基本短歌は読みっぱなしが多いのですが、たまには振り返ることも大事。
1.入
「お帰りはこちら」と指さす夕焼けの入る地平を越えられたかな
ファーストインプレッションが「入口」からつながる「出口」の物語にしようというもので、イメージが「出口」って書いてある矢印からこんなところにまで行きつきました。子供のころは夕方になると「家に帰る」ってことが絶対で夜まで出歩くっていう発想がなかったと思うんです。そんな自意識が芽生えたころのお話です。
2.粉
カタクリの気持ちを考えジャガイモは春になると片栗粉になる
片栗粉って昔はカタクリという花の根っこから作っていたんですけど、今はジャガイモのでんぷんを使用しています。それだけの豆知識です。風情があまりありません。
3.新学期
ゆこゆこと鳴る子供らの背に咲くは満開の花 いざ新学期
「ゆこゆこ」は童謡『あめふり』の「♪かけましょかばんをかあさんの あとからゆこゆこ鐘が鳴る」からとりました。気が付けば「行こう行こう」にかかってますね。なんか素敵な感じだ。イメージとしては童謡『赤い帽子白い帽子』の世界ですね。意外と童謡大好きです。
4.フール
「とびっきりフールな感じでお願いね」「ばっかじゃねーのイッツクレイジー」
今回一番するっと出てきたお気に入りの歌ですが、後から考えれば「イッツクレイジー」はせっかく横書きなんだから「It's crazy!」ってやってしまってもよかったなぁと思うのです。頭悪い系アクション洋画ばかり見ているとそんな気分になってきます。
5.摘
「苦いから嫌いなのよ」と蕗の薹摘み続けている春の花嫁
嫌いなのよと言いつつ摘み続けるのは誰のためなのかっていうだけです。嫌よ嫌よも好きのうちと読むか、それとも観念の末の作業なのか、個人的には前者なのですが後者に見えないこともない。怖い。
6.異
ぼっかりと穴が空くような青空に吸い込まれたら異次元空間
「ぼっかり」だけが人生です。「ぽっかり」ではないんです。「ぽっかり」ってなんかのどかでホンワカした感じするじゃないですか。「ぼっかり」にするだけでホンワカ具合は少し残したままなんだか不安に出来るじゃないですか。そんな言葉の異次元空間へようこそいらっしゃいました。
7.花祭り
花祭り 会ったことないかあさんの匂いはきっと湯気の向こうに
湯気を立てているのはもちろん甘茶です。花祭りって本格的にやったことないんですが何となく郷愁を感じるのです。
8.あらたまの
あらたまの咲き乱るるや春霞 雲を天より引き裂き出づる
枕詞が来たので正統派な感じで決めてみました。「さくらさくら」の世界のイメージです。春霞が天から降りてきたようだ、という感じです。古歌はバシっと詠めるとカッコイイ感じですが平凡だと気取ってる感じになって難しいです。
9.届け
「星空に咲いた涙を届けます」「そのままお空へ返しておあげ」
まるで先行する情景も何もなく自然に出てきた歌です。「届け」と来ているので命令形にしたほうが決まるかなぁと思ったのですが「君に届け」というフレーズが頭から離れないために一度切り離した結果がこれです。
10.ひとつ
「花びらを誰にも見つからないように」「ひとつ隠して」「見られてはダメ」
こういう畳み掛ける系は谷山浩子の柔らかい脅迫めいた感じから来ていますかね。『気づかれてはいけない』とか、そんな感じです。この人が何をしているのとかそういうのは特に考えていませんが、多分恋占いをしていたのでしょう。
反省として風景を重点的にした結果、今回はガチエモ系がなくふわっとした重みのないものになってしまいました。風景系とずしんとくる系を適度に混ぜて詠んでいきたいです。
あと主催者の卯野さんお疲れ様です。毎回30作以上のとりまとめは本当に大変だと思います。へいさっさー!
あと皆さんの感想記事は多分作らないで今回から引用スターでお参りしようと思います。詠み手のみなさん、どうもおつかれさまでした。