あのにますトライバル

君の気持ちは君の中でだけ育てていけ。

3月の「短歌の目」感想集

 あったかくなってきて暑さ寒さも彼岸までと申します通り気候もだんだん穏やかになってきたと思ったら爆弾低気圧とかやってきて日本はどうなってしまうんでしょうという感じです皆さんご機嫌いかがですか。今月も一首選んでひとこと感想を書いていこうと思います。皆さんの作品が広まることを願って。

 

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【運営お疲れ様です】


3月の題詠短歌10首および投稿作品ご紹介です - はてな題詠「短歌の目」

 

【ひとこと】

1:はてな題詠「短歌の目」 3月の巻 - 無要の葉

7.線 「僕たちの境界線がなくなった」「もうじき新たな自治区ができるわ」

 自分でも反省書いたけど、改めて考えると古事記冒頭だよなぁ。

 

2:はてな題詠「短歌の目」3月 - Letter from Kyoto

1 雛 「雛壇に座る芸人たちに告ぐ、今宵も俺を楽しませろよ」

 素直に考えれば「楽いことをしてください」なんですが、観客が尊大な態度をとることが当たり前になっている逆転現象を改めて突き付けていますね。「楽しませろよ」の透明でどす黒い表現がいいですね。

 

3:はてな題詠「短歌の目」3 月 - この国では犬がコードを書いています

10 信号 届く日が来るとも来ないとも知れず送り続ける手旗信号

 この一方通行でこの後を想像できそうでできない感じがいい余韻だと思います。個人的に『コクリコ坂から』のメルが毎日特定の誰にともわからず旗をあげていた光景が思い出されました。

 

4:はてな題詠「短歌の目」いざ、3月 - 本日の手紙 大学生の今日の出来事

1. 雛 雛鳥を可愛らしいと思いたい 我に餌をと喚くごときを

 なんだろう、底知れないどす黒さを感じる。普通に見ると「雛ってよく見るとグロいじゃん、そういうのを『かわいー』って言える人になりたい」って感じなんだろうけど、庇護されることへの嫉妬と取るとなかなか味があるなぁと思いました。

 

5:はてな題詠「短歌の目」3月 - 何かのヒント

7.線 点線は点か線かで紛糾し難読系の子らのジャスティス

 「難読系の子ら」という言い回しがおもしろい。それは「点」なのか「線」なのか、どっちでもいいと言われても当の「点線」にとっては正しく呼んでもらわなければ大問題なわけで、いわゆる「キラキラネーム」のことを揶揄しているのかなぁと思いました。

 

6:ingress短歌 その2 - マトリョーシカ的日常

10.信号 「信号が赤で良かった」 違和感はなく立ち止まる スキャナー開く 

 ingress短歌ということでゲームではあるけれど外の風景を感覚的に切り取った歌が多いと思いました。もともと歌は現代の写真のように感動した風景を表すために詠まれたものも多いので、この一瞬の感情の記録としてとても上手だと思いました。

 

7:短歌の目 第1回:3月 - さらさら録

4.ひとり言 振り向いた背中に言い訳舌で書く これひとり言、ひとり言だから

 「振り向いた背中」が妙。口の中で独り言をもごもご言っているというのが一般的な見方なんだろうけど、どうしても舌で背中を舐めているように見えるので一体「ひとり言」とは何だったのだろうと悶々する感じの歌だと思いました。もんもん。

 

8:はてな題詠「短歌の目」3月完全版 - のほほん気紛れ詩歌い

1.雛 花嫁の父になるため 雛セット
    3日の夜には 意地でもしまう

 娘の幸せを第一に考える素晴らしいお父さんだと思いました。普通は「娘はずっと俺のモノ!」ってなりそうなものなんですけどね。「雛セット」は「雛飾り」などにすると和の感じがより強くなると思いました。

 

