あのにますトライバル

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「れりごー」できなかった大人に捧ぐ『マレフィセント』の話

 女の子はね、みんな一度は男に傷つけられる妖精さんなんだよ。


『マレフィセント』予告編 - YouTube

 ぶっちゃけ「わーいマレフィセントだーヴィランズだーダークファンタジーだーわーいわーい」という無邪気なテンションで見に行きましたが、これは「最近のディズニーのやりたかったこと総決算」という感じかな? とりあえずネタバレほぼナシの覚書で大プッシュしておくよ。

 

 

 とにかくいろんな意味で問題作と言うか、ターニングポイントになると思う。『塔の上のラプンツェル』『アナと雪の女王』に続くプリンセスモノの最終形態として、そして『シュガーラッシュ』からあった「オレは悪役、それでいい」*1の精神。

 

 映像は幻想的で流石天下のファンタジーメイカーだというところです。子供マレフィセントの愛らしさが素敵で、そこだけ90分見たいくらいでした。

 

 

 アナ雪で「姉妹百合」だの散々言われていたけど、完全にこれは「母親」の物語だと思う。予告で「翼を捕られた」というシーンがあるけれど、これは無垢な女性を傷つけた男性の象徴だったんだよね。ざっと言うと『マレフィセント』は男性によって傷つけられた女性が更に無垢な女性によって回復すると言う話で、これは完全に母親と娘の話なんですよ。

 

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 よくよく考えたら、ディズニーで「母親」を象徴するようなキャラっていないなーと思ったのです。おとぎ話系の継母は意地悪だし、そもそもミッキーは孤児という設定がある。女性はみんな「女の子」であり、結婚して幸せに暮らしましたとさ系の話でも最後まで「母親」を貫くことはない。これはやっぱりアメリカでもいくらウーマン・リブが浸透してきたとはいえ「女性=守られるか弱い存在」というイメージが強かったからではないだろうか。それに対してジブリは結構「母親」のイメージに敏感だ。『ポニョ』のリサに『魔女宅』のオソノ、『トトロ』のメイに母親的役割をしてしまうサツキに『もののけ姫』のモロまで「母親」というキャラに事欠かない。「母は強し」が結構全面に出ている気がするのです。

 

 『マレフィセント』はそんなか弱い女性が守るべき存在を得て強くなる話だと解釈しました。『アナ雪』は「男を否定する」ことに重きをおいていたので「どうして家族が大事なのか」という説明がすっぽり抜けていた気がしましたが、『マレフィセント』は男を完全に敵にしたばかりか、新たに「家族とは何か」という視点を導入していて、非常に面白かったです。『塔の上のラプンツェル』で魔女ゴーテルは母親だけれどヴィランズであったし、『アナ雪』の母親は不在に等しい。ところが『マレフィセント』はかつて男性に傷つけられた少女であり、新たに少女を見守る母親に神格化されます。『アナ雪』で「真実の愛って結局何よ!」というところの補足をしっかりしている感じでした。アンジーが養子のために作った映画、というのであればなおさらそういうメッセージがあるのかもしれませんね。

 

 男性を無視するだけではなく、絶望した女性が女性だけで生きていくのがトレンドになるのかもしれません。「何がありのままじゃボケ」と思っている人ほど見に行った方がいいと思います。一応ディズニーのお約束は最後まで踏襲していますが、子供向け映画ではぼかすことしかできなかった大人たちの物語があります。とりあえず「オール・ユー」と並んでオススメしておきます。そしてそのうちネタバレ感想は書きます。

*1:これも一種の「れりごー」だなぁ。