さよならドルバッキー

この世の裏を知ったドルバッキーは世を儚んだ。

2月の「短歌の目」感想集 - 前編 -

 こんにちは、白い大地を踏み分けてようこそいらっしゃいました。チョコレートも特に何もありませんがゆっくりしていってください。外は雪で寒かったでしょう、お代はいりません。ただ少し、あなたの心を分けてくれればそれでいいのです。さっき板前さんが南瓜を煮てくれたので、どうぞお召し上がりになってください。外の様子はどうですか? もうすっかり夜になってしまいましたね。こんな時にはおでんも恋しいですよね。あら、もう卒業式ですか?

 


2月の投稿短歌をご紹介します - はてな題詠「短歌の目」

 

 そんなわけで、「短歌の目」の感想ランニング始めます。基本的にピンと来た歌を一首とりあげてやる形にしていきます。初回は数が多いので前後編にわけていきます。なお、主催者の卯野さんの他の方の感想はほとんど読まないで好き勝手書いてますのでかぶってたらゴメンなさい。

 

1:今月のお題 - はてな題詠「短歌の目」 - 日々我れ

1.白

白すぎて消えずに残ってしまいそう だからキリンになってその息

 「キリンになってその息」の体言止めで急にバシっと切れるせいか、「はぁーってやると息が白くなるよー」とのんびりしているような情景が一気にせつなく感じられると思います。「キリン」というどこまでも高く昇っていくイメージも重なって、刹那の高揚が感じられます。

 

 

2:手紙を書き、短歌を詠む。 - 本日の手紙 大学生の今日の出来事

8. 夜

冬の夜 ギラギラ光る 街の陽に 今宵はいずこで 星は輝く

 ネオンの光っていうのは夏より冬のほうが明るく見えるのは何故でしょうね。きっと闇が怖いから余計明かりで飾りたくなるんですね。そして星はギラギラ光っていないということが暗に詠みこまれていて好印象です。星は優しく語りかけてきます、母上様。

 

 

 3:第0回「短歌の目」2月のお題 - ライティング・ハイ

5.板
直してよ この防音室 そこにある板でもなんでも使っていいから

 なんで「防音室」なんだろう? 何かを防ぐための個室を作りたいっていうのはこの「直してよ」って言ってる人が何かを防ごうとしているからなんだろうか。しかも「直してよ」ってことだからきっと壊してしまった人に対して言ってるんでしょう。俗っぽい言い方をすれば「私の心の壁を壊さないで」くらいかなぁ。

 

 

4:短歌にちょうせん - 意味をあたえる

7.外
これまで短歌を書いたことないので字を数えるのに疲れてきた

 自由すぎるのが「斬新」と言われるときもありますが、やっぱり定型がわかっていてあえて外す「斬新」とそうでない自由は分けて考える必要があると思うのです。でも選んだ歌の真意は素敵で、「これまでに短歌なんぞ知らぬから詠んだことなく字数も知らず」とかやろうと思えば定型に当てはめることも出来ないことではないと思うのです。

 

 

5:ingress短歌 - マトリョーシカ的日常

4.あなた

すれ違う あなたもきっと エージェント 落としたキーの 跡形もなく  

 ingress縛りの短歌ということで制約も多かったと思うのですが、真剣に向き合っているからこそできる芸当だと思いました。ちなみに自分はこの歌に似た心境を「どうぶつの森」で味わいました。「たくさんいるのに直接関われない」ってなかなか感傷を生むと思います。

 

 

6:はてな題詠「短歌の目」 2月の巻 - 無要の葉

7.外

 「怖そうな外見ですね」「そんなことないです普通の女の子です」

 自分で反省したけど、一首選ぶならこれかなぁ。イチバン自分から遠い気がする歌が自分には魅力的なのかもしれない。

 

 

7:はてな題詠「短歌の目」 - OK 余裕

1.白

白下げて赤だけずっと上げていろ 続きはねぇよてか知らねぇし

 短編小説の集いにも参加されているao-ruiさん。短編小説のテンションそのままに短歌になっていて面白いです。ao-ruiさんの文体はとにかく勢いがあって、何が書いてあるかよく理解していないうちから「お、おうわかったぜ」と納得しなくてはいけないような力があると思っています。そして口語の使い方が上手。尊敬。

 

 

8:短歌に挑戦するぞい♪ - 枯れないように

4.あなた

ねえあなた? 今日は何時に 帰るのよ? 遅いわあなた! 嘘つきあなた!!