9:はてな題詠「短歌の目」 3月 - 漢前女子と言われ続けたい。

4.ひとり言 予想外 返事がきたよ ひとり言 独りじゃないって こういうことか

 これはまさしくネットの発言全てを象徴しているなぁと思いました。独り言のようでみんな見ているし聞いている。だから返事もしてしまう。独り言に責任が発生しちゃう怖い世界だけど、その分気分が重たい時に受け止めてくれる器がどこかにあるものですよね。

 

10:年度末に羊とバクが苺を喰ってひとり言 - 3月の題詠短歌 - このはなブログ

6.羊 「大丈夫、ほんとに何もしないから。」ひつじくんはそう言いました。

 もう「ひつじくん」のインパクトが大きい。わざと平仮名で書いてあるあたりがニクい。この時点では「ひつじくん」 だったのでしょう。それともずっと「ひつじくん」だったのかもしれない。いずれにせよ、上記の台詞は非常に罪作りですね。

 

11:短歌詠ませてください(短歌の目 第1回) - たまには文章を書かせてください

9.年度末 西暦5000年度末のこと言って すべての鬼を笑い殺める

 西暦5000年にも「年度」の概念があるかどうかわかりませんが、この「西暦5000年」のインパクトが大きい。特に思想的なことがあるわけでもないし言葉遊びをしているわけでもないのに、「ありそうだけど見えないもの」を表現する場として短歌はいいなぁと思うのです。

 

12:はてな題詠「短歌の目」3月 - 狭筵

7.線 円と線 貨幣法律 自動車道 便利なものは 皆殺風景

 「線」からこのテーマに持ってきたことがまず面白い。円はお金、線は線引き、つまり決まりごとのことですね。世の中無駄なもののほうが趣があったり、心ひきつけられるものがあるのはなんでなんでしょうね。それとも合理主義者が殺風景を好きなだけなんですかね。

 

13:短歌の目第1回 「3月は讃えよこんなにも生きる我を」 - nerumae

8.バク バク転で登下校する先輩をみんなどうして好きなんだろう

 小中学生は運動が出来る男の子が無条件でモテるのがデフォルトです。でもバク転で登下校はしないだろうな。前とか見えてないから赤信号とか突っ切って言っちゃいそう。でもそんな無茶をする子が好きなんだよな。なんでだろう。

 

14:短歌を詠んでみる ーはてな題詠「短歌の目」3月ー - 歌うおかあさん

10. 信号 覚えてる繋いだ指の温かさ信号のない横断歩道

 全体的に伝わってくるのは「やさしさ」です。信号がないからこそそばにいた大人は手を繋いでくれたのでしょう。それに全ての道路に信号があるわけでもないし、これからの未来もしっかり歩きなさいよ、というメッセージのようにみえます。なかなか春のように暖かい歌です。

 

15:3月のお題 はてな題詠 短歌の目 - 六月に雨が

1.雛 本当は刀が欲しかった 今頃可愛いと祭る 雛わらう

 無邪気なようで屈折している歌。お雛様を無条件で喜ぶ女の子ばかりではないですからね。定型でないので上の句と下の句で時間移動がぼやけている感じがするのがちょっと気になりました。上の句で少女時代、下の句で現在の心境などを含みを持たせると化けると思います。

 

16:短歌にちょうせん2 - 意味をあたえる

4.ひとり言 携帯だと「ひとり言」と変換されず 「ひとり」と「言」を分けて打つ

 かろうじて定型に近いものを選びました。一応「歌」なので57577のリズムが根底にないと成立は難しいと思います。少なくとも自分はこれらの言葉を「短歌」に分類できませんでした。わかっていて奇をてらうのと、ただのルール破りは別だと思います。

 

17:たんたん短歌 - 片鱗カフェ

4.ひとり言 鳥を見て魚であるとひとり言うための言葉を拾いあつめる

 しばしば「鳥」と「魚」を重ねた表現に遭遇します。この歌もそのひとつです。有名どころだと谷山浩子『まっくらもりのうた』あたりでしょうか。自由に空間を移動できる生き物に憧れますね。人間も「言葉」で自由になっていると思います。 

 

