さよならドルバッキー

この世の裏を知ったドルバッキーは世を儚んだ。

もしD社の「美女と野獣」の娘が腐女子だったら

 昔々、あるところにビーエルという美しい娘がおりました。ビーエルはたいそう本が大好きで、街の本屋にある本は大抵読破していました。ついに街の本屋だけでは飽き足らず、インターネットを使って様々な物語を読んでいるうちに、殿方と殿方が愛しあう物語に興味を持ちました。やがてビーエルは街を歩くときでもそのような本を読みながら歩き周り、周囲からは「ご覧あの娘はいつでも少し風変わり。夢見る瞳は妄想ばかり、謎めいた娘だよ」と噂されるようになりました。

 

 そんなビーエルですが、容姿だけは非常によく、ガンプラばかり作っている父の世話も良くしていたのでモテることはモテましたが、彼女の性癖を知っている者は尻込みをしていました。「紙の中の男なんぞに負けてたまるか」と立ち上がったのが、村一番の勇敢なイケメンでした。イケメンはビーエルに現実の男の良いところをアピールしました。年収は700万はあることや結婚したら専業主婦にしてやる代わりに理想の奥さんになってくれなどと言いますが、ビーエルは聞きません。この前は優しいところをアピールしようとしてビーエルが持っていた「とらのあな」と書かれてある重そうな段ボールを持ってあげようとしたら罵られてしまいました。

 

 ある日、ビーエルの父はガンプラを買いに隣町まで出かけた途中、森の中で嵐に会い、途中にあったお城に雨宿りを求めました。ところがお城には人気がなく、カップラーメンの食べかすなどが散乱するばかりです。無人だと思い、ビーエルの父は城の中を散策し始めました。すると、中から世にも恐ろしい獣が現れました。

「無断で我が屋敷に入ったことは許せん。ここから出てはならぬ」

 獣はビーエルの父を監禁してしまいました。

 

 実はこの獣は、もともと大層美しい娘だったのですが、妄想の世界に浸って他の誰とも交わらずに絵を描きつづけ、また高慢な態度であったことから獣に身を落とした哀れな身の上でした。呪いを解く方法は、心を通わせる友達を作ることでしたが、こんな醜い獣など誰が友達だと思うのでしょう。獣は絶望の中ひっそりとくらしていたのです。

 

 ビーエルは、いつまでも戻ってこない父を心配して森へ探しに行くと、見たことのないお城がありました。きっと父はここにいると違いないと思ったビーエルは中に入ると、またあの獣がいました。

「立ち去れ、ここはお前らのようなものが来る場所ではない」

「あ、あのポスターは完全受注のBOX初回限定盤にだけついてくたレアな奴!」

 ビーエルは、城の奥の方でボロボロになっていたポスターをみて驚きました。話にだけ聞いていたレアな品物をこんなところで見かけるとは思わなかったのです。

「お前、アレの価値がわかると言うのか?」

「もちろん、アニメのシーズン2が決まったばかりですよ!」

「なんと、外界ではそのようなことになっていたのか!?」

「他にも去年はスピンオフの連載が始まって過去話なんですよ」

「ああ気になる!」

 すっかりビーエルと獣は意気投合してしまいました。

 

 ビーエルが来てから、獣はすさんだ生活をやめ、すっかり城の中を片づけ始めました。ビーエルは、城の書庫に積んである大量の薄い本を見て感激し、二人で幾夜も様々な萌えについて語り合いました。ビーエルも獣も、同じ趣向の友達を持っていなかったので、初めて心の底から分かり合える友が出来たと大層喜び合いました。

 

 一方、「先に帰っていていいよ」と言われ城を追い出されたビーエルの父は、森の中に獣が住んでいると街に帰って触れ回りましたが、ただでさえ定職にもつかずガンプラばかりいじっている彼を気にするものは誰もいませんでした。ところが、例のイケメンだけはビーエルがいなくなったことに気が付き、ビーエルを助けるためと口実をつけて討伐隊を編成し、森の城へ向かいました。

 

 その頃ビーエルは、獣と合同誌を出そうという話をしていましたが、獣はすっかり自信を無くしていてビーエルと一緒に作品を作ることを了承しません。落ち込んだビーエルの目にイケメンを先頭にした討伐隊の姿が映りました。

腐女子を殺せ!」

「ホモが好きなんて気持ちが悪い!」

「ビーエルは正気に返ってほしい!」

 などなど好き勝手なことを言ってやってくる男たちを見て、ビーエルは寒気が走りました。獣は萌え部屋に入られることを防ぐために必死で戦いましたが、多勢に無勢です。やがて獣は力尽きました。

「そんなに犯される男が好きなら、お前を犯してやるよ」

 ついに捕まったビーエルは、イケメンたちになぶられようとしていました。

「ビーエル、危ない!」

 最後の力を振り絞って、獣はビーエルを守りました。イケメンをはじめ男たちは散り散りになって逃げていきました。

 

 ビーエルが獣を抱き上げると、獣は息も絶え絶えに言いました。

「私、やっぱりあなたと合同誌は出せそうにないわ……」

「そんなことない! あなたは私を助けてくれたじゃない!」

「ごめんね、もっといろんなこと、すればよかったね……」

「お願い目を開けて! 私とあなたは、ズッ友よ……」

 すると、獣の姿が光はじめました。真の友達を得たことによって呪いが解けたのです。

「ビーエル! 私目が覚めたわ! 一緒にがんばりましょう!」

「よかったわ!」

 真の友情で結ばれた腐女子は、固く抱き合いました。

 

 それから、その城では定期的にイベントが行われ、国の内外からたくさんの腐女子が訪れるようになりました。ビーエルと獣はいつまでも幸せに萌え語りをしたり恥ずかしいイラストを描いたりして暮らしたということです。

 

めでたしめでたし。

 

 

 

【おまけ】獣の正体はこちら。