 この歌は深読みすればするほど味が出てきます。「何時に帰るの?遅い!」と怒られるまではわかるのです。それが何故「嘘つき!」になるのか急に飛躍するところが詠み手側の超サイドストーリーを想起させて面白い。個人的には「あなた」は想像上の人物で、詠み手が一人で勝手に壁に向かって怒っている感じが一番しっくりきました。

 

 

9:はてな題詠「短歌の目」 第0回:2月 - さらさら録

10.卒業 

写真だけ笑顔のままでひとり泣く あたしまだまだ卒業できない

 お主、ポルノグラフィティ好きだな……というのが全体的な感想です。でも背中にそんなものがあると邪魔だよとか全てを白々と見せるあのあたりのアレが好きなのもなんかわかる気がしました。選んだ卒業の歌は、卒業写真と言うド定番なアイテムですが意外と使い方が難しいものだと思ったので選びました。

 

 

10:はてな題詠「短歌の目」に参加しまっせ - ネットの海の渚にて

5.板

ドブ板に夫婦でのっかり声枯らし 清き一票私にください

 連続でストーリー性を持たせる縛りを課せられたということで結構難しいと思うのですが、意外とこういう取り組みのほうが詠み易いかもしれません。短歌って31文字で全部説明しないといけないので、外に広がりを明確に見せたほうが詠み手も読者も理解度が増すと思うのです。選んだ歌は、勢いと「飾らなさ」がいいなぁと思いました。

 

 

11:10年前の秋に詩を書き始めたから今回参加できる「第0回」はてな題詠「短歌の目」参加作品(集) - のほほん気紛れ詩歌い

8.夜

高速化 夜行列車の 数が減り
歌詞のフレーズ 遺産と化した

 全体的に日常の気づきを丁寧に言語化して原因と結果をきちんと折りたたんでいる感じがしました。選んだ歌はその中でも説明要素が少ないのに「あーわかるわかる」が伝わってくる良歌だと思います。何より読者にわかりやすいのがいいですね。

 

 

12:第0回「短歌の目」 2月のお題10首 - 漢前女子と言われ続けたい。

1.白

まっしろに けぶる風景 雪の先 あなたの故郷 未来のわたし

 いつか二人で行きたい感じがしたので選びました。「あなた」にとっては雪の先もある程度見えているのかもしれませんが、「わたし」は何も見えないのですよね。これは期待とも不安ともつかない「未来」という言葉とかかっていてよく考えられた歌だと思いました。

 

 

13:はてな題詠「短歌の目」に参加してみる - Letter from Kyoto

5.板

壁板に思い思いを敷き詰めた。これが僕らのワンダーランド

 「これが僕らのワンダーランド」っていう表現が好きです。「ワンダーランド」が「思い思い」にかかっているのはわかるんですが、具体的なものは一切描写されていません。それでも読者には「ワンダーランド」が見えるわけです。この「書いてない事象を詠む」って短歌の魅力だなぁと思うのです。

 

 

14:はてな題詠「短歌の目」 2月♡ - バンビのあくび

2.チョコ

大嫌い私を振った君なんて 溶かしたチョコの波に飲まれろ

 こちらは短編小説の集いにも参加してくださっているえこさんの歌。えこさんの文章は平易な言葉を用いているのにきちんと「えこワールド」が展開されているのが素敵だなぁと思います。語彙ももちろん大事ですが、「らしさ」を身に着けるにはある程度量を積むことが大事なんだなぁと思います。歌を選んだ決め手は勢いです。個人的に「大嫌い 私を振った君なんて溶かしたチョコの波に飲まれろ」の初句切れ表記だといいなぁと思いました。

