて」ではないところに一層「泳げ彼方へ」と空間の広がりが見られると思います。

 

tuchinoco.hatenablog.com

6. かめ よくかめと言われて育った少女です 消化に悪いものも食べます

 「消化に悪いもの」が人生の理不尽であるとすれば、この少女が「よくかめ」と言われていたところの闇が見え隠れするなぁと思いました。

 

ryokuchai.hatenablog.com

7. 発情 寂しさや 寒さを理由に寄り添って 発情してた 季節の終わり

 凍えそうな季節は発情するのにうってつけの季節なんですよね。暑くなったらなったで別の意味で発情する次回作がありそうです。

 

hirinzu.hatenablog.com

7. 発情 南米の鳥のように美しく発情できたらいいのにダーウィン

 「南米の鳥」が美しい。実際ジャングルに住む鳥は謎の求愛ダンスとか謎の贈り物とかするのが多いですね。人間もあのくらい清々しく求愛しやすい生き物だったらいいのにとたまに思います。

 

tenpurusan.hatenadiary.jp

9.茜さす

茜さす
紫宛色付く頃に見た
メロンと桃を揺らした彼女

 「茜さす」で紫を導いたと思ったら結構青臭くエロティックな歌で面白かったです。そういえば紫という色には高貴なイメージも妖艶なイメージもありますね。

 

usaurara.hatenablog.com

5. 海 内海に浮かべています沈むまで羽根のような軽い言葉を

 羽根と言えば誠実の証として天秤にかけられたりなど、重要な意味を持つことが多いです。軽い言葉が沈むまでの時間が一番重いですね。

 

kazagurumax.hatenablog.com

6. かめ 背に乗せたぞうが動きませんように 古代インドのかめの沈黙

 古代インドの世界の仕組みって誰が考えたのかよくわからないくらい独特ですよね。更にかめの下には蛇がいるのでかめは大変です。

 

lfk.hatenablog.com

8. こい 締め切りのギリギリ間近にぶちまけたこいつの処理は君に任せる 

 なんだか一番激情と言うかシンプルな感情の動きを感じました。おそらく「短歌の目」のことなのですけれど、全てにおいて適用できそうな内容も面白いです。

 

baumkuchen.hatenablog.jp

4. 水  大切な言葉を書くなら水性のインクで。 滲んで読めなくなるから。

 読めなくなるなら滲まないほうがいいのでは? と思ってしまった自分が浅はかでした。読めなくなるから「大切な言葉」なんだってことですね。この気持ちは複雑です。

 

yoritomo2.hatenablog.jp

4. 水 水の音 好きだからこそ 増やしたの 気づけば部屋に 水槽三つ

 「水槽三つ」から空間の広がりが感じられる歌だと思いました。また、そこに音を感じさせることで情景がはっきり浮かんでくるようでシンプルな美しさがあると思いました。

 

takano.hateblo.jp

8. こい たい・ひらめ・りゅうぐうのつかいだけでなくこいもいるのか おかしな国だ

 浦島太郎で連作と言うことでしたが鯉のいる竜宮と言うのが無理矢理でもあり、そこにおかしみを感じました。普通に考えればタイやヒラメと一緒にリュウグウノツカイが一緒にいるのも十分おかしいんですけどね。

 

sampo.hatenablog.com

10. 虹 あの虹のむらさきの弧の四五センチ外して罰の当たらぬものか

 情景を想起させる上の句とエモーショナルな下の句がマッチして幻想的な雰囲気を出しています。虹の外側ではなく内側をはずすというのも読者の視点をずらしていて印象的です。

 

aoitori.hatenablog.jp

10.虹 君は見た? 人がつらさに耐えるとき 目をよぎる雨 揮発する虹

「揮発する虹」がキラーフレーズですね。虹はいつか消え行くもの、雨も通り過ぎるもの。そんな思いが「つらさに耐える」にかかっていると思いました。

 

yama-aki1025.hatenablog.com

2. 窓 目が覚めてまどろむきみの顔を見て朝がゆくまで窓は開けない

 「君が先に眠るまでもったいないから起きている」の逆バージョンですね。「朝の時間」を切り取ったような情景が美しいです。

 

matoyomi.hatenablog.com

3. 並ぶ ピンチ時に代打で呼ばれる人々がプラットフォームにおとなしく並ぶ 

 なんとなく「フォーム」と「ホームベース」がひっかかっているようで、頼もしい人々がしゅんと電車を待つ列に並んでいるのもクスっとさせるユーモアがあると思いました。

 

zeromoon0.hatenablog.jp

10. 虹 虹色の水たまりを踏みつける 錆びの匂いが僕らのふるさと

 自選ですが選ぶならこれかなぁと思ったのです。

 

amemori.hateblo.jp

7. 発情 お父さん発情してん ポツリ言う …マキちゃん それは蒸発ちゃうん?