18:第1回「短歌の目」 3月のお題 「信号が青になったら進みます。」 - ライティング・ハイ

 10.信号 信号が青になったら進みます あなたが泳ぐ空の色です

 かなり好き。「空を泳ぐ」っていう表現も好き。言葉になっていないけれど、最初から自由なのではなく、「信号が青になったら」ということは現在は赤であって「未だ始まっていない」を象徴していて出会いと別れの春らしい歌だなぁと思いました。

 

19:3月題詠短歌、やややってみた - 感情迷子中のあんずです。

 10.信号 磯の風 土草まじりじめる肌 信号のない君が住む街

 「まじりじめる」の語感がおもしろい。磯風のじとっという空気と草いきれが混じった匂いをしっとりと表現していると思います。「信号のない」というところに個人的には被災地を重ねてしまい、そうやって見るとまた違う解釈ができそうだなぁと思いました。

 

20:はてな題詠「短歌の目」・3月 - 日々我れ

2.苺 デザートのあまい苺に練乳をたっぷりかける父すら許せず

 「すら」が気になる。他に許せない人がいるに違いない。おそらく許せないのはそんな父を許容することもできない自分自身なんじゃないかと思う。父親がある日突然汚らわしく感じるようになる少女の気持ちは自己嫌悪と表裏一体であると思います。

 

21:3月の題詠短歌、詠んだったー♪ - 枯れないように

7.線 君はなぜ 苦しむ僕に 気づかない? 線路の向こうで 笑うゆみちゃん

 結構好き。「線路」というアイテムは何かをつないでいるイメージが強いのにここでは断絶の象徴になっている。苦しみと笑顔というワードからなんとなくあの世とこの世の境目に横たわっている線路をイメージしたのですが、どちらがこの世なのかはっきりしないところも面白いと思いました。

 

22:企画にのって短歌を詠んでみたよ2 - 今日の良かったこと

1.雛 桃の日も男子二人にゃ雛あられ 腹一杯に食べたいだけの日

 なんともストレートでかわいらしい歌。変に技巧を凝らすよりインパクトがあって強く印象に残りました。「桃の日」にちなんで男の子は桃太郎になったらおもしろいのかなぁと思いました。

 

23:【3月】はてな題詠「短歌の目」 - 本の覚書

5.揺らぎ 後悔は神さえすると聞いている 方舟揺らぎ流さるる声

 この「声」は誰の声なのかというところですね。方舟に乗っている生き物たちの声なのか、方舟を必要としてしまう事態を作り出してしまった神なのか、あるいは方舟に乗れなかった愚かしい人間たちの声なのか。誰もかれもが「後悔」しているのは間違いないと思いました。

 

24:はてな題詠「短歌の目」3月 - 妄想七号線

2.苺 左手のフォークの先がふと揺れて 苺のケーキふらり崩れる

 なんでもない言葉を組み合わせているのに、その一瞬が鮮やかに浮かび上がるとてもハイセンスな歌だと思いました。なんとなく「左手」というワードにも何か意味があるんじゃないかと思ってしまいましたが多分気のせいです。あと「ふらり」がポイント高い。

 

25:はてな題詠「短歌の目」 3月♡ - バンビのあくび

3.夕 飲み干したラムネの瓶のビー玉に溶けて隠れた夕焼けの空

 えこさんの歌というか文章はいつか「えこ論」として分析したいくらい技巧や表現は当たり前なのに独特と言う面白い性質があるなぁと思います。なんていうか「色」があるんですよね。この歌もラムネの瓶の緑っぽい青と同時にオレンジ色の夕焼けが見えるなんてすばらしいじゃないですか。すっごく素敵だと思います。

 

26:3月の題詠短歌10首 - 乳飲子を小脇に抱えて

8.バク ぼくの夢もし怖かったら誰が食めばいいの、とバクは思うのでした

 「思うのでした」がかわいい。多分バクのお母さんがバクくんの夢を食べてくれると思うのでバクくんは安心して眠れるといいなぁとか思いました。じゃあバクのお母さんは? バクのお母さんは夢なんてもう見ないんだよきっと。

