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さよならドルバッキー

この世の裏を知ったドルバッキーは世を儚んだ。

2月の「短歌の目」感想集 - 後編 -

 こんにちは。感想集の後編に参りたいと思います。 最近暖かくなってきたような感じがするので嬉しい限りです。リズムに合わせてどんどん行きますよ。

 


2月の投稿短歌をご紹介します - はてな題詠「短歌の目」

 

 

21:はてな題詠「短歌の目」 - 冬色の脈

2.チョコ
新発売 顔が見えるチョコレート 生産者のクウェク・アゴゴ

 短編小説の集いのほうにもたびたび参加されているchemicalXさん。ちょっとダーテーな世界が魅力のひとつだと思うのですが、選んだ歌は深みにハマれば闇に落ちていきそうなどろどろした感じが好きです。フェア・トレードコーヒーと同じ世界の歌だと思います。「チョコ」の向こうには三角貿易の果ての世界がつながっているんですよね。

 

 

22:2月のお題 - はてな題詠「短歌の目」 - 本の覚書

3.雪

雪国は雪を楽しむ振りをせよ いつか脱出したいにしても

 この歌に限らず、全体的に閉塞感が漂っていると思いました。ここではないどこかへ行きたいけれど、その「どこか」もわからないまま脱出する方法も探せないで飛び出したい衝動が強く、選んだ歌が一番それをストレートに詠んでいると思います。

 

 

23:はてな題詠「短歌の目」第0回 - この国では犬がコードを書いています

4.あなた

いますこしあなたのことがわかるならおんなにうまれかわってもいい

 すごく不思議な歌。平仮名ってもともと「女手」って言うくらいなので女性らしさを演出するのに使う。でも歌の漢字から「おんなにうまれかわってもいい」と言うくらいなのだからきっと男が片思いの女性に恋敗れた心情なのだと思います。この「ズレ」が現代の紀貫之風でいいなぁと思いました。

 

 

24:はてな題詠「短歌の目」 2月のお題 - 有限な時間の果てに

8. 夜

お腹へり 家路を急ぐ サラリーマン 夜空に浮かぶ おいしい匂い

 情景一発勝負で胃袋を掴んだ歌です。嗅覚を刺激するものって結構人間魅かれやすいと思うんです。特に夕方から夜になる時間帯のすきっ腹に染みる匂いって誰もが経験あると思います。個人的に「サラリーマン」より「小学生」など子供のほうがノスタルジー効果でより沁みると思いました。

 

 

25:短歌を詠んだよ - 狭筵

8.夜
このペースならば夜明けにできるだろう デジタル時計がちょこっと進む

 この「あーあるある」感を切り取った感じが心地いいのが選んだ理由です。多分「夜明けにできるだろう」というのは割と余裕をもった表現だと思うのですが、「デジタル時計がちょこっと進む」はそれでも残り少ない時間が無情にも過ぎることが表現されていて、理想と現実の食い違いが見えるのがおもしろいです。

 

 

26:はてな題詠「短歌の目」-短歌とかけまして、英語学習とときます、 - えいごきらい。

8.夜
珈琲と 夜の帳で 段々と 覚めゆく頭と 反比例の丸

 「反比例の丸」がいいです。四句まではお行儀のいい納まりをしている歌を最後でひっくり返す痛快さが好きです。意外と絵にもなる風景だと思います。多分「正解の数が減っている」ということが言いたいのだと思いますが、自分は「反比例の丸いグラフ」を一瞬思い浮かべました。試験勉強してるなーという感覚が好きです。

 

 

27:短歌の目 2月題 - 妄想七号線

8.夜
Web上の秘密結社に集う為 言葉を研いで削ぎ落とす夜

 そうかー、この集いは秘密結社だったのか……と唸りました。短歌って本当にするどい言葉で人の心をエイヤっとぶっ刺すものなのでそういうものを寄せ集めている我々はきっと物騒な集団かもしれないです。こういうドキリとさせられる歌もいいですね。

 

 

28:短歌詠ませてください(短歌の目 第0回) - たまには文章を書かせてください 

9.おでん:

お返しにコンビニおでんおごるから はんぺん、ちくわぶ 「不器用だよね」

 これは好きです。まず「コンビニおでんをおごる」という時点でかなり不器用。汁も垂れるしたぷたぷするし、もっと持ち運びの便利なものにするべきだった。しかもコンビニおでんのはんぺんって無駄にデカいしちくわぶもでっかいし、そんなたぽたぽしたものもらっても……というやるせなさが「不器用だよね」に通じているのかと思うと、これ以上不器用なこともないなぁと思うのです。

 

 

29:短歌か狂歌かよくわからないままに - artessaのブログ

9.おでん

いつぞやの コンビニおでん 乾ききり 終日(ひねもす)のたり のたりなる哉

 冬のアイテムのはずのおでんが春の海になってる……! という発想の転換がおもしろかったです。元は与謝蕪村の「春の海終日のたりのたりかな」ですね。この「ひねもす」が面白くて覚えている人も多いと思います。本歌取りは「あ、これ知ってる!」と思わせたら勝ちだよなぁと思います。それにしても冬のアイテムを効果的に春にしてしまっているのが本当に斬新だと思いました。

 

 

30:タンカースナイパー - むっつりスケベ

10.卒業
来世には普通高校卒業ぞ 高専出身彼女なし

 十首の中で一番気合の入った心の叫びだと思いました。今まで見てきた短歌の中でも叫び声がかなり大きいです。これぞ短歌の神髄だと思いました。もし係助詞「ぞ」を生かすなら、「なし」は連体形の「なき」で締めたいところですね。「高専出身まだ彼女なき」など「まだ」を強調すれば少し未来は明るいかも。