 このコミカルさがおかしいのですが、翻るとけっこう深刻な話です。生々しい感じがこのままでなくても、実体験を元にしているような気もしました。

 

xacoux.hateblo.jp

2. 窓 びりびりと窓も震えた声の音の主に恋した震えたんだ

 「びりびり」で始まって「震える」にかかるのと「恋」に「びりびり」しびれるがかかっていて奥深い歌です。恋に落ちる瞬間の「びりっ」とした感覚はいくつになっても衝撃的ですね。

 

sociologicls.hatenablog.jp

3. 並ぶ 朝早く二駅分も並ぶのは 音とハートと友に会う為

 「二駅分」って結構長いなぁと思ったら距離じゃなくて時間の可能性もありますね。田舎の電車の二駅分は二十分弱あったりするので。そうすると少し短い。この解釈できそうで出来ない感じが心地いい。

 

pero-pero.hatenablog.com

10. 虹 雨上がりに掛かるか判らぬ虹よりも 止みかけの雲から覗く青空よ

 キレイに情景が想像できるさっぱりしたいい歌だと思いました。お題が虹で七色を想像させるのではなく青空を想起させるのは美しいです。

 

bambi-eco1020.hatenablog.com

5. 海 海水を舐めちゃだめだと言われたが これは私の涙の味だ

 涙は舐めちゃダメなんですね。過去を振り返って味わっていてはダメ、前を向いていかないとという気持ちとそんな過去でも私の一部、大事にしたいという気持ちが伝わってきていいです。

 

konohanablog.hateblo.jp

7. 発情 春風が僕の発情からかってふわりと揺らすあの子のスカート 

「ふわり」が最高ですね。「ひらり」でも「ゆらり」でもないんですよ。「ふわり」だから春風のあったかい感じとナマあったかい僕の気持ちがリンクできるんですよね。ふわり。

 

mah-sokosoko.hatenablog.jp

5. 海 昼休み 堤防にかけて海眺め 未来はここにあるものかはと

「かは」ですから反語ですね。「未来はここにあるのだろうか、いやない」ってことですね。海から太陽は昇ってきて、でもそれは未来ではなく「一日の繰り返し」なのではないかとたまに思う時があります。

 

kimaya.hatenablog.com

10. 虹 ねじ曲がる虹を探して出かけたの? もう何年も行方不明だ。

 難解で有名な『重力の虹』というタイトルを思い浮かべました。難解だと言うことしか知識がないのですが、「ねじ曲がる虹」とは何で捻じ曲げられているのか、それとも捻じ曲げたのは自分自身じゃなかったのかとかいろいろ想起できて楽しいです。

 

popoon.hatenablog.com

1. うぐいす 一羽二羽 三羽に四羽 五羽六羽 あれよあれよと うぐいす増えた

 賑やかで楽しい歌です。「どんどん何かが増えていく」というのは絵本のようで、目白押しならぬうぐいす押しですね。

 

hakoniwa-no09.hatenablog.com

2. 窓 窓越しに良く眺めてたその山の ひとつ向こうが次に住む町

 単なる引っ越しというより、「窓越し」というところから「隔離された空間=学校からの旅立ち」という解釈も出来るかなぁなどと思いました。実話とのことなので、単なる引っ越しでしたらすみません。

 

karahutochisimakoukanjouyaku.hatenablog.com

8. こい 「こいひる」と書く集落に 釣り人がいて 山並み続いて

 だから何? と思ってしまえばそれで終わりなのですが、「いや、こいひるって集落があってさ」「ふーん」「そこに釣り人がいたんだよ」「で?」「山並みがどーん!と」「で、オチは?」「え、すげぇじゃんこいひる!」みたいな謎の説得力があるなぁと思いました。

 

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8. こい 「こいよ」って言ってあいつはぼくのこといないみたいにきみをさらった

「ぼくのこといないみたいに」って言うのがミソですね。きみはぼくが好きだったのか、それともぼくは最初からきみに横恋慕していたのか、それとも最初からぼくは「みたいに」じゃなくて本当に存在しなかったのではないか。不思議な歌です。

 

 

  以上、完全にひとこと&私見でした。また次回お会いしましょう。