 

27:はてな題詠「短歌の目」三月 - イグアナガール

1. 雛 ヒナと名付けられようとも 成鳥になるのを誰もとめられはせぬ

 常々これは思っていて、「未咲」とか「未歩」という名前の女の子を見ると「まだ咲いてない」とか「まだ歩いていない」とか思っちゃうんですね。女の子は特にいつまでもかわいいままでいてもらいたいのが親心であり、エゴでもあると思うのです。「ひな」はかわいいけれど、未熟って意味もあるから本当に微妙だよなぁ。

 

28:ぼくのかんがえたスーパー短歌(「短歌の目」第一回) - Qの箱庭

3.夕 夕配の量が多いとバイトの子に怒られたので発注変える

 もっと突っ込めば化けると思った歌。ポイントは多分「バイトの子」。詠み手とバイトの子はどういう関係なんだろう。怒られたのは本気で怒られたのか、からかい半分で怒られたのか。それとも詠み手がバイトの子に気が合って怒られる口実をつくるためにわざと発注を増やしたのか。そういう含みがあれば面白いと思いました。

 

29:はてな題詠「短歌の目」、3月も参加します!&少し音楽の話 - きまやのきまま屋

3.夕 夕闇も怖くはないよ 夜へ向け 光るまなこを 見開いている

 「光るまなこ」というと『光る眼』という映画を思い出すのですが、これは完全にねこちゃんのお話ですね。「まなこ」が平仮名になっているのが優しい感じがして、なんとなく前向きなイメージを持ちました。

 

30:はてな題詠「短歌の目」 3月のお題 - 有限な時間の果てに

7. 線 画用紙に 描いた線は 力強い キミの行き先 光溢れる

 歌のパワーが一番強そうなので選びました。謎の説得力と言う奴です。親心というか親ばかというか、そんな感情って非常に強く心に残るんですね。「力強い」が「描いた線」にかかっているようで「キミ」にかかっているようにも見えるのが含みにならなければ「力強く」としてしまってもいいかもしれません。

 

31:はてな題詠「短歌の目」3月 - あかり牡丹

9.年度末 済んだもの 在庫・伝票・不意のキス 年度末には綺麗にしましょう

 すごくスタイリッシュだなぁという印象です。「伝票」「在庫」という卑近的なものに混じった「不意のキス」は不意打ちです。キスも伝票や在庫と同じくらいありふれたものという感じがおしゃれですね。シャネルの5番をつけて寝る、みたいな。

 

32:はてな題詠「短歌の目」 第1回 3月のお題に参加します - こじらせ女子のつまらない出来事

5.揺らぎ 会えぬ日々 活字でやりとり線つなぎ 君の揺らぎに僕も震えて

 下の句がきちっと納まっていてきれい。「君の揺らぎ」が『青いイナズマ』的な何かだったら僕も震えるしかないですね。そして「メール」でも「LINE」でもなく「活字」という表現が見事です。

 

33:短歌・参加 できてるのかな? - 頼朝の自由日和

7.線 一線を 超えたつもりは ありません 何を言われど 俺は男だ

 何度読んでもわからない。「何を言われど俺は男だ」というからに詠み手が男なのは間違いないのでしょうが、「一線を越えた」の行為が何を指すのかよくわからないのです。普通に読めば「浮気」などを思い描くのですが、そうすると下の句に繋がらないのです。無理につなげようとすると同性愛をほのめかす内容になりかねないし、「据え膳食わぬは~」などというシチュエーションも当てはまる。正解などなさそうだけど分析して論評したいくらい心に残りました。一体何を言われたんですか。

 

【終わりに】

 以上、今回も感想を書きました。真面目に書くとどうしても論評ぽくなってしまうのでなるべくかわいらしく(?)書いているつもりなのですがそうは見えなかったらごめんなさい。それでは次回の短歌の目でお会いしましょう。

 

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