 

 

31:はてな題詠 「短歌の目」第0回 - 30歳、70kg

3.雪
大雪に降り籠められたアパートで せわしく蜜柑を剥いては口へ

 「大雪に降り籠められた」という上の句からは「静」のイメージを感じますが、下の句の大きな「動」がギャップを出して面白くしていると思います。「デブあるある」ということで余計せせこましい動きがクローズアップされていて「あるある」感が一層強まっていると思います。

 

 

32:【短歌の目】恥の十首【駄作】 - 燃えないごみが燃える日 

10.卒業
「おめでとさん」ギャグで誤魔化す寄せ書きと 推敲五度目長文LINE

 「長文」なのに「メール」じゃないよ「LINE」だよってところがなかなか面白い。おそらく意図していないと思いますが、今の日本で「LINE」を当たり前のようにするりと使う層はかなり限定されています。思えば自分の全ての卒業式にはスマートフォンは普及しておらず、無邪気なLINEのやりとりをしたことがありません。そんな時代の変化を感じさせつつ何も変わっていない「寄せ書き」のギャップがまたいいと思います。

 

 

33:はてな題詠「短歌の目」 第0回 で短歌に挑戦してみる - イグアナガール

9. おでん
コンビニの「味噌付けますか」にも慣れて なかった頃にはもう戻れない

 ここまで書いてきてよくわからない告白ですが、自分はおでんに味噌も肉もちくわぶも入っていない地域で育って、未だに全ての存在意義が謎のままです。特にちくわぶ。本当に意味が分からない。でも「ちくわぶ」の存在を知ってしまった。知らないままでよかったのかもしれないのに。地元にいれば知らないままでいられたのに。でも味噌もちくわぶも受け入れられる時が来るのかもしれない。その時は過去の自分との決別なんだなぁ。そんなハマればたぷたぷ深い歌だと思いました。

 

 

34:2月の短歌を詠みました。 - チャイ

7.外
外灯の明かりだけだとさみしくて連絡帳から君の名探す

 最初「どうして明かりがさみしいんだろう」と思ったのですが、よく考えれば「連絡帳」っていうのは端末機器で呼び出した2つ目の「明かり」なんだっていうことに気が付きました。無意味に端末を開くのではなく、君の名前を探すのに開くという口実がまた「さみしい」気持ちを増幅していると思いました。勝手に「端末機器」としましたが、紙媒体の連絡帳でもなかなか味があると思います。

 

 

35:57577の鍵握りしめ想像力の扉を開く( #短歌の目 参加してみました) - Qの箱庭

2.チョコ

チョコレート売場に群がる人々を パイナップルを持って追い越す

 これは好き。どういう状況なのかよくわからないけれど、パイナップルって持っていたらトゲトゲしてて痛い。商品なのに買う人を傷つけている。なんていう理不尽。でももしかしたら「チョコレート」もそんなパイナップルみたいな甘酸っぱくてトゲトゲしたお菓子なのかもしれない。

 

 

36:【短歌の目】第0回お題詠んでみました - たそがれノート

10.卒業

卒業後 ひさかたぶりの学校は 色んなものが 少し小さい

 これは何を卒業してもそう感じるのが面白いと思います。物理的な小ささだけではなく、「あれ、高校の文化祭ってこんなにちゃちいものだったっけ?」とか「あの時は怖かった先生も卒業してから会うとただのおっさんだよなぁ」とか、そんな「大きくなってしまった郷愁」がひしひしとストレートに伝わってきます。

 

 

37:はてな題詠「短歌の目」に参加します。 - 野良猫の午後

1.白
白無垢の娘の濡れた泣きぼくろ 幼き頃の声が聞こえる

 短編小説の集いにも参加されているKazupinnさん。この歌は情景がストレートにとっても美しいと思いました。白無垢は「まだあなたの色に染まっていない花嫁」の意味があるそうなので、おそらく花嫁の両親視点である余計下の句がせつなくなります。結婚ってドラマだなぁ。

 

 

はてな題詠「短歌の目」 三口だけ齧る - meibotann’s blog

1.白

めざましに指を伸ばして6時半 昨日より少し白んできた朝

  十首以下枠で応募されていました。こちらの歌は丁寧に描写することで「日がのびた」ことが言外に提示されていて春の訪れを感じました。こんな季節の移り変わりに敏感になれるのも短歌のいいところですね。

 

 

【まとめ】

 自分でも思った以上に理屈っぽい感想ですみません。多分表現技法って意識しないとなかなか身に着かないものだなぁと思ったので無意識の対比表現や緩急をなるべく読み解いてみました。

 

 おそらく「そんな気持ちで詠んだわけじゃない」って思う方も多いでしょう。でもそれが「短歌」の辛いところでもあり、いいところでもあると思うのです。誰も本心なんて読みとれないし、自分勝手に提示されたものを切り刻んで料理しちゃうのです。そのぴちぴちな素材を提供するのが「短歌」の仕事だと思うのです。自分の短歌も「そんなつもりはないけどなー」が結構あります。多分そういうものなんだと思います。短歌に限らず、何事もそうなんだなぁと。短歌は人生の小宇宙。

 

 そんなわけでまたみなさんと会えるのを楽しみにしています。おわり。

 

 【前編はこちらから】

2月の「短歌の目」感想集 - 前編 - - 無要の葉

 

【こっちもやってるよ!】


短編小説の集い「のべらっくす」

 

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