 

 

15:はてな題詠「短歌の目」 2月のお題に参加します - こじらせ女子のつまらない出来事

7.外

 音ひとつ しない部屋で ひとり待つ 外の女と 呼ばれる悲しさ

 今は2号さんとか言う言葉も使わないみたいですね。「部屋の中」にいるはずなのに「外の女」という表現と、「音ひとつしない」はずの部屋で「呼ばれる」っていう音を用いた言葉を組み合わせていることで余計「悲しさ」が引き出されていると思います。辛い、辛い。

 

 

16:短歌の企画に乗って、10首詠んでみました - きまやのきまま屋

7.外
「まどガラスはどうしてこんなにつめたいの?」鼻先つけた 外知らぬ猫

 「まどガラス」「つめたい」が平仮名表記なのが好きです。「外知らぬ猫」としか表記がないのにその裏に壮大な物語が隠されているような覆いが素敵です。こういう「断絶された故の無垢な問い」って物語にしやすいですよね。わかりますわかります。

 

 

17:2月のお題 はてな題詠「短歌の目」 - 六月に雨が

3.雪

いちにさん やまぬ吹雪を数えあき  月数えてる  色変わるまで

 個人的にめちゃくちゃ好きです。外は吹雪いているのに「月」を数えている。もちろん「吹雪」も「月」も実在しない概念のようなものなんだろうと思います。それを「色変わるまで」とあたかも存在するように見せている。でもこの「色」はカラーの意味のほかにラブの意味も入っていると思うと読者として楽しい楽しい歌でございますごちそうさまでした。

 

 

 

18:はてな題詠「短歌の目」2月題を詠む - nerumae

6.瓜

南瓜煮をくちにふくんで泣きだした あの日の我を あの日の我を

  主催者の卯野さんです。真面目にお疲れ様でした。でもこれ結構楽しいんですよねわかります。自分はリフレインものに弱いのでこちらの歌を選びました。普通だったら「あの日の君をあの日の我を」って感じで「おもいでぇ」みたいにまとめるところだと思うんですが、卯野さんの歌はどこまで行っても「我」しかいない寂寥感があるなぁと思いました。そして「誰か」を求めている、行き詰ってる焦りが伝わってきました。

 

 

19:企画にのって短歌を詠んでみたよ - 今日の良かったこと

 5.板
長男は 板に残った かまぼこも 食べ尽くすほど 好きなご様子

 短歌の素晴らしいところって超越的な概念から日常の小さなことまで受け入れてくれるところですよね。この歌、めちゃくちゃみみっちいはずなんです。だってかまぼこ板に残ったかまぼこのあのぺらーんというのは存在しているのかいないのか認識しなければ忘れちゃうものだと思うんです。でもこの歌で「かまぼこ板に残ったかまぼこの運命」を思い出すことができます。更にかまぼこを愛する長男を愛する詠み手の心情も伝わってきます。おもしろいです。

 

 

20:短歌よむよ〜 - このはなブログ

8.夜

膝を折り 夜行バスに身を詰めて あたしのもとに朝(あした)は来るの

 感情的な意味もなかなか深いのですが、「夜行バス」に「膝を折り」「身を詰めて」という不安を感じさせる表現、 さらに「あたし」と「あした」の語呂の良さに「夜→朝」の時間の変化まで感じさせる奥行きのある歌だと思いました。はなこさんは短編小説の集いでも活躍されています。素敵ですね。

 

 

 

 

  以上、前半戦でした。理屈ばっかりで面白くないかもしれませんが、理屈がないと「よかった」「いいね」「わーお☆」とかそんな感想しか出てこないのでお許しください。それに「この表現いいなぁ」とか「そんな見方があったんだ」とかそんな発見の連続で楽しいです。

 

 後半戦は気長に待っていてください。でもなるべく早く、なるはやで行きます。作品を公開してレスポンスがある快感が大事だと思っている所存でございます。